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元魔王軍の武器庫番、レンタル武器屋を開業する。  作者: 河津田 眞紀@受賞2作発売中!
第2話

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ダンジョンの主



 ──それから、フリムはいくつかのトラップを乗り越え、モンスターを倒し、ダンジョンの奥へと進んだ。


 代わり映えのない岩壁の通路が延々と続く。

 鉱石らしきものも見当たらない。

サーベルは変わらず、進行方向に真っ直ぐ光を伸ばしている。


 その光に導かれるまま、ひたすら進み……

 最後に行き当ったのは、何もない、広々とした空間だった。


「行き止まり……?」


 途中で道を間違えたか?

 いや、分かれ道になっているところはすべて確認した上でここまで来た。見逃したルートはなかったはず。

 それに、サーベルの光は壁の方向を指している。


 なら……この先へは、どう進めばいい?


 フリムの腕力とこのサーベルがあれば、壁を切り崩すこともできそうではあるが、ここは歴史的価値の高い神殿。無用な破壊行為は極力避けたい。


「壁がゴゴゴゴーって開く仕掛けとかがあったりして……」


 フリムは、壁をノックしたり、ぺたぺた触ってみたりする。と……

 ふいに手を触れた箇所が、ぱぁあっと光った。

 そして──


 ──ゴゴゴゴゴゴゴ……


 目の前の壁がスライドし……奥へと続く空間を露わにした。


 フリムは、目を点にする。

 冗談半分の呟きだったが、どうやら本当に仕掛けを解き、扉を開けられたようだ。


「もしかして……みんなここで挫折して、一番奥まで辿り着けなかった、とか?」


 ならば、自分こそが、このダンジョンを踏破した記念すべき一人目ということ。

 フリムは警戒半分、ワクワク半分な心持ちで、開かれた扉の先へと進む。


 四角い空間だった。

 通路や扉のない、壁に囲まれた場所。

 奥の壁の側にひし形の石像のようなものが置かれている他は、何もない。


 フリムはてっきり、『魔劫(まごう)結晶』がびっしり生えているものと思っていたのだが……


「あれ? ここがゴールじゃないの?」


 と、首を傾げた直後。

 背後で、「ゴゴゴゴ……」と、音がした。


 はっと振り返るも、時既に遅し。

 先ほど開けた仕掛け扉が再びスライドし……完全に閉じてしまった。


「う……うそーーっ⁈」


 閉め切られた扉を叩くが、ビクともしない。

 開けるための仕掛けがないか隈なくまさぐってみるも、反応はなし。


「お、落ち着いてフリムっ。きっとどこかに別の出口が……だってサーベルさんは、まだ奥を指し示しているし……!」


 と、他の壁も調べようとした、その時。

 足の力がカクンッと抜け、フリムはその場にへたり込んだ。


「あ……あれっ? 力が……入らない……」


 立ち上がろうとするも、足が言うことを聞かない。

 強い疲労感が、全身にずしんとのしかかる。

 それどころか、急激に喉が渇き、吐き気を感じるほどの空腹に襲われ……視界が霞み始めた。


(あ、れ……そういえば、わたし……この神殿に、どれくらいいる……?)


 まるで、置き去りになっていた時間の感覚が呼び覚まされたよう。


 そのまま、フリムは床へ倒れ込む。

 指先が麻痺して、感覚がない。

 それでも、サーベルを握り続ける。


(もしかして、これも……魔法のトラップ……? どうしよう……こんなところで倒れたら、リューマさんに……このサーベルを、返せなくなっちゃう)


 薄れゆく意識。

 瞼が、意志に反して閉じていく。


(ごめんなさい、サーベルの中の魔族さん……せっかくここまで、導いてくれたのに……)


 サーベルを握ったまま、フリムはついに、意識を手放す────かに思われた、刹那。

 閉じられた岩の扉に、いくつもの閃光が走り……


 ──ドカァァアアンッ‼︎


 けたたましい音を立てながら、崩落した。


 フリムは微睡(まどろみ)から叩き起こされたように「ふぇっ⁈」と目を覚ます。


 そこには、逆光を背に受け立つ人物が一人。

 肩に重厚な大剣を担ぎながら、こちらを見下ろしているのは……


「りゅ……リューマ、さん……?」


 そう。どういうわけか、リューマがそこにいた。

 フリムはなんとか身体を起こしながら、問いかける。


「どう、して……ここに……?」

「どうしてって、あんたがその剣を借りて今日で七日だから、探しにきたんだろうが」


 え……七日?


「そんなはず……だってわたし、ここへは……あれ、いつ入ったんだっけ?」

「はぁ……やっぱり幻術の魔法にハマッていたか」


 リューマはかったるそうに近づくと、フリムの目の前にしゃがみ込み、


「おら、口開けろ」


 フリムの顎を掴み、持っていた水筒を無理やり口に押し込んだ。

「むぐぅっ⁈」と唸りながらも、流し込まれる水に喉が潤っていく。

 その渇きは……確かに半日やそこいらのものではなかった。


「ぷはっ……げ、幻術の魔法、って……わたし、いつの間に……?」

「たぶん神殿に足を踏み入れた瞬間からだろ。時間と空間を認識する感覚が完全に狂わされていたんだ。その剣が方向を指し示していなかったら、ここに辿り着くことなく死ぬまで彷徨(さまよ)い続けていたかもな」

「し、死ぬまで……⁈」


 ぞぞっ、と身体を震わせるフリム。

 まさか、入った瞬間から幻術にかかっていたとは……


「でも……幻術の魔法なんて、聞いたことがありません。本当にそんなものが……?」

「あるんだよ」


 リューマは、立ち上がりながら、


「そんで……それを仕掛けたヤツは、そこにいる」


 と、足元に転がっていた石を拾い、天井に向かって投げた。


 すると、冷たい石の色をしていた天井に……異形(いぎょう)が現れた。

 重力を無視して張り付く、巨大な爬虫類──トカゲに似たモンスターだ。



 

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