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元魔王軍の武器庫番、レンタル武器屋を開業する。  作者: 河津田 眞紀@受賞2作発売中!
第2話

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フリズモス神殿



「──それで……リューマさんのお店って、ピッケルとかもあったりします?」


 ギルドを出たその足で、フリムは『貸し武器屋リューちゃん』へ急行した。

 借りていた『動きが一.五倍ほど速くなる長剣』を返却するついでに、丈夫な採掘道具を借りられないか尋ねてみたのだ。


 リューマはスタンプカードに判を押しながら、今日も今日とて気怠げに答える。


「あるっちゃあるけど……今回はどんな依頼を受けてきたんだ?」

「『魔劫(まごう)結晶』っていう鉱石の採掘依頼です。フリズモス神殿の中にたくさんあるらしくて」


 それを聞いた瞬間、リューマはぴくっと、僅かに反応し……


「ふぅん……なら、話は早い」


 言いながら、空(から)の鞘に手を伸ばし……光と共に、一振りの武器を抜き放った。

 毎度タネのわからない手品ではあるが、今回はその仕組みよりも、顕現したものの方にフリムの疑問が向いた。


 てっきりピッケルを取り出すのかと思えば、リューマの手に握られていたのは……


「さ……湾刀(サーベル)?」

「そうだ。今回はこいつを持っていってほしい」


 差し出されたそれを、フリムは意外に思いながら受け取る。

 刀身の反った、片刃の剣……軍の騎兵がよく用いるようなサーベルだ。


 当然、鉱石の採掘には向いていない。

 それなのに何故、これを貸し出すのか……


 という疑問を視線から感じたのか、リューマは胡坐をかきながらフリムを見上げ、


「確かに採掘には向かないが……そいつを使うと、めちゃくちゃいいことがある」

「いいこと? って、何ですか?」

「そいつはな……『魔劫(まごう)結晶』の在り処を、教えてくれるんだよ」


 ………………いやいやいや。


「さすがにそんな都合のいい武器、あるわけ……」

「これが本当なんだなぁ。悪いこた言わねぇから、持っていってみろよ」

「えぇ……?」

「結晶の採掘が目的とはいえ、神殿内にはモンスターもいるんだろ? それがあれば結晶の在り処がわかる上に戦闘にも対応もできる。しかも、知っての通り頑丈だから、ピッケルみたいに使ったって問題はない。一石三鳥だと思わないか?」


 それは…………言われてみれば、確かにそうかも。


「さらに言えば、軽くてかさ張らない。腰に差せば両手が空くから、結晶をたっぷり抱えて持ち帰れるぜ? ほら、一石四鳥になった」

「借ります!」


 即決。

 リューマの弁舌にまんまと言いくるめられ、フリムはしゅばっ! と手を上げた。

 その真っ直ぐな瞳を、リューマはしたり顔で見つめる。


「まいどあり。んじゃ、いつもの契約書な」


 サインをし、二千ゼリンを支払い、契約成立。

 フリムはサーベルを腰に差すと、


「ありがとうございます、リューマさん! それじゃあ、いってきます!」


 元気に手を振って、フリズモス神殿へと旅立っていった。

 それに、リューマが「気をつけてな~」と手を振り返していると……


「あのコ……チョロすぎて、いつかこっぴどい詐欺に遭わないか心配ね。リューちゃん?」


 今日も今日とて、虫カードの売り子をしているリスタが、大人びた口調で言った。

 リューマは、首の後ろをぽりぽりと搔きながら、


「まぁ……詐欺だと気付かないまま、ゴリ押しで乗り切りそうな気もする」


 フリムに対する所感を、無気力に述べるのだった。




 ◇◆◇




 ──ラトゥリアの街から馬車に乗り、フリムは北西に位置するフリズモス神殿へと辿り着いた。


 森の中に聳(そび)える、四角い白亜の建造物。

 石を積み上げた壁に、幾何学模様が彫られた柱。

 神殿と呼ぶに相応(ふさわ)しい、旧時代を感じさせる造りだ。


(ここがダンジョンと化した神殿……この森は、魔王城のあるタシナの森と繋がっているんだ)


 フリムは東の方角を見つめる。

 魔王城とそう離れていないため、この神殿は魔王軍に奪われたのだろう。

 そして、魔王討伐後、モンスターが蔓延る迷宮と化した。


(モンスターは最悪倒せるからいいとして……魔法のトラップって、一体どんなのが仕掛けられているんだろう?)


 そう考えながら入り口に近づくと……薄暗い神殿の中から、バタバタという足音が聞こえてきた。

 フリムは咄嗟に警戒する。

 と、二人組の男が飛び出してきて、


「うわぁぁあああっ!」

「最悪だ! こんなところ二度と来るか!」


 などと喚きながら、どこかへ走り去ってしまった。

 恐らく、この神殿の最奥(さいおう)を攻略しようと立ち入った者なのだろうが……服がボロボロだったため、冒険者なのか盗賊なのかは見分けがつかなかった。


 フリムは、震える。

 きっと、恐ろしいモンスターに出くわしたか、厄介なトラップに引っ掛かり、逃げ帰ったのだ。

 もしかすると、自分も……同じ目に遭うかもしれない。


(……ううん、わたしにはリューマさんに借りたこのサーベルがある。『魔劫(まごう)結晶』の在り処に導いてくれるって言っていたし、きっと大丈夫だよね!)


 そう自分に言い聞かせると、フリムは拳を突き上げ、


「『魔劫(まごう)結晶』をいっぱい持ち帰って、報酬をたっぷりもらうぞー!」


 気合を新たに、神殿内へと足を踏み出した。



 

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