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吐血する最強回復魔法師のスローライフ  作者: ぼちゃっそ
2章 人形師編
15/17

15話 実験

案内されたのは病院から徒歩十分のところにある一軒家だった。

裏口から中へ入るとキッチンと繋がっていた。

人の住んでいる気配はない。


キッチンとリビングは同じ空間にあり、

そこで荷物を置くように言われた。

指示通り背負っていた仕事道具を床に置き辺りを見渡す。


椅子にテーブル

食器棚にドレッサー

土の入った鉢。


203号と出会ったあの空き家と比べて、

明らかに人が住んでいた、という生活感がこの家にはあった。


「ようこそ。元我が家へ」


瞬間。

薄暗い部屋が少し明るくなった。

見るとテーブルに優しく燃えるロウソクが1本立っていた。

203号は荷物の中から数枚の紙と透明な液体の入った試験管、

そして病院で貰った封筒を用意するついでに昔話を聞かせてくれた。


僕の父さんと母さんは薬草師だった。

賞状貰うくらい頭が良くて僕を引き取るくらい優しくて自慢の親だった。

ある日父さんと母さんはある薬品を作り出そうとしてた。

その薬品は血液の魔素に反応して色が変わる”血液反応”の薬。


もしこの薬品が完成すればこの街のいや世界の刑事事件に役立つ。

人間が体内に保有する魔素は十人十色。

ひとつとして同じものはない、といわれている。


203号の両親は死んだ。

理由は薬液の混合によって生まれた毒素だった。

未知の薬品を創ろうとして死ぬことは薬草師の研究家なら珍しくない。

本当にどこにでもある陳腐な話だ。

そして子どもが親の遺志を引き継ぐこともよくある話だ。


大した話じゃない。

と物語りを話すようにおっとりとそれでいて懐かしそうに

話していたけれど、だんだんと興奮で声が力強くなっていっていることを

本人はきっと自覚していない。


「僕は頭が悪いから完成するのに3年もかかってしまったっすけど、

 つい昨日ようやく遺志を果たせた」


声が震えていた。

目頭を赤くしてうっすらと涙が端に溜まっている。

昔話をしているうちに気持ちが込み上げてきてしまったのだろう。


昨日と言えば俺とリンゴが203号に出会った日だ。

あのボロボロのアパートで俺たちと出会う少し前に完成させていたのか。


203号は袖で目を擦ってから

机に5つの試験管に薬液を流し込み終え、

封筒の中から血の入った小瓶と写真を取り出した。


「これが被害者の写真とその血液っす!」


試験管にはそれぞれ名前が書いてあり、写真を沿わせる。

写真は被害者5人、1人につき2枚の写真を重ねて置いてある。

1枚目は被害者の顔、2枚目は殺害時の傷跡が写されていた。


A:20代の若い女性。紫色の髪で化粧が濃い。

B:30代の男性。なよっとしており無精髭が生えている。

C:40代の男性。メガネをかけており小太りの中年男性。

D:40代の女性。赤のパーマをかけた人の良さそうなオバサン。

E:20代の女性。すこしふっくらとした顔の女性。


写真の裏を見ると傷害の検査記録が書かれてあった。

傷から凶器は刃渡り15センチ程度の刃物。

A~Eはみな死後胸・腹を裂かれ、臓器を抜かれていた。

死因は頸動脈損傷による失血死とこれも共通していた。

表返して写真をみると確かにA~Eの右首元は刃物で抉られたような傷があった。


ただ、5つの写真を見比べていると何か引っかかる。

上手く隠された違和感を覚えはするもののそれが何なのかまで行き着かない。

自分の頸動脈の辺りを摩ってみる。


・・・。

俺の首は案外温かいな。

そんな平和ボケした感想がひとつ浮かぶだけだった。


「さぁここからは理科実験のお時間っす!助手のリンゴ君」

「準備OKです203号先生っ」


思考が陽気な声でパンと破裂した。

みると2人が薬液片手に大盛り上がりしていた。


「お、おいリンゴ何し―」


言いかけて言葉を引っ込める。

せっかく盛り上がっているのに水を差すもの悪い。

はぁ。と溜息をついてから実験番組を観ることにした。


「えーまずこちら5つの試験管に薬液ミエルちゃんを大さじ1杯ずつ入るっす」

「入れたものがこちらになりまーす」


仲いいな。


「はい。あとはそこにA~Eの血を少々垂らし、軽く試験管を振り混ぜるっす」

「はーい♪」

「するとあら不思議~。魔素と反応して着色します!」

「お~ぉすごい!」


試験管を振りながらリンゴがわぁっと声を上げる。

確かに試験管内の溶液は異なる色に変色していた。


Aは青

Bは黃

Cは緑

Dはピンク

Eは白


俺と203号は

あんまり鮮やかに変色するもんだから自然と声が漏れていた。


「ってなんでお前が驚いてるんだよ」

「色がこれだけ分かれるのはむしろ珍しいっすよ!

