第294話 殺人鬼魔族
白金夫妻に真正面から自分たちの行為の卑劣さを指摘され、仲違いした貴族家の学生たち。
彼らは、急な雨をやり過ごすため、夜も営業している食堂に行き、夕食を取りながら待つことにした。
それぞれムカムカする気持ちはありつつも、白金一家の悪口を公の店内で叫び合うわけにもいかず、あえてすっかり忘れた素振りで全く関係のない話を繰り広げた。
そうして雨宿りしているうちに夜更けになってしまった。時刻は夜10時。ようやく雨も上がりそうになった頃、食堂にバジルの使用人がやって来た。その手には傘を持っている。
「お、バジル。お迎えのようだぜ。傘を持たない主人を捜し回るなんて、できた使用人じゃないか」
キザな学生エボニーがそれに気づき、バジルに教える。言われた当人は、少し疲れた様子で立ち上がった。
「やっと来たか。まぁ、よくぞここを見つけ出したとも言えるな。じゃあ、マーガレット、一緒に帰ろう。送ってくよ」
「うふふ。ありがとう、バジル」
「またな。エボニー、ジャスミン、ペンタス!」
「ああ。また」
ということで、気の利く使用人が迎えに来てくれたバジルは、マーガレットを連れて先に帰った。
その後、しばらくすると完全に雨が上がり、残る3人も店を出た。
空を覆っていた雨雲も散り散りになり、満月の明かりが道を照らす。深夜といえど、とても歩きやすい街並みであった。
帰る方向が同じため、エボニー、ジャスミン、ペンタスは共に歩く。そして、誰にも聞かれていないと思い、夕刻の出来事を振り返って、盛大に愚痴をこぼしはじめた。
「それにしても、むしゃくしゃするわね!シロガネさんたち!何なの、あの言い方!わたしたちが悪者みたいに!」
ジャスミンのボヤきである。自分自身を見つめることのできない人間は、真摯な指摘を受けると、自分がコケにされたと思い込むものだ。
「まぁまぁ……所詮は一介の商人ってことさ。王女殿下にくっついてるもんだから、俺たちも勘違いしてたんだよ。もう相手にしなければいい」
「いや、しかし、これで王女様とも仲良くできなくなると思うぞ。せっかくうまくやれてたのにな……」
彼女に合わせて、エボニーは冷ややかに、ペンタスは残念そうにそれぞれの不満を述べる。そして、ジャスミンはこのような状況になった元凶がシスルとプリムラであると考え、憤慨した。
「ああ、もう!こうなったのも全部、あの虫けら二人のせいじゃない!この気分、どうすればいいの!」
「こんなのはどうだ?ハンターを雇って、あいつらをボコボコにするんだ。足がつかないように俺たちの身分は隠したまま依頼してな」
「うっは!エボニーってば、天才!」
「それじゃ、面白くないだろう。やはりオレが闇討ちしてやるのが一番じゃないかな。田舎に帰りたくなるくらい、ぶちのめしてやるよ」
「いいわね!ペンタス!思いっきりやっちゃって!」
自分の手を汚そうとしないエボニーと自ら手を下そうとするペンタスの意見を共に賛嘆しながら、ジャスミンは満足そうに手を叩いた。
このように自分の鬱憤を晴らすために男を利用する女ほど悪質なものはない。また、それに乗せられて、いいところを見せようとするためだけに、必要のない暴力行為に及ぶ男ほど、頭の悪い生き物はいまい。
彼らは、そうして如何なる手段を用いても報復しようと考えていた。それは、どんなことがあっても自分たちが優位な立場にいると信じ込んでいるからである。
