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『四葉のクローバー』学園物語  作者: 優貴(Yukky)


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第6話「幼なじみの気持ち」

体育祭が終わった夕方。

校庭にはもうほとんど人がいなかった。

赤く染まる空。

静かな風。

悠斗は美咲の前に立っていた。

「話って?」

美咲は少し俯いている。

いつもの明るい彼女とは違った。

緊張しているようにも見える。

「私ね……」

声が震えていた。

悠斗は黙って待つ。

そして。

「最近ずっと考えてた」

美咲は小さく笑う。

「悠斗が四葉ちゃんと仲良くなってから」

「美咲……」

「最初は変な気持ちだったんだ」

夕日が二人を照らす。

「なんでこんなにモヤモヤするんだろうって」

美咲は拳を握る。

「幼なじみだからだと思ってた」

でも違った。

そう続けた。

「私――」

一度深呼吸する。

そして。

「悠斗のことが好き」

時間が止まったような気がした。

悠斗は言葉を失った。

美咲が。

自分を。

好き?

頭の中が整理できない。

「返事はいらない」

美咲は慌てて言った。

「え?」

「今すぐじゃなくていい」

少し笑う。

だけどその笑顔はどこか寂しかった。

「ただ伝えたかっただけ」

ずっと隠していた気持ち。

ずっと誤魔化していた想い。

それをようやく口にできた。

「ありがとう」

悠斗はそう答えるしかなかった。

美咲は小さく頷く。

「じゃあ帰ろっか」

そう言ったものの。

二人の距離は今までとは少し違って見えた。

翌日。

教室。

悠斗は落ち着かなかった。

授業も頭に入らない。

当然だ。

人生で初めて告白されたのだから。

しかも相手は美咲。

幼なじみ。

家族みたいな存在。

大切な人。

でも――

恋愛感情なのかは分からない。

「はぁ……」

ため息をつく。

すると。

「どうしたの?」

四葉だった。

「顔色悪いよ?」

心配そうに覗き込む。

近い。

そして優しい。

「いや、大丈夫」

「無理してる顔だよ」

四葉は本当に人の変化によく気付く。

悠斗は少しだけ笑った。

「ありがとう」

「うん」

四葉も微笑む。

その笑顔を見ていると不思議と落ち着く。

昼休み。

いつもの屋上。

しかし今日は少し空気が違った。

「何かあった?」

四葉が聞く。

悠斗は驚く。

「分かるのか?」

「なんとなく」

さすがだった。

少し迷う。

話すべきか。

でも美咲の気持ちを勝手に話すのは違う気がした。

「友達のことで悩んでる」

結局そう答えた。

四葉は頷く。

「そっか」

そして少し考えてから言った。

「悩むってことは、その人を大事に思ってるんだね」

その言葉が胸に残った。

大事に思っている。

確かにそうだ。

美咲も。

四葉も。

放課後。

四葉は図書室にいた。

しかし今日は読書に集中できない。

理由は分かっていた。

悠斗だ。

最近、気付けば目で追っている。

声を聞くと嬉しくなる。

会えないと少し寂しい。

それが何なのか。

もう分かっていた。

「好きなんだ……」

小さく呟く。

認めた瞬間。

顔が熱くなる。

でも同時に不安もあった。

もし悠斗に好きな人がいたら?

もし迷惑だったら?

考えるほど胸が苦しくなる。

数日後。

六月。

梅雨入りが近づいていた。

放課後の帰り道。

突然の雨。

「うわっ!」

悠斗が空を見上げる。

傘を持っていない。

走ろうかと思ったその時。

「悠斗くん!」

四葉だった。

傘を差している。

「入る?」

「いいのか?」

「もちろん」

二人は一本の傘に入った。

距離が近い。

肩が触れそうになる。

雨音だけが響く。

「……」

「……」

お互い緊張していた。

すると。

「悠斗くん」

四葉が小さく呼ぶ。

「ん?」

「今、好きな人いる?」

心臓が跳ねた。

突然だった。

四葉自身も言ってから真っ赤になる。

「ご、ごめん!」

「いや」

悠斗は困った。

正直に言うべきか。

少し考える。

そして。

「分からない」

そう答えた。

「え?」

「大切な人はいる」

美咲。

四葉。

どちらも大切だ。

だけど恋なのかはまだ分からない。

四葉は静かに聞いていた。

そして少しだけ微笑む。

「そっか」

その笑顔は優しかった。

だけどどこか切なかった。

その夜。

四葉は部屋で押し花のノートを開く。

たくさんの四葉のクローバー。

そして今日、新しく見つけた一枚。

ノートの端に小さく書く。

――恋をしました。

文字を書いた瞬間。

少しだけ泣きそうになった。

嬉しいからか。

苦しいからか。

自分でも分からなかった。

一方。

悠斗もまたベッドの上で天井を見ていた。

美咲の告白。

四葉への気持ち。

答えを出さなければならない日が来る。

だけど今はまだ分からない。

恋とは何なのか。

本当に好きとはどういうことなのか。

三人の心は少しずつすれ違い始める。

そして次回――

青葉学園にやってくる転校生が、三人の関係をさらに大きく揺らすことになる。

第6話 完

※次回、第7話「転校生と新しい風」へ続く。

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