その7 選ばれしもの
「今日ここに来ているギノとゼノは、神魔四人の相談役兼世話係だ。就任式とか、今後いろいろと面倒なことがあるからな。今のところまだ候補だが、何かあれば遠慮なく使ってやってくれ」
それを受けて、双子が「よろしくお願いします」と声をそろえた。その横で、ソフィアが遠慮がちに小さく片手を挙げた。
「あの、私は正式なお世話係じゃないんですけど。でも女子のお二人は、男子には気軽に相談できないこともあるだろう、ということで私が選ばれました。えっと、仲良くしてもらえると嬉しいです」
「いや、私に相談してくれてもいんだよ?でもまぁ、所詮おばはんだからねぇ。同じくらいの年の子の方が、気兼ねなく話せるだろうから」
シンシアが口を挟み、じろりとラトスの方を見た。この失言は、後を引きそうだ。
ラトスは知らんぷりを決め込み、話を続けた。
「分かってるとは思うが、セラディ・ソーサラーズの神魔四人は、組織全体の顔だ。身分的にも、組織のトップに当たる。一応、候補と言う形はとらせてもらうが……アリアについては上からの圧力もあるからな、決定だと思ってくれ。今回、アリアが翠魔に就任することを前提として、アリア中心に布陣を敷いている」
やや難しい顔で話を聞いていたセイアが、遮るように声を上げた。
「すみません、ちょっと分かってないんですけど、「上」って具体的に誰を指してますか。神魔が組織のトップなら、今現在一番上にいるのは、ラトス様とシンシア様じゃないんですか?」
「あぁ……あくまでそれは形だけの話だからな。うーん、ぶっちゃけ、俺たちの先代とか先々代は普通にご存命だからなぁ。確かに一番上は俺たちだけど、発言権とか決定権は彼らの方が上だから」
セイアとラトスの会話が途切れたところで、ようやくアリアにも発言権が回ってきた。
「あの……俺は翠魔決定って、どういうことですか。別に、特別な力とかないのに」
確かにここへ来る際にも、ラトスは「アリアを連れてくるように上から言われた」という言い方をしていた。ラトスとシンシアは、複雑な表情で顔を見合わせた。
「……おまえの父親については、狐面の奴らに襲われた時、話に出たよな」
「はい。でも、ほとんど何も知らないままです。スバルっていう名前と……あと、狐面から『神様』って呼ばれてることくらい」
「そうだな。ちなみにあの狐面は……この間会ったのは二人だが、組織としてはそれなりの人数がいるらしい。本人たちは『神の使い』を名乗っているようだが、この『神』っていうのがおまえの父親で、スバルだ」
ラトスはやや低い声で、話を続けた。アリアは耳を傾けながら、ぼんやりと先日の出来事を思い返していた。
――――アリアを連れ去ろうとした狐面の二人組のうち、一人はラトスの弟、シグア・ティスキンだった。ラトスの口調は重かったが、さすがにもう話すべき時期と覚悟をきめたらしい。以前のように、のらりくらりとこの話題から逃げることはしなかった。
「どうして、俺の父親が『神様』なんですか」
「……ま、ただものじゃないってことだな。さすがに神様扱いはしてないが、うちの組織のお偉いさんたちの認識も、それに近い。間違ってもスバルの娘を他に取られるな、必ずセラディ・ソーサラーズの神魔に就任させろ、ってな。本当はここにも何人か同席したがってたんだが、おまえが嫌がると思って俺が止めた」
「………」
アリアは黙ってラトスの顔を見つめた。自分が特別扱いされているのは、納得はいかないながらも何となく分かった。分からないのは、その理由だ。
父親の存在は、確かに組織にとって特別なのだろう。だが、そこまでのものなのか。アリアは魔術師としては平凡な力しか持っていない。そんな自分を選ぶだけの理由が、父親に隠されているというのだろうか。




