表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『四葉のクローバー』学園物語  作者: 優貴(Yukky)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/17

第7話「転校生と新しい風」

六月中旬。

梅雨の雨が窓を叩く朝。

一年二組の教室はいつも以上に騒がしかった。

理由は一つ。

「今日、転校生が来るらしいぞ!」

男子の一言で教室がざわついていた。

「男子かな?」

「女子だったらいいな!」

「美人希望!」

好き勝手な声が飛び交う。

悠斗も席に座りながら聞いていた。

すると隣の美咲が身を乗り出す。

「絶対女子だと思う!」

「なんで?」

「勘!」

「根拠ゼロじゃん」

「女の勘をなめるな!」

そんな会話をしているとチャイムが鳴った。

担任の佐伯先生が教室へ入ってくる。

「みんな静かに」

ざわつきが収まる。

先生は教室の扉を見る。

「入ってきなさい」

ガラッ。

扉が開いた。

そこに立っていたのは――

長い黒髪の少女だった。

整った顔立ち。

涼しげな瞳。

落ち着いた雰囲気。

教室が一瞬静まり返る。

「綺麗……」

誰かが呟いた。

少女は黒板の前に立つ。

「転校してきました。神宮寺玲奈です。よろしくお願いします」

短い挨拶。

それだけだった。

だが存在感は十分すぎた。

「神宮寺さんは東京から来たそうだ」

先生が説明する。

「仲良くしてやってくれ」

「はーい!」

クラス中から声が上がる。

玲奈は軽く会釈した。

そして――

「神宮寺さんの席は……」

先生が教室を見渡す。

「藤崎の後ろだな」

悠斗は思わず振り返る。

玲奈と目が合った。

「よろしく」

小さく微笑む玲奈。

「よ、よろしく」

悠斗は少し戸惑った。

休み時間。

当然のように玲奈の周りには人だかりができていた。

「東京ってどんな感じ?」

「芸能人見たことある?」

「彼氏いる?」

質問攻めである。

しかし玲奈は嫌な顔一つせず答えていた。

「大変そうだな」

悠斗が呟く。

すると。

「そう思うなら助けてくれない?」

後ろから声がした。

玲奈だった。

「え?」

「人が多いの苦手なの」

そう言いながら少し困った顔をする。

意外だった。

クールな印象だったからだ。

「助けてくれたら昼ご飯奢る」

「安いな」

思わず笑う。

玲奈も少し笑った。

それが初めて見る彼女の自然な表情だった。

その様子を見ていた人物がいた。

白石四葉。

「あ……」

胸が少しざわつく。

玲奈は綺麗だった。

大人っぽい。

自分にはない魅力がある。

そして何より――

悠斗と楽しそうに話していた。

理由の分からない不安が胸に広がる。

昼休み。

屋上。

いつものように悠斗と四葉が昼食を食べていた。

「今日は雨だね」

四葉が空を見上げる。

灰色の雲が広がっている。

「そうだな」

すると。

ガチャ。

屋上の扉が開いた。

現れたのは玲奈だった。

「あれ?」

玲奈は二人を見つける。

「藤崎くん」

「神宮寺?」

「こんなところにいたんだ」

玲奈は近づいてくる。

そして自然に隣へ座った。

四葉は少し驚いた。

「友達?」

玲奈が聞く。

「うん」

四葉が答える。

「白石四葉です」

「神宮寺玲奈」

二人は挨拶を交わした。

表面上は穏やかだった。

しかしどこか微妙な空気が流れていた。

悠斗だけは全く気付いていない。

放課後。

玲奈は窓際の席で本を読んでいた。

すると悠斗が帰り支度を始める。

「藤崎くん」

「ん?」

「図書室どこ?」

「案内しようか?」

「お願い」

二人は教室を出た。

その姿を四葉は見送る。

胸が少し痛かった。

「四葉ちゃん」

彩花が声を掛ける。

「どうしたの?」

「え?」

「顔に全部書いてある」

四葉は慌てる。

「な、何もないよ」

「嘘」

彩花は笑った。

「好きなんでしょ?」

その言葉に四葉の顔が真っ赤になる。

否定できなかった。

図書室。

「ありがとう」

玲奈が言う。

「別に」

「優しいね」

「普通だろ」

玲奈は少し笑った。

そして本棚を眺める。

「私さ」

突然話し始める。

「転校したくなかったんだ」

「そうなのか」

「友達もいたし」

寂しそうな目。

初めて見せる表情だった。

「でも父親の仕事で引っ越し」

悠斗は静かに聞いていた。

「だから最初は嫌だった」

玲奈は窓の外を見る。

雨が降っている。

「でも」

少し微笑んだ。

「この学校、思ったより悪くない」

その視線の先には悠斗がいた。

数日後。

玲奈はすっかりクラスに馴染んでいた。

勉強もできる。

運動もできる。

性格も良い。

男女問わず人気が出るのは当然だった。

そんなある日。

放課後の校舎裏。

四葉は偶然玲奈と二人きりになった。

「白石さん」

玲奈が声を掛ける。

「はい」

少し緊張する。

玲奈は真っ直ぐ四葉を見る。

「藤崎くんのこと好き?」

突然だった。

四葉は固まる。

顔が真っ赤になる。

「えっ!?」

玲奈は笑わなかった。

冗談でもなかった。

「やっぱり」

その反応で十分だったらしい。

四葉は俯く。

「好き……です」

小さな声。

でも確かな言葉。

玲奈は静かに聞いていた。

そして。

「私も」

「え?」

「藤崎くんが気になってる」

四葉は目を見開く。

玲奈は続ける。

「だから負けない」

真っ直ぐだった。

宣戦布告にも似た言葉。

しかし嫌味はなかった。

ただ本気だった。

四葉も拳を握る。

怖い。

自信もない。

だけど――

逃げたくなかった。

「私も……負けません」

初めて強い声が出た。

玲奈は少し驚き、そして微笑む。

「そうこなくちゃ」

その日の帰り道。

悠斗は何も知らずに歩いていた。

美咲と並んで。

「なんか最近モテるね」

美咲が言う。

「は?」

「四葉ちゃん」

「神宮寺さん」

「それから――」

美咲は少しだけ視線を逸らす。

「私」

悠斗は思わず足を止めた。

美咲は苦笑する。

「忘れたわけじゃないよね?」

「……」

忘れるはずがない。

美咲の告白。

四葉の優しさ。

玲奈との出会い。

気付けば自分の周りには大切な人たちがいた。

だけど。

その想いにどう応えるべきなのかはまだ分からない。

梅雨空の下。

四人の恋は静かに動き始めていた。

幼なじみの朝倉美咲。

四葉のクローバーを愛する白石四葉。

東京から来た転校生・神宮寺玲奈。

それぞれの想いが交差する時――

青春はさらに大きく動き出す。

第7話 完

次回予告 第8話「七夕と願いごと」

七夕祭りの準備が始まる青葉学園。短冊に込めるそれぞれの願い。そして悠斗は偶然、四葉の秘密の願いを知ってしまう――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