↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元魔王軍の武器庫番、レンタル武器屋を開業する。  作者: 河津田 眞紀@受賞2作発売中!
第2話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/51

魔劫結晶



 鋭い眼光に、長い舌。

 皮膚は緑色だが、丸まった尾の先は透けている。


 恐らく、周囲の景色に溶け込むよう身体の色を変えられるのだろう。初めからずっと、この天井に張り付いていたらしい。


「ひぇっ……!」

「こいつが神殿内に強力な幻術を張り巡らせている犯人だ。リザードマンの親玉、ってとこだな。ここであんたの幻術を解いて一気に疲労を自覚させ、弱ったところを食べるつもりだったんだろう」


 つまり……あと少しで、食べられていた。


 ぞっとしながらも、フリムは焦る。

 早く倒さなければ、リューマまで幻術にかけられるかもしれない。そうなったらおしまいだ。


 まだ身体に力が入らないが……それでも、やらなくちゃ。


 フリムはサーベルを握り締め、立ち上がろうとする。

 が……その前にリューマが立ち塞がり、言う。


「あんたはそこで休んでろ」

「でも……」

「安心しろ。出張代および残業代および討伐代行費用、しめて三万ゼリン。あとできっちり請求させてもらう」


 そのセリフに、フリムが「えっ?」と言うより早く……リューマは、跳んでいた。


 長大な剣を手に、驚くほど高く跳躍し……

 天井に張り付く巨大爬虫類型モンスターを、ザンッと斬り裂いた。


 痛々しい鳴き声を上げ、床に落下するモンスター。

 が、すぐにその姿が消える。

 身体の色を変え、景色に溶け込んだのだ。


「そんな……どこに……⁈」


 フリムが困惑しながら見回すが、リューマは焦る様子もなく即座に駆け出し、


「──んじゃ、お疲れさん」


 気怠げな声でそう言って……何もない空間に、大剣を振り下ろした。


 響き渡る、断末魔の叫び。

 斬られた痛みで姿を現したモンスターは、紫色の血を噴き出しながらバタバタと悶えたのち……パタリと動かなくなった。


 黒い塵となり、消えゆくモンスター。

 それを見届け、リューマは斜めに背負ったいつもの鞘へと、大剣を納めた。


 フリムは、唖然とする。

 ……うそでしょ。リューマさん、もしかして……


「め……めちゃくちゃ、お強いじゃないですか‼︎」


 疲労も忘れ、フリムは大声で叫ぶ。


「なんで⁈ そんなに強いなら自分で武器使って討伐依頼こなせばいいのに! どうして貸し武器屋さんなんてやっているんですか⁈」

「うるさ。なんだよいきなり」

「うるさくもなりますよ! いっつも虫も殺さないような無気力顔してるクセに! 詐欺だ! こんなの詐欺ですよぉっ‼︎」

「誰が詐欺だ、人聞きの悪い。俺はヤる時だけヤる『ギャップ萌え男子』でいかせてもらってんの。何せ、『モテ男検定二級』の資格保持者だからな」

「何なんですか、そのよくわからない資格はっ‼︎」


 などといつもの調子で叫んだせいで、くらっと目眩に襲われる。

 倒れそうになるフリムを抱き留めながら、リューマはため息をついて、


「しっかりしろ。依頼はまだ完了していないんだろ? それとも、諦めて帰るか?」


 言いながら、フリムに肩を貸した。


 握ったサーベルは、未だ一つの方向に光を伸ばしている。

 フリムはそれを握り直すと、両足でしっかりと立ち、


「いえ……この先に、『魔劫(まごう)結晶』があるはずです。ここまで来たのですから……絶対に見つけて、持って帰ります!」


 力強く、そう言った。

 リューマの支えを受けながら、フリムは光が示す壁の方へと近付く。


 そこには、先ほど発見したひし形の石像があった。

 恐らくこれが、先に進むための鍵となるのだろうが……


「……フリム」


 そこで、リューマが、初めて名前を呼んだ。

 思わずドキッとして、フリムは彼を見上げる。


「は、はいっ」

「手を出してみろ」


 言われるがままに、フリムはサーベルを持つのと反対の手をかざす。

 そして、同じく片手を上げたリューマと共に、ひし形の石像に触れた。


 瞬間、目の前の壁が、「ゴゴゴゴ」と反応する。

 やはり、ここも扉になっているようだ。


 そのまま壁が横に動き……ダンジョンの最奥(さいおう)が、ついに開かれた。

 そこに見えた光景に、フリムは、瞳を輝かせる。


「うわぁ……!」


 見渡す限りに広がる、虹色の鉱石。

 シャボン玉のような色の結晶が、壁面いっぱいに生えていた。


 間違いない。

 これが、探し求めた『魔劫(まごう)結晶』だ。


「すごい……こんな綺麗な鉱石があるなんて……!」


 リューマから離れ、フリムはよたよたと結晶を見回す。


「これだけあれば、目標の三万ゼリンなんてヨユーで……って」


 そこで、フリムはあるものに目を留める。


 虹色に輝く鉱石の狭間に、一振りの剣が突き刺さっていた。

 しかもそれは、フリムが手にしているサーベルにそっくりで……


「これって……」

「そいつの片割れだ」


 リューマが、後ろから言う。


「あんたに貸したその剣はサーベルじゃない。二つで一つの武器──双剣だ」



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。