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躾の時間

「で、捕らえたのは良いがどうすんだよ」

「んー、このまま連れていっても良いんだけど。それだと同じ事の繰り返しになるかな」

「だよな、じゃあここで始末するか」

「それも選択肢だけど、ちょっとだけ試してみたいことがあるんだ」


 動けないクーパーの口を開けさせるとその中を確認する。しかし形だけの口であって別に消化管と繋がっているようなものではなかった。


「あーそういう感じかあ、それじゃあちょっと深めにしようかな」


 本来の身体の部分がどこに当たるのかを探るために深く菌糸を潜らせる、小屋分の大きさを圧縮した身体は普通の人体を遙かに超える複雑さであるためにどこに何があるのかを理解するのに少しだけ時間がかかることになった。


「あった、ここか」


 ルームがおもむろにクーパーの腹に手を差し込む、それは臍にあたる部分であったがクーパーの本来の身体に合っては口に当たる部分だった。端から見ればかなり猟奇的に見える光景であるが幸い周りにはグウェイくらいしか驚くような者はいない


「おま、やっぱり始末するんじゃねえか!!」

「待って待って、これは口に手を突っ込んでるだけだから」

「どう見ても殺しにいってるだろそれ、モツぐちゃぐちゃになってるだろそれ。だってぐちゅぐちゅ音してるし」


 確かに今ルームの手はクーパーの口の中をかき回している。グウェイにはそれが手で腹をぶち抜いた後に内臓を掴んで苦しめているように見える。


「あ、あっあっ、ああ」


 やられているクーパーはどことなく気持ちよさそうであるが、身体の硬直のために明確な意思表示ができないためよく分からない。少なくとも苦しんでいるようには見えないが眼から涙が落ちそうに潤み始めている。


「舌はあるのかな、美味しそうって言ってたから味を感じる場所はあると思うんだけど」

「まだやるのか? なんかもう見てられねえんだが」

「あ、うああ」

「あった」


 何かを見つけ出したらしいルームが喜々としてクーパーの腹、もとい口の中をかき回す。意思に反して痙攣を始めるクーパーの身体は何かの拒絶反応を示しているように見える。


「おいおいおい、何やってるんだよさっきから」

「え? うーん、なんて言うかな。躾?」

「躾ってお前、死にそうなんだけどそこの女」

「大丈夫、だってどんなに口のなかをなで回されたって死んだりしないでしょ」

「いや、どう見てもそれだけの反応じゃないだろ」


 びくんびくんと身体を震わせながら虚ろな瞳をしているクーパーは確かに口の中をなで回されただけというにはあまりにもおかしな反応を示している。どちらかと言えば薬物でも使ったというほうが正しい反応であろう。


「薬でも使ったのか」

「そんなもの使ってないよ、ただ菌糸で感覚を鋭くしただけ」

「それで口の中で何してたんだよ」

「2度と自分の身体を食べたりできないように、自傷なんてできないようにしようかと思って」

「もっと詳しく、それじゃ何も分かんねえよ」

「今からやるの見てたら分かるよ」


 ぐったりとしたクーパーの耳にあたる部分、少女の身体では首筋に口を近づけていく。


「良い? これから【自傷改造】を一回でも使ったらもう絶対に食べさせてあげない。それに守るため以外に他の人を攻撃するのも許さない。お兄さんにもちゃんと謝る、そうしたら気が向いたときにまた腕を突っ込んであげる。今から3秒間だけ動きを自由にするよ、僕が言ったことを了承するなら頷いてね」


 ゆっくりとクーパーの身体に自由が戻る、焦点の合わぬ目が一気にぐるんと元に戻る。


「もっとちょうだい!! なんでもするから」

「どうしろって言ったっけ?」


 首がちぎれんばかりにクーパーが首を縦に振る、もうすでに敵意はなくただ懇願の感情だけがクーパーからは感じられる。


「うん、良い子だね。それじゃあご褒美をあげようかな」

「くださいッ!!」


 自ら腹を差し出したクーパーは本来の口が蠢いており、少女の腹がばっかりと開いている非常にグロテスクな状態である。それに少しも臆することなくルームが腕を突っ込む、正直言ってかなり混沌とした光景である。


「あっ、あっ、知らない、こんな美味しいもの知らない。もう他のものなんて食べられない、腕も足も食べられない!!」

「そうは言っても、他のものも食べなきゃ死んじゃうよ?」

「それはいらない、私はもう食事を必要としない身体だから」


 そう言ってクーパーの身体に緑色の部分が出現する、肉体よりも植物に近いような状態である。苔の生えたような部分が光合成を行うのだとすれば水と光さえあればクーパーは生きていけることになる。


「そっか、じゃあ良いね」

「うん、もう他のはいらない」


 少女の身体がにわかに崩れはじめ触手が何本も生えルームに巻き付いていく、絶対に放さないとでも言うかのように絡みついていく様子は一種官能的でもあった。それを面白くなさそうに見つめているのはヨツヤとグウェイである。


「ねえねえ、ずっと一緒とは言わないから偶には会いに来てくれる?」

「う~ん、どうかな」


 完全にクーパーの眼がハートマークである。


「これが愛人に浮気される気持ちでありんすか、なんだか複雑でありんす」

「うわあ、なんかモヤモヤする」


 苦い顔をするグウェイとヨツヤであった。


 








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