ところが、彼らの行き先に待ち受ける未来は、そんな生温いものではなかった。
道の向こう側に一人の男が立っていたのだ。
どことなく不気味な雰囲気を漂わせて。
「ん?なんだ、お前は?」
怪しい人物を見かけたため、剣術部員のペンタスが前に出る。
「シィィシシシシシ……雨上がりに活きのいいのが3人。誰だァ?誰から殺してほしいィ?」
そこには、雲間から差し込む満月の光に照らされた一人の異形の人間が立っていた。
身長2メートルを超えるわりに身体の線は細く、ひょろ長い背丈。
目が異様に大きく、昆虫のような顔をしており、髪の毛は無い。また、下半身にはズボンを履いているが、上半身には何も着ず、晒された裸体はところどころ緑色の甲殻で覆われている。
彼の姿を形容するならば、カマキリの顔を持つ昆虫人間という言葉が最もふさわしいであろう。
その奇怪なる相手に出くわし、ジャスミンが悲鳴を上げた。
「きゃあぁーーーーっ!!!!」
「ばっ!化け物!!!」
「まままま、まさか!これが魔族!?」
さらにエボニーとペンタスも愕然として固まった。ジャスミンは先頭に立つペンタスの背中に身を隠し、必死に訴える。
「どうすんのよ!ペンタス!剣術で守ってくれるんでしょ!?」
彼女に急かされた剣術部員は、自信満々で前に歩み出た。
「あ、あぁ……仕方がないな。ここでオレに出会ったのが運の尽き。部活動で鍛え抜かれた、この剣の錆にしてくれよう」
かつて白金蓮たちと昼食を共にした時もそうであったが、彼ら貴族家出身の学生たちは、魔族の恐ろしさを何も理解していなかった。
長らく平和が続いてきたシュラーヴァスティーでは、魔王と魔族に対する警戒心を忘れている空気があり、特にそれは支配階級である貴族の周辺で顕著であった。
まして社会を知らぬ学生ペンタスは、たかが部活動で剣術を習ったくらいで、自分が戦闘のプロにでもなった気でいる。
確かに彼のレベルは23にまで上昇しており、それは剣術部の部長サイネリアの指導が的確だったことを意味するが、その部長が教えているのは、実家に伝来の剣技の基礎のみである。秘伝の奥義など教えるはずもない。また、ペンタスは指導係にすら抜擢されない、ただの部員だ。
つまり、この彼の行為は、無知なるモブキャラが死ぬために強敵に挑む愚行そのものなのである。
「シシシシィ……なんだァ?チミがボクチンの相手をしてくれるのかなァ?」
不気味に笑いながらカマキリ魔族はペンタスに問いかけた。
「行くぞ!貴様を討伐し、名を上げてやる!」
と、勇敢に立ち向かうペンタスであるが、その剣が魔族の速度に敵うはずもない。
ヒュンッ!
ヒュンッ!!
あっけなく空を切る剣。
素早い身のこなしで何度もペンタスの背後に回る魔族。
「……え?」
相手の姿を見失ったペンタスは、キョロキョロと周囲を見渡すが、魔族は常にその背後に立っていた。
「チミ、面白いねェ。そんなのでよくボクチンに挑んだものだァ」
魔族は最初から最後まで遊んでいた。
そして、両手を開くと、掌から鎌のような刃が飛び出した。
「へ?」
気づけばペンタスは、自分の喉元に2つの鎌を当てられていた。背後に立った高身長の魔族が、両の掌から伸ばした弓型の刃を共に下ろし、彼の首に掛けたのだ。
その刃は、2つとも上方を向いている。
首を斬るのではなく、それよりも上を斬るのだ。
ペンタスが最期に見たものは、自分の身を案じるジャスミンとエボニーの不安そうな顔である。
ズガシュッ!!!
ブッシュアァァァッ!!!!
