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『四葉のクローバー』学園物語  作者: 優貴(Yukky)


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第3話「放課後の図書室」

五月に入り、青葉学園の新生活も少しずつ落ち着いてきた。

クラスメイト同士の距離も縮まり、休み時間にはあちこちで笑い声が響く。

そんな中――

悠斗には最近の日課ができていた。

昼休みに屋上へ行くこと。

そこにはいつも四葉がいる。

「おはよう、悠斗くん」

「おはよう」

朝の挨拶を交わすだけで、なぜか少し嬉しくなる。

そんな日々が続いていた。

ある日の放課後。

「先生、この本返してきます」

「頼むな」

担任に頼まれた悠斗は図書室へ向かった。

放課後の校舎は静かだった。

運動部の掛け声だけが遠くから聞こえる。

図書室の扉を開ける。

すると――

「えっ?」

窓際の席に見覚えのある姿があった。

白石四葉だった。

「四葉?」

「悠斗くん!」

四葉は驚いた顔をする。

その机には何冊もの本が積まれていた。

「勉強?」

「違うよ」

四葉は笑う。

「読書」

「こんなに?」

「うん」

悠斗は思わず感心した。

小説。

図鑑。

エッセイ。

様々なジャンルが並んでいる。

「本好きなんだな」

「大好き」

四葉は嬉しそうに頷く。

「嫌なことがあっても、本を読んでると忘れられるから」

その言葉が少し気になった。

「嫌なこと?」

「あっ」

四葉は慌てる。

「大したことじゃないよ」

しかし表情は少し曇っていた。

悠斗は無理に聞かなかった。

聞いてほしい時は、自分から話してくれる気がしたからだ。

「悠斗くんも読む?」

四葉が一冊の本を差し出す。

タイトルは――

『幸せを探す四つ葉の物語』

「なんか四葉らしいな」

「でしょ?」

二人は小さく笑った。

そして自然と隣同士で本を読む。

静かな時間。

言葉はほとんどない。

それなのに居心地が良かった。

ページをめくる音だけが聞こえる。

そんな穏やかな時間だった。

一方その頃。

校門前。

「悠斗遅いなぁ」

美咲は腕を組んでいた。

今日は一緒に帰る約束をしていた。

しかし待っても来ない。

「どこ行ったんだろ」

そこへ彩花がやってきた。

「まだ待ってるの?」

「うん」

「藤崎くんなら図書室じゃない?」

「図書室?」

「さっき見たよ」

美咲は嫌な予感がした。

「誰と?」

「白石さん」

その瞬間。

美咲の眉がぴくっと動いた。

「そっか」

笑顔だった。

しかし彩花は知っている。

こういう時の美咲が一番危ない。

図書室。

「この話好きなんだ」

四葉が本のページを指差す。

そこにはこんな言葉が書かれていた。

『幸せは見つけるものではなく、誰かと育てるもの』

悠斗はその一文を読む。

「いい言葉だな」

「うん」

四葉は優しく微笑んだ。

「私もそう思う」

その時。

ガラッ!

図書室の扉が勢いよく開いた。

「いたー!!」

大きな声。

悠斗は振り返る。

「美咲?」

そこには頬を膨らませた美咲が立っていた。

「約束!」

「え?」

「一緒に帰るって言ったじゃん!」

「あ……」

完全に忘れていた。

「ごめん」

「むー!」

美咲は不満そうだった。

すると四葉が慌てて立ち上がる。

「ごめんなさい!」

「え?」

「私が引き止めちゃったから」

四葉は申し訳なさそうだった。

しかし美咲は首を振る。

「四葉ちゃんは悪くないよ」

そう言いながらも悠斗を見る。

「悪いのは悠斗!」

「はい」

反論できなかった。

図書室を出た後。

三人で並んで歩くことになった。

しかし妙に空気がぎこちない。

「……」

「……」

「……」

沈黙。

耐えきれなくなった悠斗が話題を探す。

「そういえば今度の校外学習――」

「四葉ちゃんって好きな食べ物なに?」

美咲が割り込んだ。

「え?」

「好きな食べ物!」

「オムライスかな」

「へぇ!」

会話が始まる。

気付けば女子二人だけで盛り上がっていた。

悠斗は置いてけぼりだった。

しかし少し安心する。

仲良くなってくれたら嬉しい。

そう思った。

だが――

二人の心は少し違っていた。

四葉は思う。

(美咲ちゃん、悠斗くんと本当に仲良しなんだな)

幼なじみへの少しの羨ましさ。

そして。

美咲は思う。

(四葉ちゃん、やっぱり可愛いな……)

だからこそ。

負けたくない。

そんな気持ちが芽生え始めていた。

帰宅後。

四葉は今日借りた本を開く。

だが内容が頭に入らない。

気付けば思い出している。

図書室での時間。

悠斗の笑顔。

優しい声。

「私……」

胸が少しだけ温かくなる。

まだ名前の付かない感情。

だけど確かにそこにあった。

一方、美咲も自室のベッドに寝転びながら天井を見ていた。

「なんなんだろ」

最近のモヤモヤ。

悠斗が誰かと仲良くしているだけなのに気になる。

幼なじみだから?

それとも――。

答えはまだ分からない。

だが高校生活は始まったばかり。

四葉のクローバーが繋いだ出会いは、少しずつ恋へと近づいていく。

そして次のイベント――

校外学習が、三人の関係をさらに動かすことになる。

第3話 完

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