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ウチの嫁が最強すぎて魔王すらワンパンなんだが  作者: 東条賢悟
第八章 異世界学園と召喚の真実
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第290話 心を開く

殺人事件現場となった大神官エニシダの屋敷に公爵令嬢であるローズがやって来た。これには、一同、目を丸くした。


「あら、ヘンビット殿下、ごきげんよう」


ちょうど玄関の前で王国騎士団と相談事をしていた第二王子ヘンビットが最初に出会うことになり、彼女への求婚者の一人でもあることから、彼は歓迎するように応対した。


「これはこれはローズマリー嬢!どうしてアナタがわざわざこちらに?」


「本日は、父も兄も不在でありますため、あたくしが代理として参上致しました。女の身で恐縮ですが、状況をご説明いただけますでしょうか」


人が殺された現場を訪れたというのに、実に場慣れしている公爵令嬢である。ヘンビットとしても、女性がこの地を訪問したことに驚きを隠せなかった。


「なんと……状況説明であれば、お宅にお伺いしましたものを……」


「いえ。父に正確な報告をしたいと思いましたので、直接、検分に参りました」


「これはまた、豪胆な女性ですな。まるで我が妹だ」


「ウフフ。”聖王女”様と並べてくださるなんて、光栄ですわ」


「我々は、これより悪しき”殺人鬼魔族”を討伐するため、アカデミー内を捜索するところなのです。中にラクティフローラとシロガネ卿がおりますので、二人から話を聞いてもらえますか」


「そうでしたか。どうか、お気をつけくださいまし。皆様にご武運を」


「ありがとうございます」


そうして、屋敷を出て行く第二王子と王国騎士団をローズは見送った。彼女のそばを通り過ぎる騎士たちには、ほんの一瞬、焦りの色を見せながらも笑顔で挨拶する。


「騎士団の皆様も、ご苦労様でございます」


騎士たちは、彼女の美貌に照れつつ会釈して返したのだが、第一部隊長と第三部隊長は、妙な顔つきで振り返り、ローズの後ろ姿を目で追った。それにヘンビットは首を傾げた。


「ん?どうした?ソートゥース部隊長?コリウス部隊長?」


「あ……いえ……」


「なんとなく、どこかでお会いしたような気がしまして……」


これにはローズも内心で冷や冷やものだった。彼らは魔王討伐連合軍で、ゴールドプレートハンターである”女剣侠”と共に戦っている。特にソートゥースは、第一部隊に従軍していた彼女と何度も会話しているのだ。


しかし、ドレスで着飾り、化粧もしている上品なローズマリーと、男勝りで荒っぽいハンターのローズとが同一人物であるとは、彼でも結びつかない様子であった。



第二王子と王国騎士団が玄関から出て行った後、執事に案内されて、ローズが僕たちのいる2階に来た。僕と桜澤撫子とラクティフローラとシャクヤは、使用人たちから新しい情報を聞き出せないかと、さらに細かく聞き込みをしていたのだ。


嫁さんと牡丹と山吹月見、ダチュラとカエノフィディアとルプスは、僕たちのやり取りを眺めているだけである。


そこにローズが到着したので、皆、妙に気まずい感じの笑顔になった。


階下の声が聞こえていたラクティフローラは、ローズにそっと近づき、小声で耳打ちする。


「ローズさん、ウチの兄が図々しくて、ごめんなさい」


「いえいえ」


王女に恐縮しつつ、一方でローズとしても、ある人物がいることに驚いている。それは桜澤撫子の存在だ。彼女たちは以前、王都マガダで『幻影の魔王』捜索と称して共に見回りをしている。桜澤撫子が、実は勇者ではなく『幻影の魔王』本人であったことは伝えてあるが、その後、顔を合わせるのは初めてなのだ。


これに気づいた桜澤撫子も、ローズに向けて微妙な笑顔で謝罪するジェスチャーをした。ローズもまた、ダチュラが彼女と平然と一緒にいることから、問題ないのだと判断し、会釈して応えた。