次の瞬間、強靭な骨が断ち斬られる奇怪な音と共に鮮血が迸った。
その凄まじい血しぶきは、5メートル離れていたジャスミンの顔まで届く。彼女が目にしたのは、顔面の部分が、まるでお面が外れたように飛んで行き、残った頭部と胴体が力なく倒れるペンタスである。
飛んだ顔面を素早くキャッチした魔族は、その断面から様々なモノがこぼれ落ちないように注意を払いつつ、ズボンのベルトに付けている小袋から小さな板を取り出し、蓋をするように断面に乗せ、くっつけた。
「シィシシシシシ!シシシシシシシシシシ!!こうしないと、すーーぐ型崩れしちゃうからなァ!!!いいねェ!自分が死ぬとは思ってもいなかった時のキョトンとした”顔”!ボクチンのコレクションにィ、また新たな一品が加わるねェ!」
気色の悪いことに魔族は、その顔面を嬉しそうに見つめ、恍惚の表情をしている。
想像を絶する惨劇を目の当たりにしたジャスミンは、女性としての本能的危機回避である悲鳴を上げることすら忘れ、むしろ受け入れがたい現実に戸惑いながら、腰を抜かして尻餅をついていた。
「う……うそ……うそ…………うそ………………」
ショックで気絶してしまえば、まだ救いがあったかもしれない。だが、ジャスミンはどうすることもできずに、ただ茫然としていた。
「うああぁぁぁっ!!!」
ところが、ここで真っ先にエボニーが逃げ出した。いつもキザな仕草をしている彼とは思えないほど狼狽し、顔面蒼白で目に涙を浮かべ、鼻水を流しながら走り去っていった。
「エ!エボニー!!!待って!イヤ!!!イヤよ!置いてかないでぇ!!!」
ここに来てジャスミンは、ようやく必死に叫んだ。自分が置き去りにされたと思った途端、全身から恐怖の感情が湧き上がってきたのだ。
逃げ去るエボニーを見ながら、魔族は淡白に呟く。
「あァ……ま、いいかなァ。オスの顔はもう十分だしィ、あとはメスの顔さえあればァ」
そう言って彼は、腰を抜かしているジャスミンに近づいて行った。嬉々として迫る魔族に慄き、ジャスミンは這いつくばるように逃げようとする。
「やっ……ヤだ……イヤだ…………」
「チミはセンスあるねェ。目の前で殺しを実演してあげたのに気を失わないなんてェ。これはいい顔が取れそうだァ」
「たっ!助けっ!!あっ!!!」
ジャスミンは最後の力を振り絞って立ち上がり、走ろうとした。しかし、足がもつれて倒れそうになってしまう。ところが、なんとそれを支え、彼女を優しく抱き止めたのは、魔族であった。
「だめだめェ。勝手に転んで顔を傷つけちゃアーー。じゃないとボクチンが斬り取る楽しみが減っちゃうじゃないかァ」
目の前でニタニタ笑う彼の顔を見た瞬間、ジャスミンは恐慌をきたし、発狂した。
「ヤだ!!!ヤだぁ!!!!ごめんなざい!ごめんなざい!!ごべんなざい!!!何でもじまず!!!許じでぐだざい!!!!」
ジタバタしながら必死に逃げようとする彼女の顔は、汗と涙と鼻水と涎でクシャクシャである。もはや貴族令嬢としての気品は欠片も残っていない。彼女は気づいていないが、その足元には別の液体まで漏らしてしまい、濡れていた。
「そうそう……そういう”顔”。いいねェ。目の前で友達が殺されてェ、自分も同じようにされちゃうと恐怖する顔ォ。こういうのが欲しかったんだァーー」
歓喜に震える魔族は、興奮した顔つきで、掌から伸ばした刃を彼女の喉元に持っていった。そして、ニタァっと満面の笑みを浮かべる。
「いくよォーー。ボクチンの必殺処刑技ァ!『顔面ギロチン』!!!」
「イ゛ィィヤ゛ァァァァーーーーッ!!!!!」
ズバッシュン!!!!
