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『四葉のクローバー』学園物語  作者: 優貴(Yukky)


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8/17

第8話「七夕と願いごと」

六月の終わり。

梅雨はまだ明けていなかったが、青葉学園は少しずつ七月の空気に包まれ始めていた。

廊下には色紙。

教室には笹飾り。

生徒会主催の七夕イベントが近付いていた。

「短冊に願い事を書いてください!」

昼休み。

生徒会役員が各クラスを回っていた。

「願い事かぁ」

美咲は配られた短冊を見つめる。

「何書こうかな」

「成績アップとか?」

悠斗が言う。

「却下」

「即答かよ」

「もっと大事な願いがあるから」

意味深な笑み。

悠斗は嫌な予感しかしなかった。

その日の放課後。

教室にはまだ何人か残っていた。

四葉もその一人だった。

机に向かいながら短冊を書いている。

誰にも見られないように。

こっそり。

何度も書き直して。

そして最後に小さく微笑んだ。

「これでいいかな」

だがその直後。

ガタッ。

「うわっ!」

驚いた拍子に短冊が床へ落ちる。

さらに風で飛ばされた。

「あっ!」

短冊は教室の後ろへ。

そこにいたのは――

悠斗だった。

「ん?」

思わず拾う。

そこには。

『大好きな人と、ずっと一緒にいられますように』

と書かれていた。

「……」

悠斗は固まる。

四葉も固まる。

数秒の沈黙。

そして。

「か、返してー!!」

四葉が顔を真っ赤にして飛び込んできた。

「ご、ごめん!」

悠斗も慌てる。

短冊を返す。

四葉は両手で隠した。

耳まで真っ赤だった。

「み、見た?」

「少しだけ」

「うぅ……」

今すぐ消えてしまいたかった。

穴があれば入りたい。

そんな気分だった。

帰り道。

悠斗は一人で歩いていた。

頭の中には短冊の言葉。

『大好きな人と、ずっと一緒にいられますように』

四葉の好きな人。

誰だろう。

考えた瞬間。

なぜか胸がざわついた。

もし他の誰かだったら?

そんなことを考えている自分に驚く。

「俺……」

答えはまだ見えない。

翌日。

七夕イベント準備。

クラス全員で笹を飾っていた。

「高いところ届かないー!」

四葉が背伸びする。

すると。

「ほら」

悠斗が短冊を受け取る。

そして代わりに結び付けた。

「ありがとう」

「どういたしまして」

自然なやり取り。

それだけなのに四葉は嬉しくなる。

しかし。

「仲良いね」

玲奈の声。

二人が振り返る。

玲奈は笑っていた。

だがその笑顔の奥には複雑な感情も見える。

「神宮寺さんも手伝う?」

悠斗が言う。

「もちろん」

玲奈は脚立に乗る。

ところが。

ぐらっ。

バランスを崩した。

「危ない!」

悠斗が反射的に支える。

玲奈は悠斗の腕の中へ。

教室が静まり返る。

「……」

「……」

近い。

近すぎる。

玲奈は数秒固まり。

そして。

「ありがとう」

珍しく顔を赤くした。

その様子を見た四葉の胸がちくりと痛む。

昼休み。

屋上。

今日は美咲も来ていた。

「なんか最近ここに来る人増えたね」

「確かに」

悠斗が苦笑する。

四葉も笑った。

しばらく四人で話していると。

話題は七夕になった。

「願い事書いた?」

玲奈が聞く。

「書いた!」

美咲が即答する。

「何を?」

「秘密」

「怪しい」

「怪しくない」

全員が怪しいと思った。

「四葉ちゃんは?」

美咲が聞く。

「ひ、秘密」

四葉は慌てる。

悠斗は思わず目を逸らした。

昨日見てしまったからだ。

四葉もそれに気付いてさらに赤くなる。

「?」

玲奈と美咲は不思議そうだった。

七夕当日。

青葉学園の中庭には大きな笹が設置されていた。

たくさんの短冊が揺れている。

生徒たちは楽しそうに眺めていた。

放課後。

四人も中庭へ向かう。

「すごい」

四葉が見上げる。

色とりどりの短冊。

風に揺れていた。

その時だった。

突然の強風。

ざわっ!

「きゃっ!」

笹が大きく揺れる。

そして一枚の短冊が外れた。

ひらひら。

舞い落ちる。

悠斗は反射的に掴む。

そこに書かれていた願い事。

『藤崎悠斗と結ばれますように』

「え?」

全員が固まる。

悠斗も。

四葉も。

玲奈も。

そして美咲も。

誰の短冊なのか。

視線が集まる。

短冊の裏。

そこには――

『朝倉美咲』

と書かれていた。

「……」

「……」

「……」

空気が凍る。

美咲は真っ赤になった。

「返してぇぇぇぇ!!」

猛ダッシュ。

短冊を奪い取る。

「見るなー!!」

そのまま走って逃げた。

残された三人。

数秒後。

「ぷっ」

玲奈が吹き出す。

「ははは!」

悠斗も笑った。

四葉もつられて笑う。

恥ずかしい事件だった。

でもどこか温かい。

そんな七夕だった。

その夜。

自宅。

悠斗は窓から夜空を見上げていた。

雲の隙間から星が見える。

七夕。

願い事。

四葉の願い。

美咲の願い。

そして玲奈の想い。

みんな本気だ。

だからこそ。

自分も逃げてはいけない。

そう思い始めていた。

しかしその時。

スマホが鳴る。

送信者は玲奈。

『明日、放課後少し時間ある?』

短いメッセージ。

だが予感がした。

何かが変わる。

そんな予感が。

四人の恋はさらに加速していく。

そして次回――

転校生・神宮寺玲奈がついに自分の想いを打ち明ける。

悠斗の心もまた、大きく揺れ始めるのだった。

第8話 完

次回 第9話「転校生の告白」

玲奈の真っ直ぐな想い。そして四葉と美咲が知ることになる新たな恋の行方――。

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