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元魔王軍の武器庫番、レンタル武器屋を開業する。  作者: 河津田 眞紀@受賞2作発売中!
第3話

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ゴブリンの群れ



 気を取り直し、フリムは再びナジュムダケと対峙した。


 ロングスピアをぐっと握り、慎重に狙いを定め……

 石づきの部分を、サクッと刺した。


 直後、電撃がバチバチッ! と起こるが、しばらくすると収まり、かさの光も消えた。

 どうやら、根元を切り離されると魔法が発動しなくなるらしい。


 フリムはもう一本も同じように処理し、無力化した二本のナジュムダケを無事にゲットした。


「よしっ、攻略法はばっちり! 残り八本、頑張って探そー!」


 おー! と、一人拳を掲げ、フリムは探索を続けた。




 ──その後、フリムは六本のナジュムダケを見つけ、同じようにロングスピアを使って採取した。


 が、残り二本がなかなか見つからなかった。

 日は既に傾きかけている。

 ただでさえ暗い雨林が一層暗くなり、フリムは焦りを募らせる。


「どうしよう……ここまできたら、今日中に二本見つけちゃいたいのに……」


 薄暗い林の中、フリムは目を凝らす。

 ナジュムダケは淡い紫色の光を放っている。その光さえ見つけられれば……


「……あれ?」


 と、その目が、あるものを捉えた。

 視線を凝らした先……林の奥に、ぼんやりと光るものが見えた。

 それも一つではない。四つ……いや、六つ以上はありそうだ。


「まさか……ナジュムダケの群生地⁈」


 フリムは目を輝かせる。

 依頼されたのは十本だが、これほど採取困難なキノコであれば、それなりの金額になるはず。

 多めに持ち帰り、ギルドで買い取ってもらおう。


「諦めなくてよかったぁっ! やっぱ人間、粘り強さが運を引き寄せ……て……」


 軽い足取りで光の方へ駆け寄る、が……その途中で、フリムは足を止めた。


 そこは、確かにナジュムダケの群生地だった。

 六本どころか、数十本は生えている。

 しかし、遠くから光って見えたのは、ナジュムダケではなかった。


 ──赤色の、瞳。


 五体のゴブリンの瞳が、妖しい光を放っていたのだ。

 ナジュムダケを避けるようにして、別のキノコを食べている。


(しまった……ここは、ゴブリンたちの縄張り……⁈)


 しかし、気付いた時には遅かった。

 ゴブリンたちはフリムに気付き、「グギャッ」と声を上げる。

 そして、各々棍棒を持ち、臨戦態勢に入った。


 他のモンスターに比べ、ゴブリンはかなり小柄。十歳前後の子供ほどの背丈しかない。

 腕力も乏しく、一対一ならそれほど手を焼く相手ではない。


 だからこそ、奴らは複数で行動し、集団で人を襲う。

 知能がないというのに、生存本能に基づくその連携はなかなかに厄介で、熟練の傭兵でも手こずるほどだ。


 加えて、ここは樹々の密集した雨林の中。

 動きやすさで言えば、小柄なゴブリンの方に分(ぶ)がある。


 しかも、フリムの得物は環境との相性が最悪なロングスピア。

 つまりは、圧倒的に不利な状況で会敵してしまったのだ。


(落ち着け、フリム。まずは、少しでも開けた場所に誘導して……)


 と、ロングスピアを取り回しやすい場所へ移動しようとするが……

 その行く手を阻むように、背後からもう一匹、ゴブリンが現れた。


 それも、他のゴブリンより一回り大きな個体だ。

 手にしている棍棒も釘やトゲが生え、より殺傷能力の高いものになっている。


 計六体のゴブリンが、フリムににじり寄る。

 ……囲まれた。

 ナジュムダケの群生地の中心で、フリムは樹々の間からこちらを狙う六体を警戒する。


「縄張りに立ち入ったことは謝ります! こちらに手を出さないのであれば、わたしも危害を加えるつもりはありません! どうか穏便に済ませることはできないでしょうか⁈」


 いつものように、平和的な解決を呼びかける。

 今回は、どちらかというと命乞いのようにも聞こえるが。


 しかし、結果は……やはり変わらず。

 返事の代わりに「グギャァアッ!」と鳴き、フリムの背後にいた一匹が飛び掛かってきた。


「くっ……!」


 振り下ろされる棍棒を、フリムはロングスピアの持ち手で受け止め、押し返す。

 同時に、横からもう一体が来る。

 こちらは姿勢を低くし、足を払って転倒させる。


 倒れたゴブリンに槍先を突き刺そうとするが、周囲の樹に当たってしまい、もたつく。

 そうしている間に転倒したゴブリンは体勢を立て直し、距離を取られてしまった。


 やはり、この武器では上手く戦えない。

 いっそ、素手で戦おうか……?


 そんな無謀なことを考えながら、後退りをすると……


 ──ぐにゃっ。


 フリムの足が、何かを踏んだ。

 直後、足裏から、水が「ブシャァアアッ!」と噴き出した。


「ななな、なにっ……⁈」


 慌てて離れ……理解した。

 ナジュムダケを踏んづけたせいで、魔法が発動したのだ。

 おかげで膝から下がびちょびちょ。

 しかし、同時に──フリムは思い付いた。


(このナジュムダケの特性……使えるかも!)


 噴き出した水に驚いていたゴブリンたちだが、雄叫びを上げ、再度向かってきた。


 左右から二体。

 フリムはロングスピアをぐっと引き寄せ、狙いを定め……

 右から来るゴブリンの足元にあるナジュムダケを、ざくっと刺した。


 続けて、柄(え)の方で左側のナジュムダケを刺す。

 すると、右側では電撃が、左側では突風が巻き起こり、ゴブリンを攻撃した。


 思った通り、ナジュムダケの魔法は牽制に使える。

 ゴブリンの動きを見極めて使えば、防御しながら隙を作れそうだ。


(わたしの周りはナジュムダケだらけ! さぁ、どこからでもかかってきなさい!)



 

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