アカデミーの一角で、再び鮮血が迸った。
だが、今度のものは先程よりは量が少ない。
しかも、どういうわけか魔族自身の腕から噴き出ていた。
そして、それと同時に魔族本人も何かに蹴られ、背後に吹っ飛んだ。
彼の右腕には、4本のツメで深く抉られた跡が付いている。
「い、今のはツメかァ!?まさか!!!」
驚愕して叫びながら、魔族は正面を見た。
そこには、猫耳を生やした亜人魔族が、ジャスミンを護るように戦闘態勢で立っていた。
「久しぶりギャオね!!!マントダエ!!!」
「フェーリスかァ!!!」
「イケメン猫ちゃんが報せてくれたギャオ!あの子、すっごく勇敢な猫ちゃんギャオ!」
実は数分前、フェーリスが言うところの”イケメン猫”が偶然、近くを通りかかっていた。この賢いオス猫は、猫通信で人間の危機を彼女に報せたのである。シスルとプリムラのためにアカデミーの新居で寝ることにしたフェーリスは、それを聞いた瞬間、一目散で駆けつけたのだ。
彼女は、両手の指に生えているツメを鋭く伸ばし、腰を丸め、腕を使って4足歩行するかのように身構えている。フェーリスが全力で挑む時の体勢である。
敵はカマキリの亜人タイプ魔族『マントダエ』。
ストリクスが白金蓮に語った予想どおり、”殺人鬼魔族”の正体は彼であった。
「ご無沙汰だなァ!!……って言いたいとこだけどよォ!なんだオメエ!今、ボクチンの邪魔をしたのかァ!?」
「そうギャオ!!人間は殺させないギャオよ!」
「ふざけんじゃねェ!!!互いのナワバリには手出ししねェのが魔族の暗黙のルールだろうがァ!ボクチンの楽しみの邪魔をすんじゃねェよォ!!!」
「ナワバリの問題じゃないギャオ!ウチは人間みんなを守るギャオ!」
「はぁ!?どうしちまったんだよ、フェーリス!」
「人間は面白いギャオ!特にこういうバカで愚かで滑稽な人間ほど、ウチは大好きギャオ!見てて飽きないギャオ!絶対に殺させないギャオよ!人間は生きてるからこそ面白いギャオ!死んだら一つも面白くないギャオ!」
フェーリスの価値観は単純である。
面白いことが好き。人間は面白い。だから守る。
特に彼女は、横柄なくせに臆病だったり、力も無いのに家柄だけで傲慢になったりするような、人間の愚かさを見るのが大好きであった。
皮肉なことに今、ジャスミンのように人から賛嘆される要素も同情される余地も一切持たない人間を、最も愛し、守ろうとするのは、フェーリスのような変わり者の魔族だったのだ。
「意味わかんねェよ、チクショウ!!こんな人里に出て来てまで、同胞に裏切られるとはなァ!!!」
一方で自身の快楽に横槍を入れられたマントダエは激昂して叫ぶ。両の掌から出した刃をフェーリスに向け、飛びかかった。
ガッギン!!!
ところが、彼はフェーリスに辿り着く前に別方向からの斬撃に対応し、刃で防ぐことになった。
マントダエの右手側には、身長が高く、褐色肌で耳長の女性が短剣を二刀流で構えて立っていた。
「フェーリス!加勢するわ!」
魔眼の侍女カエノフィディアである。彼女もフェーリスを追いかけてきたのだ。そして、その顔を知っているマントダエは驚愕する。
「なんだァ!?カエノフィディアじゃないか!!!オイオイどうしたんだよ!オメエたち魔王軍は壊滅したって聞いてたのにピンピンしてんじゃないかァ!」
「その方は、シスルさんとプリムラさんにひどいことをし、旦那様と奥様とは喧嘩別れされた不届き者ですが、今日まで何度も昼食を共にした女性でもあります!本当は優しい心をお持ちのはずなのです!みすみす殺させは致しません!」
「なんなんだァ!本当にオメエらァ!!揃いも揃って人間を守るだとォ!?」
「そこにいらっしゃるのはペンタス様!?なんとひどいことを!!!」
若干、噛み合わない会話の中で、カエノフィディアはマントダエの後方に倒れている顔の無い遺体を発見した。
それがペンタスであることに気づいた彼女は憤激し、勇敢にも突撃を開始した。これまで戦うことに遠慮がちであった彼女であるが、知人が殺されたことによって眠れる闘争心に火が付いたのだ。
彼女は素早い身のこなしでマントダエを攻撃する。彼も負けじと応酬した。鎌と短剣の二刀流同士の打ち合いであるが、お互いのスピードは、ほぼ互角。
そこにフェーリスも駆けつけ、マントダエの左側からツメで強襲した。
「おっと!二対一かァ!こいつは大変だァ!」
言いながらもマントダエの声には不思議と焦りの色はない。不意打ちでは右腕をやられたが、後方に下がりつつ、フェーリスの攻撃を軽々と避ける。
だが、その隙にカエノフィディアは、彼の背後に回った。
彼女の身軽なステップと俊敏なる短剣が、見事にマントダエの背中を捉える。完全なる死角から放たれる一撃に、彼の心臓は背中から一突きにされると思われた。
ところが、この時、慌てた声で叫んだのはフェーリスだった。
「あっ!!いけないギャオ!カエノフィディア!迂闊に近づいちゃ!」
ズバッ!!
