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元魔王軍の武器庫番、レンタル武器屋を開業する。  作者: 河津田 眞紀@受賞2作発売中!
第1話

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11/51

どうぞごひいきに



「──リューマさんっ!」


 翌朝。

 フリムは、ハルバードを手に『貸し武器屋リューちゃん』を訪れた。


「おう。どうだった? 『鎖鎌のトロール』、倒せたか?」


 相変わらず気怠げに尋ねるリューマ。

 その気の抜けた顔に、フリムはハルバードを突き出し、


「倒しましたけど、これ! この武器! なんかビリビリ〜ってなったんですけど! どういうことですか⁈」


 鬼気迫る表情で、問い詰める。

 本当ならば昨日のうちに聞きたかったのだが、街に戻りギルドへ報告し、その後に来てみたら、リューマはもう店じまいしていて、いなかったのだ。


「この一晩、気が気じゃなかったんですよ⁈ 外に置いておくわけにもいかないから部屋に置いたものの、寝ている間に電撃を喰らったらどうしようって!」


 そう訴えるフリムの目には、うっすらクマが浮かんでいる。


「電流を纏う武器なんて聞いたことがないですよ! まるで、おとぎ話に出てくる伝説の武器……これは一体、何なのですか⁈」


 血走った目を近付けられるも、リューマはまばたきするのみ。

 そして、


「そうか……あんた、やはり認められたのか」

「……へっ?」

「ウォーハンマーを貸した時にも、何か感じなかったか? こう、自分の能力(ちから)だけじゃない、特別な何かを」


 言われて、思い出す。

 地面にクレーターを作り、地震を発生させるほどの衝撃を……


「あれ、やっぱりわたしの馬鹿力だけじゃなく……あのウォーハンマーの能力(ちから)……⁈」

「そう。あんたは武器の中にいるモ(・)ノ(・)に認められた。だから今回も、ハルバードの特性である電撃を放てるようになった。相手が鎖鎌を使うっていうから、ワンチャン発動すれば感電狙えんじゃね? と思って貸したが……やるじゃん」


 という、わけのわからない解説をするので、フリムは喉を鳴らしながら聞き返す。


「武器の中にいる、モノ……? それって……」

「──魔族だよ」


 目を見開くフリム。

 リューマは、緩く笑い、


「俺が貸し出す武器の中には、魔族の精神が入っている。つまりこの武器そのものが魔族の身体……だから傷付いたそばから修復するし、滅多なことじゃ壊れない」

「なっ……!」

「魔族は精神生命体。精神の強さで序列が決まる。軟弱な精神の者は容赦なく殺すが、気高く強い精神を持つ者には敬意を払う。あんたは武器の中の魔族に、『気高き精神の持ち主』だと認められた。だから能力(ちから)を貸してもらえたんだ」


 それは……妄言としか思えない言葉だった。

 だって、魔族は二百年前、〈魔王〉が倒されるのと同時に精神崩壊し、すべてモンスターに成り果てたはず。

 なのに何故、武器の形で現存していて……それを、この人が貸し出しているのか。


 しかし同時に、納得もしてしまった。

 フリムの怪力にびくともしない頑強さと、不思議な能力(ちから)……中に魔族がいるというのなら、説明がつく。


 手にしたハルバードを見上げ、ぞぞぞっと慄(おのの)いていると、


「リューちゃんの武器、魔族が入ってんの⁈ まじやべーじゃん!」


 と、例の虫カードを買いに集まっていた少年たちが、面白がるように言った。今日も今日とて大盛況だ。


「そうだぞー? だから悪いことすんなよ? そのカードよそで転売してんの見つけたら、武器持ってオシオキに行くからな」

「やべー! こわー‼︎」


 なんてやり取りを見る限り、本当に魔族が入っているのか怪しいところだが……


「……ま、とにかくあんたは、武器に認められた崇高な精神の持ち主ってことだ」


 言いながら、リューマは懐(ふところ)から小さなカードを取り出す。


「えっと、あんたの名前は……」

「ふ、フリムです」

「そうそう。フ、リ、ム、っと……ほい」


 カードにフリムの名前を書き、そのまま差し出した。

 そして、口の端をニッと吊り上げて、


「ウチのスタンプカード。選ばれしお客さんのみに渡す、特別なモンだ。今後もごひいきに」


 そう、柔らかに言った。

 その笑みに、フリムは警戒心を溶かされてしまい……手を伸ばし、カードを受け取る。


 得体の知れない、謎の店主。

 魔族が宿るという奇妙な武器。

 しかし、その強靭さと能力(ちから)は確かなもので……上手く使えば、自分にぴったりかもしれなくて。


 フリムは、スタンプカードをしっかり手にすると、


「……はい。また来ます」


 少しの期待を滲ませながら、頷いた。


「ところで……このスタンプカード、ぜんぶ貯めると何があるんですか?」

「一回の貸し出しでスタンプ一つ。五十個貯めたら……」

「貯めたら……?」

「この…………超激レア・コウテツオオカブトのキラキラカードをやる」

「うわっ、いらなッ!」


 やっぱり、魔族が宿っているとか、ウソかもしれない。

 胡散臭い店主の笑みを見つめ、フリムは「はぁ」と、ため息をつくのだった。



 

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― 新着の感想 ―
遅ればせながら読み始めました! 魔族の精神が宿っている武器を貸し出す謎めいたリューマ(なぜか虫博士!?)。 怪力クラッシャー娘のフリム。 二人の背景には何があるんだろう。これからどうなるんだろうとわく…
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