13話:焦り
「綺麗な所だね〜!」
目の前に広がるキラキラ光った川を見て声を上げる。
吏緒に連れてこられたのは学校から10分くらい歩いたところで
今まで来たことの無い静かな橋の上だった。
人通りも全く無くて、川の水は汚れが殆ど無く
夕日が当たり風に吹かれて光っていた。
「こんな所初めて来た〜」
「すげぇだろ?ぶっちゃけ俺も先輩から教えてもらったんだけどな」
吏緒は隣で笑いながら川を眺めている。
そういえば用は何なんだろう。
「これを見せに?」
「あー・・・えっと、そのさ」
吏緒は軽くハニカミながら首筋を指でなぞっている。
緊張するといつもやる癖だ。
そんな大事な話でもあるのかな?
「なんつぅか。ちょっと聞いて欲しい事あるから・・・」
「うん?」
どうやら結構マジメな話らしい。
「この前の遊園地楽しかった?」
それだけ!?
まぁ、本心はハルくんと一緒に居たかったって
こともあるけど楽しくないってわけでもなかった。
「楽しかったけどー・・・なんで?」
「そっか。良かった・・・・俺はめっちゃ楽しかったし嬉しかった。
ハルが玲那の事紹介してくれて初めて玲那の事知って。
俺はあんま女子と仲良くしようとか思って無かったんだけど
玲那は俺に一番近い女で〜・・・・その」
この展開って?
吏緒に限ってそんな事はある筈無いよね。
「だから。大切にしたいと思った・・・・」
どうすればいい?
ハルくんが好き。
だけど・・・・やっぱりこんなウチじゃダメなんだね・・・・
「・・・・いいよ」
ハルくんと幼馴染以上になろうなんてずるいよね。
「えっ!?」
「告白でしょ?おっけーって意味」
笑顔を作って言う。
「それじゃ・・・今日から俺らって・・・?」
「カレカノだねっ」
吏緒は真っ赤になりながら自分の顔に手をあてている。
何かウチも照れてきた。
照れ隠しに川のほうをじっと見る。
「やっべ。めっちゃ恥ずい・・・絶対振られると思ってたから・・・・」
「吏緒に告白されるなんて思ってなかった」
「ははっ。今、これ以上玲那と一緒に居たら死にそうだから
ごめん。帰るな!」
「あ。うん。バイバイ」
そういってお互い手を振る。
吏緒がいなくなった静かな橋の上にゆっくりと座る。
まだ顔の熱が残っている。
吏緒の気持ちがハッキリ伝えられて。ウチはそれを受け入れた。
ウチは確かに吏緒だって好き。それでもまだ不安が残ってる。
でもそんな不安さえもなくて、本当に好きなのはハルくん。
一人でグダグダ考えながらハルくんを好きになったのはいつだろう
と過去を思い出した。
「・・・・」
玲那や羽流がちっちゃい時から家がお互い真正面で、年齢は
違いながらも良く遊んでいた。
中学も同じで時々一緒に帰ったりもしていたが羽流はバスケ部
で吏緒と出会う。
そんで羽流を通して一つ学年が上な吏緒を知った。
その時は吏緒とは殆ど喋らなかった。
理由は玲那は「男子が苦手だったから」
特別に男性恐怖症とかではないけど羽流以外の男子と話したり
行動を共にしたりするのは不可能に近かった。
だから年上だからもあって初対面の吏緒ともまともに話せなかった。
ハルくんに恋愛感情に似たものを抱いたのはこの頃だろう。
やっぱりハルくんの隣にいると落ち着く。その気持ちが次第に変化し
ていて、吏緒との接触でその事を更に強く感じた。
ハルをくん付けで呼んでいるのは近づきすぎるのが怖いからかもしれない。
吏緒は吏緒だけどね・・・・
ちょっと前に述べた吏緒と付き合う上で不安が残ってるというのは
まだ、完全に2人きりでいる事に慣れていないからだ。
さっき、吏緒と一緒に居た時だってかなりテンパってた・・・・
ハルくんといるときは全然大丈夫なんだけどなー・・・
「付き合ってけば大丈夫だよね」
そう開き直りもう沈みそうな夕日を見てからその場を後にする。
(ドサッ)
「痛ぇ・・・・」
ベットの上で転がってたら落ちた。
何で転がってたかって?