ところで、僕はローズの登場や彼女たちの邂逅よりも、ローズがプリムラとシスルを伴って来たことに目を見張った。彼女がこちらに近づいて来たので、僕も小声で尋ねた。


「ローズ……どうして君が、彼らを連れて?」


「なんだ?知り合いだったのか?貴族家の連中にカラまれてるみたいだったから、心配で連れて来たんだ」


「え……カラまれて?」


「それより遺体はどこだ?ひどい有り様らしいじゃないか」


ローズはローズで、猟奇的殺人の事件現場というものに興味があるらしく、ウキウキした顔で僕に催促してきた。


「ええ。こちらですよ、ローズマリー嬢」


仕方なく、執事や使用人に怪しまれないよう、僕が彼女を案内する形で、エニシダの寝室に入れた。


普通の女性なら僕は止めるところだが、超一流のハンターである彼女を制止する必要はない。ローズはさっさと遺体に近づき、何の躊躇もなく、上に掛けられているシーツをめくった。


「ぅげっ!!!これは、あたしでも引くな……!」


「ローズ、ローズ!素が出てるよ、素が!」


苦虫を噛み潰したような顔でドン引きするローズに、僕は小声で注意を促した。すると、ハッとした彼女は、慌てて、わざとらしく僕に抱きついてきた。


「あっ!!あぁーーーーっ!イヤですわ!恐ろしいものを見てしまいました!」


「ちょっ!ちょっとローズ!……マリー嬢!」


この何度繰り返されたかわからないお約束の展開を、執事や使用人たちは、自然なことと受け取って見ている。


しかし、部屋の外から怪しむように見ていたウチの嫁さんは、これを見て瞬時に僕たちに近づき、ローズにあえて上品ぶった言葉をぶつけた。


「ローズマリーさーーん?あんまり不用意に首を突っ込まれますと、”殺人鬼魔族”の餌食になってしまいますわよーー?」


「あら、怖い!申し訳ありませんわ。つい恐ろしくて殿方の肩に身を預けてしまいました。オホホホ……」


嫁さんの殺気に気圧されたローズは、若干、青ざめて僕から離れた。


まったく。今に始まったことではないが、ローズの悪ノリには困ったものだ。


そして、このやり取りを最も不思議そうに見つめるのは、彼女に連れて来られたプリムラとシスルであった。


「レンさんって……ローズマリー様とも親しいの?」


「何者なんだ……彼は……?」


部屋の外から扉越しに僕たちを眺めている彼らに気づき、僕と嫁さんは恐る恐る、ゆっくりと近づいて行った。


「「や、やぁ……」」


互いに気まずいのは一緒である。僕たち夫婦が同時に声を掛けると、彼らはビクッと反応して、取り乱した。


「プリムラ、プリムラ、もういいだろ。やっぱ帰ろう」


「う、うん……」


シスルに促されて、プリムラも引き上げようとする。しかし、先程から僕たちの妙な空気を感じ取っていたローズが、ここで急に大きな声を上げた


「あぁーーっ!喉が渇いたわ!どなたか、お茶をくださらないかしら!」


わざわざ現場に駆けつけた公爵令嬢が、このように言うのである。屋敷の執事も使用人も、途端に慌てた。


「あ!も、申し訳ございません!すぐにご用意致します!応接間にご案内しますので、少々、お待ちください」


使用人が直ちに茶を淹れる準備に向かい、執事が応接室にローズを迎えようとする。それに礼を述べつつ、ローズはシスルとプリムラに声を掛けた。


「お二人とも、一緒にお茶にしましょう」


「「…………え?」」


「さ、早く。シロガネ様も皆様も、お疲れでしょう。ご一緒にいかが?」


「……そうですね。同席させていただけますか」


彼女のこの早業には感謝もするし、見事であると感服もする。帰ろうとする二人を無理やりティータイムに誘ってしまったのだ。とても自然なやり取りで。しかも、僕たちが同席する空気も、さもそれが当然であるかのように作り出してくれた。