 完成品といってもまだ1号すよ?精度が悪いんす。

 実際色のバリエーションも24色しかないんすから!」


とぶつぶついって識別票をよこした。

そこには反応24通り、つまり24の色が塗られていた。

たしかに世界人口すべてをこの24通りに当てはめるのは精度が悪いと言えるだろう。

だが今回に限っては運が良かった。

A~Eはそれぞれ全く別の色、識別がつくのだ。


「203号さん、まだやってないヤツが1つあるんですけど」

「あー人形師の血っすね。でも今の精度でやっても勿体ないしなぁ」

「この血はどこで手に入れたんだ?」


尋ねると203号はAの写真をひらひらと揺らした。


「人形師は一度Aに反撃を貰ってるんすよ。

 なんでもAは持っていた果物ナイフで応戦したらしくて」


「ん?だとしたら可笑しくないか?」

「何がっすか?」

「人形師ってあの銘持ちを退ける程の強さだろ?素人が一矢報いることなんてできるのかよ」

「あーたしかに・・・」


203号は腕を組んでしばらく唸っていた。

が、悩み疲れたのか考えるのが面倒になったのか。

じゃあといってもう一つ試験管を取り出し薬液を入れた。


「悩んだらとりあえず試行そんで思考!」

「お前なぁ」


203号はXと書かれた小瓶から血液を2滴垂らす。

そうしてゆっくりとかき混ぜると薬液は緑色に変色した。


緑色、か。


「Cさんと同じ色ですね」

「まぁ所詮24色っすからねぇ~。まだまだ研究っすね」

「まさかCさんが犯人だったりして」

「ハハハ!リンゴちゃん面白いこというっすね!確かめてみる?」


そう言うと今度はCとXの試験管を両手に持ち、

緑色の薬液同士を混ぜ合わせた。


「ミエルちゃんにはもう一つ特性があるんす。

 色の識別には難はあるけど、同一の血液には高い精度があるんすよ。

薬品の成分にアルペチノールが含まれ-」

「で?」

「同じ血液なら発光反応が出るっす。これは理論上100%の精度っすよ」


203号は躊躇もなく混ぜ合わせた。

その様子をただ理科の実験を見るかのようにぼーっと眺めていた。

何の期待もなく思考を停止していた。


変化なんて起こるはずがない。

その場にいた全員がそう思っていた。


「・・・おいマジかよ」


蝋燭の火が消え、部屋が闇に包まれる。

外からの陽を通さない深い闇。

その中で淡く灯る緑の光。


適合した。

いやしてしまったと言う方が正しいか。

背筋に冷たい何かが伝う。

とてつもなく嫌な予感がする。

しかし予感の静止に反し脳が熱を帯び高速で回転し始めた。


Aは人形師に襲われ、手持ちの果物ナイフで自己防衛を図った。

結果ナイフに人形師の血液が付着。

その血液がCの血液と一致した。


つまり人形師はCの小太り男ということになる。

しかしその人形師Cは人形師に殺害されている。

詰まるところ、


「人形師は2人いるってことっスか・・・」

「いや2代目というのが正解か」

「・・・そんな」


数秒間の無音が続く。

最初に無言を壊したのはリンゴだった。

新たに蝋燭に火を灯し被害者の写真を険しい顔で見比べる。


「リンゴ?」

「スダチさん。これやっぱり別人で間違ってないと思います」


「1人目の被害者Aさんの傷口は記録によると切れ味の悪い刃でへし切ったと書かれてあります。たぶんですけどそれは間違いで解体に慣れてなかったんだと思います。その証拠に2人目は解体が雑ながらも刃の入れ方が綺麗になっています。しかし3人目から5人目を見てください」


リンゴは1代目人形師の写真を指さす。


「3~5人目の刃の入れ方が綺麗過ぎるんです。2人目から3人目の殺害間隔は2日です。仮に見つかっていない被害者がいたとしてもたった2日でここまで綺麗に解体に至らないと思います。そのことからやはり人形師は2人いて、かつ今の人形師はナイフの扱いに長けた人だと思います」

「ぱっと思いつくのは軍人、そして労働ギルドってとこっすね」


やはりナイフに長けるとなると戦闘職になるよな。

・・・。


「ちょっと待て。その前に、人形師はどうやってコイツらが医療従事者だって見抜いたんだ?」

「あっ」

「そういえばそうっすね。何か名簿のようなものを病院から盗んだ、とかっすか?」


人形師の特徴。

ナイフに長けた戦闘職で病院内部に詳しいヤツ、か。

まだ絞り込むには情報が足らないな。

情報を提供してくれそうなヤツはいないか?


「おい203号、クロックに協力してもらうことは可能か?」

「可能だと思うっすけど、なんでクロックすか?」

「軍部は一度人形師捜索のために医療従事者を全員調べている。ならそのリストがあるはずだ」


203号は数秒思案の色をみせた。

先にリンゴが答えに行き着いたようで声を発した。


「リストから職員情報を横流ししていそうな人を探すんですね?」

「そういうことだ。職員に人形師がいないことは軍部の調査で分かっているはず。なら職員が職員情報を人形師に横流ししている可能性がある。そいつを探すためにクロックの権限で職員リストを手に入れる」

「あっ!なるほど!」


よし、そうと決まれば善は急げだ。

早速クロックに-。


「人形師が出たぞおおおおおおおおお!」

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