パーティの結成
以前ナジュムダケの採取をしていた時に会った迷子の剣士と、先日アグリオ樹海で挨拶をした魔導士ミレイユ。
その二人が今、フリムの目の前に現れ、ゴーレムを鮮やかに倒したのだ。
ミレイユはゴーレムが残した『魔劫結晶』を拾い、フリムに目を向ける。
「ゴーレムに襲われている人がいると思ったら、あなたたちだったの」
「助けていただきありがとうございます! すみません、お手間を取らせてしまって」
「別にいいけど……何故こんなところに?」
「じ、実は……」
フリムは、この森に来た経緯を彼女に話した。
リューマに借りていたバトルアックスを、人語を操るモンスター・ゲオルグに奪われたこと。
ゲオルグは〝鍵〟と呼ばれる特別な武器を求めていて、それを探しにラトゥリアの街まで来たこと。
バットゴブリンの群れに街を襲撃させ、「三日後までに魔王城へ〝鍵〟を持ってこい」と要求したこと。
その〝鍵〟を、リューマが持っていること。
ゲオルグから街を護るため、二人で魔王城へ向かっていること──
一部始終を聞き終えたミレイユは、深刻な面持ちで俯いた。
「そう……まさか街でそんなことが起きていたなんて。最近調査していた『武器ばかりを狙うモンスター』の件も、そのゲオルグという半魔族の仕業だったようね」
それから、ミレイユはジトッとリューマを睨み付け、
「あなた、どうして魔王城の武器なんか持っているの? あそこは元魔王軍幹部クラスのモンスターがウヨウヨしているから、二百年前に大魔導士リシアが結界を張って封印したのよ? そんな場所から、一体どうやって盗み出したっていうの?」
しかしリューマは、くいくいっと指を動かし、
「知りたいなら情報料。前にも言ったよな?」
「はぁ……まぁいいわ。直接行って確かめるから」
「え、ミレイユさんも来てくれるんですか?」
フリムが尋ねると、ミレイユは頷き、
「元々、私たちも魔王城の方を目指していたの。私のお目当ては、ゴーレムの核から獲れる『魔劫結晶』。そして、こっちの彼は……」
「『ユーリス』だ! 僕も魔王城を目指している!」
白い歯をキラッと輝かせながら、爽やかに笑うユーリス。
このハキハキした喋り方……リューマとはまるで正反対だと思いながら、フリムは言う。
「ユーリスさん、無事にタシナの森へ辿り着けたんですね。あらためまして、傭兵のフリムといいます。先日はゴブリンに囲まれたところを助けていただき、ありがとうございました」
「はっはっは! なに、勇者として当然のことをしたまでだ!」
「ところで、ユーリスさんは何故、魔王城を目指しているのですか? ミレイユさんとはどのようなご関係で?」
すると、ユーリスは堂々と胸を張り、
「僕が求めるものはただ一つ! 〈勇者〉ルドヴィグが残した〝聖剣〟だ!」
「聖剣?」
「魔王を斬り、永久に葬ったと云われる伝説の剣……しかしルドヴィクは、それを故郷に持ち帰らなかったらしい。つまり、今もまだ魔王城に残されているということ!」
「はぁ……」
「僕は現代の勇者として、それを手に入れたい! だからこうして、この森にやってきたというわけだ!」
「厳密には、アグリオ樹海で迷子になっていたから私が連れてきてあげたの。彼、勇者かぶれの変人だけれど、先ほどの通り剣の腕だけは一流だから。ゴーレム狩りを手伝ってもらっていたのよ」
ミレイユの補足を聞き、フリムは納得する。
どうやらたまたま目的地が一致したため、一時的な協力関係を結んでいるようだ。
「でも、さっきミレイユさんが言ったように、魔王城は封印されているんですよね? 行ったところで〝聖剣〟は手に入らないんじゃ……?」
「それは行ってみなければわからないだろう!」
「えぇ?」
「僕は自分の目で見たものしか信じない! それこそが勇者らしい生き方だ!」
「彼に何を言っても無駄よ、ずっとこの調子なんだから。まぁ、私もまだまだゴーレムを狩りたいし、大魔導士リシアが施した結界がどのようなものなのか見てみたい。何より……そのゲオルグって半魔族のことが気になるわ」
そこまで言うと、ミレイユは顔に影を落とし、
「ふふ……知能を取り戻したモンスターなんて、希少中の希少っ……! どんな素材をドロップするのかしら……爪? 牙? 個人的には脳幹とか脊椎とかが残ってくれると嬉しいのだけれど……‼︎」
「あの……ミレイユさん?」
フリムに心配され、はっと我に返るミレイユ。
そして、「んんっ」と咳払いをし、
「とにかく、私たちも同行させてもらうわ。二人より四人の方が何かと安心でしょ?」
「僕もそうさせてもらいたい! 人数が多い方が勇者パーティっぽくて良いからな!」
ということらしい。
フリムとしては大賛成だった。
二人の実力は確かだし、仮にゲオルグに奇襲をかけられたとしても頼りになる。
リューマさんも、それでいいですか?
そんな視線を送ると、彼は面倒臭そうに肩をすくめ、
「もとは俺一人で行くつもりだったが……仕方がない。どうしても同行したいってんなら、一つ条件がある」
「条件……?」
「何だろうか?」
首を傾げるミレイユとユーリスの前に、リューマは……サッと契約書を突き出し、
「この先は危険だ。俺の貸し出す武器を持っていけ。さぁ、ここにサインを……」
「って、私はもう長杖を借りているから!」
「ほう、ここに名前を書けばいいのだな?」
「ユーリスさん、騙されちゃダメです!」
急遽結成された曲者揃いの臨時パーティに、フリムは早くも不安を覚えるのだった……





