↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元魔王軍の武器庫番、レンタル武器屋を開業する。  作者: 河津田 眞紀@受賞2作発売中!
第4話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/51

木霊の札



「なっ……え⁈ どういうことですか⁈」

「これは留(とど)めた音を発する『木霊(こだま)の札(ふだ)』。俺が趣味で作った魔導具だ」

「は⁈」

「ここに描いた魔法陣に反応して、音を司る〈精霊〉が記憶した音を繰り返し発する仕組みだ。作ったはいいものの、使い道があまりなかったが……ネコをおびき寄せるのには役立つだろ」


 なんて、軽い口調で説明するリューマ。

 一定時間ごとに鳴き声を発する札を額に貼られたまま、フリムは唖然とする。


 音を司る精霊が存在することも初耳だし、それを使役するための魔法陣をリューマが開発したことにも驚きだ。

 フリムは魔導士ではないが、この札が魔導界を揺るがすような歴史的発明であることだけは、容易に想像がつく。


(これって、すごすぎる魔導具だよ! こんなのを趣味で作れちゃうなんて、リューマさん、本当に何者なの? いや、それよりもまず驚いたのは……)


「リューマさん……ネコの鳴き真似、うますぎません⁈」


 である。

 するとリューマは、「ふふん」と得意げに腕を組み、


「何せ、『ネコ語検定一級』の資格を持っているからな」

「出た! リューマさんの謎の資格シリーズ!」

「ちなみに今の鳴き声の意味は、『領収書ください』だ」

「どういう状況⁈ ネコがそれ言う場面あります⁈」


 言葉選びのセンスはさておき……この札は、確かに今回の依頼にはぴったりだ。

 ネコを呼び寄せるような鳴き声を吹き込んでもらい、その札を貼り付けて待ち伏せすれば、ネコの方から自然と寄ってくるに違いない。


「さっすがリューマさん、頼りになりますね! このお札があれば、今回の依頼もサクッと達成できそうです! ありがとうございま……」

「五千ゼリン」


 ──ぱっ。

 リューマは、フリムの前に手をかざし、


「札の本体価格および音声使用料で、一枚につき五千ゼリンだ」

「えぇぇえええっ⁈」

「当たり前だろ? こんなすげー魔導具、教会に利権が渡ったら十倍の値段で売買されるぜ? それを俺のネコ真似ボイス付きでこの価格に抑えているんだから、むしろ良心的だ」


 そ、そう言われると……確かにそうかもと思ってしまう。


「くっ……吹き込むネコ語の内容は指定できるんですか?」

「ああ。探しているネコはオスか? なら、メスの甘~い誘惑を真似して鳴いてやるよ」

「うわ、ちょっとイヤだけど、正直助かるっ……!」


 まぁ、この依頼が成功すれば、五万ゼリンもらえるわけだし……

 ぐぬぬ。と意を決し、フリムは財布を取り出して、


「……買います! あと、モンスターに遭遇した時用の武器も貸してください!」

「へへ、まいどあり」


 リューマはにんまり笑いながら、上機嫌で札を用意し……先ほどとは違う、新たな鳴き真似を吹き込んだ。

 そうして対モンスター用の武器も借り、フリムは契約書へのサインと支払いを済ませた。


「って、今回の武器はハンマーなんですね」

「行き先はアグリオ樹海なんだろ? なら、それがあった方がいい」

「なんでですか?」

「行けばわかる。と言っても、今日は別のお客さんにア(・)レ(・)を貸しちまったから、あんたの方にはモンスターが現れないかもしれないが……」


 フリムが首を傾げると、リューマはふっと笑い、


「いや、こっちの話だ。とにかく、健闘を祈ってるぜ」


 そう言って、手をひらひらと振るので……フリムはハンマーをしっかり背負い、


「はいっ。頑張ってネコちゃんを探してきます!」


 手を振り返し、張り切りながら去っていった。




 ──リューマが去り行くフリムを見送った直後。


「なぁなぁ、リューちゃん」


【超最強・ムシ列伝カード】を買いに来ていた一人の少年が、リューマに声をかけた。


「ん? どした」

「この中だと、このカードが一番レアで強いってことになっているんだよな?」


 そう言って、厳ついカブトムシの絵が描かれたカードをかざす。


 少し前まではただのイラストカードだったのだが、リスタの提案で、今は虫の『レア度』を表す数字が書き足されていた。

 それにより、少年たちの間でカードの強さを競うゲームが流行り、売り上げはさらに伸びていた。


 少年の質問に、リューマは頷く。

「ああ、『コウテツオオカブト』な。実際、虫の世界で一番強くてレアだから……」

「その情報、古いよ」


 ばっさり言い切る少年に、リューマは「あ?」と聞き返す。


「オレの父ちゃん、生物学者なんだ。最近発見された新種で『コンゴウリュウジンクワガタ』っていうのがいるんだけど、そいつの方が『コウテツオオカブト』より強くてレアだって言ってた」

「なんっ……え? コン、リュウ……?」

「『コンゴウリュウジンクワガタ』。リューちゃん、知らねーの?」


 リューマは、焦る。


『虫はかせ検定一級』の資格を取ったのは二年前。

 それほど時間は経っていないというのに、【最強】の座を塗り替えるような新種が発見されていた、だと?


「えぇー? 真の【最強のムシ】はカードになっていないってこと?」

「リューちゃん、その【最強のムシ】、早くカードにしてくれよー」

「リューちゃん知らないんだってさ。だからカードに描けないんだよ」


 少年たちの言葉に、リューマの顔がヒクッと引き攣る。

 それを、売り子であるリスタが「リューちゃん……」と心配そうに見上げる。


「……どこだよ」


 リューマは、顔に影を落とし、


「その『ゴウモンニンジンクワガタ』とかいうヤツ、どこにいるんだよ」

「『コンゴウリュウジンクワガタ』ね。父ちゃんはアグリオ樹海で見つけたって言ってたぜ」


 またアグリオ樹海か。

 今日はやけにその地名を耳にする。


「……待ってろ、ガキども」


 スラッ……と、リューマは鞘から虫捕り網を抜き放ち、


「その『ゴウモウリンジンクワガタ』とやらを捕まえて、スケッチしてカードにしてやるから……絶対買えよな!」

「『コンゴウリュウジンクワガタ』だってば」 


 少年の訂正に耳を傾けることなく、リューマは網を手に、アグリオ樹海へと向かった。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。