ローズから肩を押され、半ば強引に応接室に向かわされたシスルとプリムラは、観念したように部屋に入り、隅っこで固まった。


やがて使用人たちが人数分のお茶を運んできた。僕たちは、それを順番に受け取る。


テーブルを囲んでソファに座った僕たちと違い、シスルとプリムラは、いつまで経っても部屋の隅で立ったまま、肩身が狭そうにお茶を飲んでいた。


ちなみに余談だが、僕たち夫婦と桜澤撫子と山吹月見は昼食を取っていない。しかし、グロ遺体を目の当たりにしたことで、今も食欲は無かった。


それよりも、今はようやく二人と面と向かって話せる最大の好機である。


僕と嫁さんは、互いの目を見つめ、頷き合った。

そして、立ち上がり、彼らのもとに向かった。


「二人とも、ちょっといいかな?」


「「…………」」


僕から急に話し掛けられ、シスルとプリムラは緊張で凝り固まった。彼らは、僕たちとは目を合わせようともせず、その表情からは「あんたたちと話すことは何も無い」という感情が滲み出ている。


だが、次に僕たち夫婦が取る行動は決まっていた。

それに二人は仰天することになる。


「「ごめん!!!」」


「「えっ!?」」


僕と嫁さんは、潔く彼らに頭を下げたのである。

嫁さんが真っ先に二人に謝罪した。


「私たち、さっき夫婦で話し合ったの。きっと前に会った時、何か失礼なことをしちゃったんじゃないかって。だから、きちんと謝ることにしたの。何がダメだったのかも理解してない私たちなんだけど、本当にごめんなさい。もし良かったら、どうして嫌われちゃったのか、教えてもらえないかな。私たち、意識して直すから」


この言葉に目を丸くし、我が耳を疑うかのように愕然としているシスルとプリムラ。しかし、彼らが反応するよりも先に僕も自分の意思を伝えた。


「百合ちゃんの言うとおりなんだよ。僕たち、こっちの文化に慣れてないところがあるから、何も気づけなくて、ごめん。こうなったら、何もわからなくても先に謝ろうってことにしたんだ」


ここまで語ると、居ても立っても居られなくなったシスルが、声を荒げた。


「ちょっ!ちょっと待ってくれ!!!」


だが、それは怒りから来るものではない。驚きと感動と申し訳なさと情けなさとが混在した、何とも言えない後悔の叫びであった。


シスルは、頭と気持ちを整理するように震えながら語りはじめた。


「違う……違うんだ。きみたちに謝られるようなことじゃないんだ。一方的に、おれたちが避けてただけで……。ご、ごめん……。まさか……レンとユリカのような人が、頭を下げてくるなんて思いも寄らなくて……」


彼の言葉に後押しされ、横で狼狽していたプリムラも、彼に被せ気味に実情を訴えた。


「あ、あたいたちは、バジルって人たちに脅されて!」


「「……え?」」


彼女のそのセリフが耳に入った途端、僕たちは瞬時に様々なことを察した。どうして、そのケースを今まで想定してこなかったのか。自分たちが人気者になった経験など、ほぼゼロであった僕と嫁さんは、ここに来て、初めてシスルとプリムラがどんな目にあってきたのかを想像することができた。


