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夢で会いましょう

現在リクエストが来ているのはアラクネです、キャラの登場リクエストはこの章が終わるまでしていますのでよろしくお願いします。ちなみに、この章はあと2~3話ほどで終わる予定です。

 意識のある夢というものが存在する。しかし、それはルームにはありえないものだった。夢喰獣のヒュープに根こそぎ食べられるのが常であったので夢の中で意識があることは許されなかったのだ。だが、今は違う。ヒュープもルームも双方意識が落ちている。


「ん……」


 ルームが目を覚ます、しかし周囲は真っ白なだけの空間。それだけならルームに【部屋作り】にも通じるような状態であるがここにはもう1人住人がいた。


「ヒュープ? どうしたの」

「なんでもないの、ただ悲しいだけ」


 白金色の夢喰獣が膝を抱えている。大きな瞳に涙を浮かべてただそっぽを向いている。


「悲しい?」

「これで終わりだと思うと悲しくて悲しくて」


 ゆっくりとルームに方を向いたヒュープの顔は腐り果ててとても見られる状態ではなかった。ところどころ蛆が湧き、絶えず膿が吐き出され、そして血の涙が流れ続けている。


「今すぐにでも、貴方を連れて行ってしまいそう」


 ずるずると腐った身体を引きずりながらルームに近づいてくるヒュープ。瘴気すらも漂わせて寄ってくる様は恐怖以外の何物でも無い。


「ねえ、その程度で僕から拒絶されようとしても駄目だよ。僕はもう知ってるんだよ」


 しかし、ルームはむしろ自分の方から近づきながら腐ったヒュープの身体を抱きしめる。なんの躊躇も無く力一杯に。


「ぴぃっ!?」


 先ほどまでの病んだ空気はどこへやら、一気に身体を強ばらせて動けなくなるヒュープ。腐った顔でそうしているので一周回ってシュールである。


「ヒュープが僕の事、そ、その、好きだって」


 口説き文句を言おうにも慣れていないので、良いところで照れてしまった。イケメンになりきれないのがルームの良いところであり、悪いところでもあった。ここぞと言うときに素が出てしまうのだ。


「え、ちょっとまって、ヒューはちょっと、心の準備が」

「えーい!!」


 勢いに任せて口づけで黙らせようと画策するが緊張しすぎて上手くいかない、ロサ・ロサにしたようなキスとは意味合いが違っているのだ。しかしそのせいでまともにヒュープが見られず狙いを定められないのでヒュープに当たらない。


「ホントに待って!!」

「痛い!?」


 割と本気で放たれたビンタによってルームが止まった。


「お、落ち着いてくれた?」

「駄目だよぉ、胸がバクバクしてる」

「はは、僕も」

「あはは」


 ひとしきり笑い合った後に改めて向かい合う。ヒュープの姿は既に元通りである。


「ねえ、聞いてたから分かると思うんだけどぉ。ヒューは君の悪夢がご飯なの、でも良い夢も見て欲しいの」

「うん、でも夢は僕にもどうにもできないよ」

「これからはそうでもなさそうな気がしてるんだよぉ、一番棘として刺さってたことが解消されたみたいだから」

「ウォーカー達のことだね」

「そう。だからこれからは少しずつちゃんと眠れて良い夢も見られるようになると思うよ?」

「そうなんだ、でもそれはヒュープにとっては良いことじゃないんでしょ」

「まぁね。ヒューが食べた夢は君の心に残らない。良い夢も悪い夢もそれは一緒、やっと見られるようになった良い夢も多分我慢できずにヒューは食べちゃうと思うんだ。だから、契約はこれで解消しようと思って。君はこれからヒューが居なくても寝られる、そして良い夢も見られる。ね? ヒューが居る意味はないでしょ?」


 そう言っている間にヒュープの目からは本当の涙が流れ出てきている。


「ずずっ」

「え?」


 が、それを遙かに上回る量の涙と鼻水でずるずるになっているのはルームである。恐らく前も見えてはいまい。


「いやいやいや、泣きすぎだよぉ!?」

「ご、ごべんね。僕は、ここで笑って送り出せない、ヒュープの居ない苗床亭を想像できない」

「で、でもぉ。そんなこと言ってもぉ」


 ちなみに、この時点でヒュープに苗床亭を去る意思はなくなっている。自(・)分(・)が(・)い(・)な(・)く(・)な(・)る(・)こ(・)と(・)で(・)ル(・)ー(・)ム(・)が(・)泣(・)く(・)その事実だけでもはや去る理由はなかった。苗床亭のメンバーがルームをただの餌とは思っていないように、ルームもまた苗床亭のメンバーを利だけで見ていないことの確認ができたことが何より嬉しかったのだ。故にここから先はただの茶番、ヒュープがいちゃつきたいだけの行為である。


「やっぱり、一回出てくって言ったしぃ」

「行かないで……」

「え? ちょっと声が小さくて聞こえないなー」

「行かないでよぉ」

「えー、どうしよぉかなぁー」


 ヒュープの身体をクイクイと引っ張るルーム。


「ぶっ!」


 ヒュープはあまりの光景に鼻血を出しそうになったが、なんとか耐えた。ギリギリでつれない態度を維持することに成功した。


「どうしたの?」

「んんっ、何でもないよぉ。でもなー、そんなに言うならぁ、考えちゃおうかなぁ、ルームきゅんがぁ、そんなに言うならぁ? 考えないでもぉ?」

「ほんと?」


 上目遣い、涙目、あざとすぎる表情である。


「それ、わざとやってるでしょ……」

「なにが?」

「んーん、かわいいからそのままでねぇ。そーだなぁ、今まではぐらかされてた分まとめて愛して欲しいなぁ」

「愛して……? どうしたら良いの?」

「えへへぇ、それはねぇ」


 このタイミングに乗じて行き着くところまでいってしまおうとヒュープが舌なめずりをした瞬間である。空間が崩れ始めた。


「あっ、時間かけすぎた!?」

「うわぁ!? なんだぁ!?」

「約束だからねぇ!! 忘れないでねぇ!!」


 こうして、2人分の夢は終わりを告げた。

 






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― 新着の感想 ―
[良い点] この回はヒュープが主役のストーリーでしたね。
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