なんと次の瞬間、斬られたのはカエノフィディアであった。
彼女は右脇腹を浅く斬られ、驚いて後ろに下がった。
「……大丈夫。かすり傷ですわ」
斬り裂かれた衣服から鮮血が滲み出ているにも関わらず、カエノフィディアは表情一つ崩していない。
しかし、予想外の位置からの攻撃には、密かに冷や汗をかいていた。
マントダエは、背中からも鎌のような刃を生やしたのだ。勢いよく飛び出したソレは、出現と同時に攻撃となった。彼が上半身裸でいたのは、この能力を遺憾なく発揮するためである。
フェーリスの声によって警戒心を強めたお陰で、ギリギリのところで踏み込みを抑えたから良かったものの、そうでなければ、カエノフィディアは腹部を思いっきり斬り裂かれていたところであった。
「ソイツは、体のどこからでも”鎌”を出せるギャオ!知らずに近づくと危ないギャオ!」
彼女を心配するフェーリスが種明かしをする。
一方で、マントダエはカエノフィディアを不思議そうな目で見返した。
「ンンーーーー?なんだかカエノフィディア、雰囲気変わったなァ?ボクチンの能力を忘れてるみたいだし、何があったァ?」
それもそのはず。彼女は、彼が知っているカエノフィディアとは別人なのだ。彼が以前に出会ったのは、蛇の人獣魔族に操られていた彼女であり、人間としてのカエノフィディアではない。ゆえにこの二人は、正確には初対面なのである。
「アナタのごときゲスな輩に語ることはありません!」
そのような経緯をいちいち殺人鬼に説明する気にはなれず、カエノフィディアは突っぱねるように答えた。
しかし、かつての同胞であると思っているマントダエとしては、他にも話したいことがあった。
「ならよォ、ボクチンは語ることがあるぜェ?オメエたち知ってるかァ?最近、中立地帯を席巻されてる『超魔王』様の話をよォ?」
「「え?」」
予期せぬ単語が飛び出したため、フェーリスとカエノフィディアは固まった。それは、白金百合華が冗談で名付けた白金蓮の魔族サイドの二つ名である。
「なんでも、そのお方はァ、魔族の新国家を設立されようとなさってるんだァ。ボクチンも一度、レポリナってウサギ魔族から誘われたぜェ。まぁ……目指すのは平和な国家だって言うから、キッパリ断ったけどよォーー」
「ギャオ?それって……」
「蓮華の里?……レポリナさんってば、その呼び名はやめろって旦那様から言われてたのに……」
そう。白金夫妻が『蓮華の里』として魔族の平和な村を創設してより約3ヶ月。次第に人口が増えはじめた村では、白金蓮を称えるために『超魔王』の名が盛んに飛び交うようになっていた。
環聖峰中立地帯に隠れ住む魔族たちにとって、『超魔王』は今や伝説の存在になりつつあったのだ。
これに目を丸くする二人であるが、マントダエの話には続きがある。
「でなァ、本題はここからよォ。ボクチンは平和な国なんて望まない。欲しいのは人間を好きなだけ殺せる魔族の国さァ。そんなボクチンが、ついにこの身を預ける気になれる素敵な魔王様に巡り会ったのよォ!あのお方はいいぜェ!人間を殺すのが最大の楽しみだって豪語されてるからなァ!」
「え……魔王様が他にも?」
フェーリスがいつになく真顔で疑問の声を出す。
マントダエは、誇らしげに自分の主の名を叫んだ。
「その名も『百獣の魔王』様だァ!!!」