「ま、まさか……君たちは……?」


「私たちに近づかないように……?」


今度は僕たちが愕然とする番である。しどろもどろになりつつ、僕と嫁さんは彼らに詳細を尋ねた。


シスルとプリムラは、僕たちと喫茶店で会食し、別れた後のことを語ってくれた。それは聞くに堪えない許すまじき陰湿なイジメであった。


「そんな……それなのに私たちは……」


「僕たちは……知らなかったとはいえ、君たちになんて失礼なことを……」


彼らを脅し、排斥した張本人たちと、僕たち一家は仲良く何度も会食していたのだ。ほぼ毎日と言ってよいほどに。


どうしようもない怒りが込み上げてくるが、それと同時に、気づくことのできなかった自分自身にも、やりきれない歯がゆさを感じた。目の前が真っ暗になった。


いろいろなことが頭の中でグルグル回る。しかし、だとすれば、今後の自分のあり方を決めるためにも、全ての事実をハッキリさせたいと思った。


僕は、もう一つ気になっていた点を確認した。


「じゃあ、二人が喧嘩してたのも、そのせいなのか?」


ところが、これにはシスルもプリムラも困惑した顔になった。この問題には、別の事情が絡んでいたのだ。


「あ、いや……それは……」


言葉を濁したシスルに代わり、プリムラが意を決して前に進み出た。


「すみません。あたいには、このアカデミーに来た目的があるんです。この前の揉め事以来、その焦りが募ってしまって、次第にシスルとも言い争いに……」


「おれは、エニシダには近づくなって言ったのに、こいつはどうしても行くって聞かなくて……」


「ほ!本当はあたいが!エニシダ教授を殺そうと思っていました!!」


「「はぁ!?」」


この告白には、並み居る全員が驚いた。僕が無実を証明してあげたにも関わらず、彼女には殺害の動機はあったというのだ。


「最初は正体を探るつもりで近づいたんですが……や……やっぱり、あの人は、噂通りのズルい人で……あ、あたいを……あたいのカラダを…………」


プリムラはさらに話を続けようとしたのだが、途中で何かを思い出して涙目になり、声を詰まらせてしまった。


「まさか……」


ここにいる僕たち一同は、それぞれ彼女の身に何が起こったのかを想像し、言葉を失った。


うちしおれた彼女を、シスルは部屋の隅にあった椅子にまで連れて行き、座らせた。


「プリムラ、おれたちのこと、話すけどいいか?」


彼女は黙ってコクリと頷いた。

彼は僕たちに向き直り、姿勢を正して言った。


「皆さん、聞いてもらえますか?おれとプリムラの……ちょっとだけ重たい話を」


これに一同は頷いた。ようやく僕たちと彼らは胸襟を開いて話をすることができそうである。


そうして、シスルは自分たちの過去を語りはじめた――




――彼らが生まれ育ったのは、共和制国家シュラーヴァスティーの南東部にある豊かな穀倉地帯。


地主である大農家のもとに多くの小作農が集まり、大規模な農業が行われる広大な農村があった。


その村に15年前、身籠った女性が里帰りしてきた。それがプリムラの母である。


彼女は、この村の出身であったが、両親は若い頃に他界しており、身寄りはない。農家の生まれであるわりに綺麗な顔立ちと賢さを持っていた彼女は、両親が亡くなるとすぐに村を離れ、町に出て職を見つけ、それなりに生活していたという。


ところが、20歳を過ぎた頃、どこかで子どもを授かってしまい、しかも職を追われたらしく、故郷に舞い戻って来たのだ。


田舎の村というものは、こういう外から来た人物に対して、様々な形で敏感に反応するものである。


多くの年配の女性は、プリムラの母が、無理やり子どもを作らされて逃げ帰って来たのだと噂した。


プリムラの母自身も、何があったのかを全く話さないため、憶測は憶測を呼び、そうしたことが、まことしやかに囁かれるようになった。


しかし、こうした時に、事実上の村の長である大地主は、とても面倒見の良い人物であった。これがシスルの父である。


身重の女性に農作業は無理であろうと、彼女を屋敷に迎え入れ、小間使いとして働かせた。臨月に入ると、現代で言うところの産休と育休と取らせ、プリムラは無事に産み育てられたそうだ。


「ちなみにウチの親父は、プリムラの母さんが綺麗なもんだから、三番目の奥さんにしようとアプローチしたんだけど、見事にフられてます。おれとこいつが、きょうだいってオチは無いんで、それは先に言っておきますね」


