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元魔王軍の武器庫番、レンタル武器屋を開業する。  作者: 河津田 眞紀@受賞2作発売中!
第6話

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思いがけない再会



 ──そして、次にフリムが瞼を開けた時……

 彼女の視界は、上下に揺れていた。


「……んぇっ?」


 寝ぼけ眼を、ぱちっと開ける。


 明るい。

 夜が明けたようだ。


 だが、目に映る場所は、昨晩野営した池のほとりではなく……

 森の景色が、忙しなく後ろへと流れていて。


「…………えっ⁈」


 顔を上げ、ようやく気付く。

 彼女は今、リューマの肩に担がれ、走りながら運ばれていた。


「おう。起きたか」


 軽い口調で言うリューマ。

 しかし、足は止めない。


 一体、何が起きているのか。

 フリムは大いに混乱し、尋ねる。


「ちょっ、どういう状況ですか⁈」

「モンスターに追われている」

「えぇぇっ⁈」


 つまり、寝ている間にモンスターに襲われ、リューマが担いで逃げてくれている、ということらしい。


(っていうか、一度も起こされないまま夜が明けてる……結局リューマさんが一人で見張りを続けてくれたんだ)


 そのことを申し訳なく思いつつ、フリムは周囲を確認する。


 軽快な足取りで森を駆けるリューマ。

 過ぎていく景色に目を凝らすが、モンスターらしき影は見当たらない。

 樹々を搔き分ける音や鳴き声、足音、空からの羽音も聞こえてこない。

 きっと、リューマが上手くまいてくれたのだろう。


「もう大丈夫そうですよ、リューマさんっ。おろしてください!」


 完全に目が覚め、担がれていることに恥ずかしさを覚えるフリム。

 だが、それでもリューマは足を止めずに、


「駄目だ。悪いが、しばらく我慢してくれ」

「で、でも、わたし重いと思うし……!」

「まぁ、軽いとは言えないが……」


 ──ゴッ‼︎


 フリムは顔を真っ赤にし、リューマの肩にエルボーした。

 繰り出された強烈な打撃に、リューマは「ぐほぁっ!」と呻く。


 その手が緩んだ隙に、フリムはぱっと彼から離れ、着地した。


「悪かったですね、重くて‼︎」

「っつぅ……冗談に決まってんだろ。っていうか重いとは言ってな……」


 ……と、そこで。

 リューマは、はたと真顔になる。


「……やっべ」

「へっ? 何がですか?」

「いいから、地面から離れ……!」

 

 ……刹那。

 フリムの足元が、ぐらぐらと揺れ……


 ──ズゴゴゴゴゴゴ……‼︎


 樹の根や土を巻き込みながら、高く盛り上がった。


「わわわわわ……うわぁあああーー‼︎」


 パニックになるフリムを、リューマが抱えて跳ぶ。


 彼の腕の中でフリムが見たのは……

 地面の下から現れた、巨大なゴーレムだった。


「ご、ゴーレム……⁈」

「ああ。地中からずっと追っかけられていたんだ」


 言われてみればリューマは、やけに足音を殺して走っていた。

 地中を進むゴーレムに悟られないようにしていたのだろう。

 しかし、フリムが無遠慮に着地したため、居場所を特定されてしまった。


 樹々をメキメキと倒しながら、地中からせり上がる灰色の巨体。

 フリムは息を呑む。


 ゴーレムを見るのは初めてだった。

 大陸全土でも出没件数が少なく、いるのはこの魔王城周辺のみだと言われている。


 岩でできた身体は人の形を模してはいるが、目や鼻などの細かな造形はない。

 それでも、ゴーレムは確実にこちらを見ている。

 そして……重々しい腕を、ブンッと振り下ろしてきた。


「ぎゃーっ‼︎」

「ちっ、めんどくせー」


 フリムを抱いたまま、リューマはひょいっと跳んで躱す。

 空振ったゴーレムの拳が、ボゴォッ! と地面を穿った。

 こんなの、直撃したらひとたまりもない。


「待ってください、ゴーレムさん! わたしたちは戦いたいわけではありません! どうか引いてもらえませんか⁈」


 いつものように呼び掛けてみるが、ゴーレムは無反応。

 緩慢な動きで再び腕を振り上げ、ブンッ! と殴りかかってきた。


「うわぁああっ!」

「返事はこの通りだ。反撃するしかない」

「でも、わたし武器持っていないし……!」

「おいおい、俺が誰なのか忘れたか?」


 ゴーレムから離れたところに着地し、リューマは抱きかかえていたフリムを下ろす。

 それから、背負った鞘に手を伸ばし、


「『貸し武器屋リューちゃん』タシナの森出張店……開店の時間だ」


 言いながら、モーニングスター──トゲの生えた頭部を持つ、鎚矛(メイス)を抜き放った。


「ほい。これでゴーレムの身体を破壊しろ」

「あ……ありがとうございま……」

「おっと。使う前に契約書へサイン、それから二千ゼリンだ」

「って、お金取るんですか⁈」

「当たり前だろ。商売道具をタダで貸し出す馬鹿がどこにいる?」

「言ってる場合ですか! 緊急事態なんですよ⁈ サインだの支払いだのしている暇は……!」


 ──ドゴォォオンッ‼︎


 すぐ横に振り下ろされるゴーレムの拳。


「ほらほらぁっ! 早く貸してください!」

「それじゃあんたが起きるまで逃げ回ってた意味がなくなるだろ。せっかく二千ゼリン稼げると思って待ってたのに」

「逃げてた理由それ⁈」


 などと言っている間にも、ゴーレムが再び腕を振り上げる。


(ああもう、こうなったら素手で戦うしか……!)


 と、フリムが脳筋な結論を導き出した……その時。



「──『勇者ユーリス』、参上!」



 そんな、高らかな声が響いたかと思うと……

 次の瞬間、ゴーレムの胴体が、すぱぱぱぱっ、と細切れになった。


 さらに、



「──赤き鋼鉄(メタレヴマ)‼︎」



 ゴーレムの頭の上に巨大な鉄球が出現し……真っ直ぐに落下した。


 硬い音を轟かせ、砕け散るゴーレム。

 粉々になった岩の身体は、再生することなく塵と化した。


 唖然とするフリムの前に、二人の人物が現れる。


 一人は、金髪の剣士。

 碧(あお)い瞳を持つ、精悍な顔立ちの青年だ。


 もう一人はローブ姿の魔導士。

 銀色の長髪と藍色の瞳を持つ、凛とした雰囲気の美少女。


 そのどちらにも、フリムは見覚えがあった。


「雨林で会った剣士さんと……魔導士のミレイユさん‼︎」



 

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