さっき来た吏緒からのメール。
件名:無題
おk
意味が分からんメールだった。
送り間違えたのか?と思って
『送り間違え?』
そう送ったら
『いや。今日玲那に告った!!』
『ぉ!結果は・・・・?玉砕?』
『玉砕はしなかった 笑』
俺はそれを見てやっぱ両思いだったんじゃん。
なるほど。だから一番最初のメールが『おk』だったんだ。
吏緒と玲那が付き合うってことは俺一人やん。
彼女かぁー・・・
そういや美咲との件はあの後、全く触れられてないからこっちからも話さず自然消滅でいいよな。
そんな事を考えてベットで転がっていたら落ちた
ということだ。
何度も言うが俺は部活は無所属だから大抵帰るときは一人だ。
今日も特に変わらずに一人で大人しく帰路につく。
この時間は他の学校の生徒や近くの小学生に良くあう。
知り合いなんていない筈なんだけど・・・・
「相川先輩!」
相川なんて苗字は一杯いるだろうけど条件反射ってやつでつい声の方を向いてしまう。
でも確かにその人は俺の方に小走りで来る。
もしも俺じゃなかった時に恥ずかしいから俺は立ち止まらずに少し歩く速度を落した。
結構可愛い彼女はやはり俺の前で止まる。
「ん?」
彼女は俺の学校の中等部の制服姿だった。
それでも見覚えがない。
「高等部の相川、羽流葵先輩ですよね?」
「あ、は、はぃ」
年下だがどんな輩か分からないので一応敬語。
胸にかかるくらいまで長く、毛先に軽くウェーブがかかって綺麗な髪に、傷一つなく整った顔立ちで・・・
目とか美咲に似てるかも・・・・
やべ。最近美咲を意識しすぎだ。
「やっと話せた」
彼女はそういいながら軽く笑って
「燈花先輩は今日は一緒じゃないんですか?」
と問う。
「あ、はい」
「それと、なんで敬語なんですか?先輩なのに。」
「いや。誰だかわからんし・・・」
「あ。すみませんでした。あたしは河末中等部の桜井 風て言います。
その、こっちは相川先輩とか燈花先輩の事知ってるんですけど相川先輩は知らないですよね?」
「あ・・・存知てないです」
「知らなくて当然なのでそんな申し訳なさそうな顔しないで下さい。
それと、敬語じゃなくていいんで」
桜井風と名乗る俺が通ってる高校の中等部の彼女は笑いながら言った。
てか何で俺の事知ってるんだ?何故話しかけたんだろう?
「ホントすみません。急に話しかけて。でもいい人って聞いたし、今日もたまたま見かけて・・・1回だけでもいいから話してみたいなって思って・・・」
まぁこういうことは以前にも何度かあった。
これからどうすれば?と考えていると桜井風の友人と思われる女子がニヤけながら5人こっちにきて俺に軽く頭を下げて桜井風を囲む。
「アド聞きなよっ!」
とか
「喫茶店なんかで話せば?」
とか会話を交わしてるのがちらっと聞こえる。
俺はポケットで携帯をそうさして、直ぐ情報交換できるように操作した。
うわっ。俺教える気満々じゃん・・・と心の中でツッコんだが、
まぁぶっちゃけ桜井風は可愛いと思うしメールとかならいいんじゃないかなって思った。
しばらくして桜井風と友達一同が俺の方に向き直る。
「あの、アド教えてもらっていいですか?」
「んあー。おk」
俺は用意していた携帯を出して暗くなっていた液晶画面をつける。
・・・・・・・・・・
メールアドレスが登録できたのを確認して言う。
「おし。かんりょー」
「ありがとうございます!」
桜井風の友達が話し出す。
「相川先輩〜変える方向あっちですよね?」
「せや」
「風もそっちなんで一緒に帰ってあげてくれませんか?うちらは
今日は寄り道して帰るんでー」
俺の返事は聞かないで高笑いしながら友達達は去っていった。
「んじゃ帰るべ」
「あ、はい」
2人で並んで歩きだす。
この時間に帰るって事は部活やってないのかな?
それを聞こうと思ってるとそういえば桜井風の事をなんと呼んだらいいのだろう
思った。
「何て呼べばいいんや?」
「ぁ。あたしの事は風と呼んでくれれば」
「分かった。部活やっとんの?」
「親が離婚したから今、父しかいなんですよ。だから父親の仕事を手伝わなきゃ
いけないから部活は入らないで早く帰るんです」
風は少し寂しそうに笑う。
だからさっきの友達達と寄り道に行かなかったのかと納得。
「なるほど。偉いんだな・・・・」
最初はそんな話だったが、俺の学校はエスカレーター式だから
風も来年は俺の居る高校に入るから高校の話や中学校の
時の話で盛り上がって俺の家につく。
風の家は俺の家から更に10分くらい歩いた所らしい。
風可愛いな´・ω・`