シスルが場を和ませようと、言う必要のない父親の不名誉まで語り、皆を笑わせた。



さて、話の続きであるが、プリムラより2ヶ月遅れて生まれたシスルは、彼女ときょうだい同然に育った。


やがてプリムラが留守番できるくらいの歳にまで成長すると、彼女の母はシスルの家を出て、小作農として生きていくことにした。帰郷前の蓄えがそれなりにあったそうで、近くにあった小さな空き家を買い、そこに住んだ。


古びた新居は、ところどころ傷んでおり、冬は隙間風に悩まされることになったが、母娘で温め合いながらベッドで仲良く寝たという。


母思いに育ったプリムラは、小学生くらいの歳になると、雇われ農家として働く母を懸命に手伝うようになった。また、近所にあるシスルの実家にもちょくちょく遊びに行った。


そうした頃、一つの事件が起こった。


畑仕事が終わると、毎日のようにシスルの家で近所の子どもたちと遊んでいたプリムラであるが、ある日、奇妙なことに気づいたという。


「んなぁ、シスル、あの男の人、昨日も一昨日もその前も来てたな。何だべ?」


「……え?」


この何気ない一言が、シスルの一家を救うことになる。


なんと旅の行商人を装って、変装しながら意味もなく彼の屋敷を出入りする不審な人物がいたのだ。


それは盗賊の仲間だった。


収穫期を終えたばかりの大地主の屋敷には、大量の銀貨金貨が集まる。農家といえども、この時期だけは貴族並みに裕福と言える地主がいないこともない。そうしたことが起こりうるのが、土壌に恵まれたシュラーヴァスティーという国家なのである。


そのシスルの屋敷を襲うため、盗賊たちが、仲間の一人に偵察させていたのだ。様々な衣装の商人に化けて。何度も何度も。


ところが、この入念な下調べが、一人の天才少女の目に留まってしまったのである。プリムラは、一度見たものを覚えてしまう特質を持っていた。どんなに変装を繰り返しても、顔が同じであることを簡単に見破ったのだ。ただすれ違ったことがあるだけで。


この事実をシスルから伝え聞いた彼の父は、いち早くハンターを雇い、屋敷に隠れ潜ませて待ち構え、盗賊たちが夜間に侵入するのを一網打尽にすることに成功した。


こうしたことがキッカケで、さらにプリムラは、シスルの一家に大事にされ、姪っ子のようにかわいがられることになる。そうした幸せな時期が数年続いた。しかし、時の流れは残酷なものである。


プリムラが12歳になった時、母が急逝したのだ。


死因は過労である。女手一つ、農作業で娘を養っていくのは、並大抵のことではなく、苦労に苦労を重ねた結果、身体を壊し、そのまま息を引き取ったのである。


プリムラは悲しみに沈んだ。


シスルの一家も、彼女の母の異変に気づけなかったことを激しく後悔していた。


しかし、プリムラは強かった。持ち前の明るさと逞しさで、その後も小作農として働き、元気に生き抜いていった。


その2年後のことである。


プリムラが14歳の時、彼女のもとに驚愕の荷物が届いた。


田舎であるため、鍵も閉めずに寝ていた彼女の家に、窓を開けられて大きな袋がドサッと投げ込まれたのである。明け方近くのことであった。


物音に気づいた彼女は、中身を見て仰天し、早朝からシスルを自宅に呼んだ。


「なんだよプリムラ……こんな朝っぱらから……」


「シスル……あ、あんね……慌てないで見て欲しいんだ」


「だから何だよ……こんな田舎で何があるってんだ……」


シスルはぶつくさ言いながら、プリムラが震える手つきで差し出した袋の中を覗く。次の瞬間、あくびをしていた口が固まった。目も大きく見開いて、いともマヌケな顔で彼は叫んだ。


「なっ!なんだ!!!この金貨は!?」


その袋には、まず田舎では見られることのない大量の金貨と、一通の手紙が入っていた。


これが彼らの運命を大きく変えるのである。


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