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『四葉のクローバー』学園物語  作者: 優貴(Yukky)


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第12話「本当の気持ち」

夏祭りから三日後。

夏休みが始まった。

朝から強い日差しが降り注ぎ、蝉の鳴き声が町中に響いている。

しかし――

藤崎悠斗の心は晴れていなかった。

自室のベッドに寝転びながら天井を見つめる。

「俺が好きな人……か」

何度も考えてきた。

美咲の告白。

玲奈の告白。

そして四葉との日々。

逃げ続けるわけにはいかない。

誰かを選ぶということは、誰かを傷付けることでもある。

それが怖かった。

だから答えを出せずにいた。

だが、もう分かっている気もしていた。

その日の午後。

悠斗は近所の公園へ向かった。

昔から考え事をするときによく来る場所だ。

ブランコ。

砂場。

小さな花壇。

子供の頃から何も変わらない。

ベンチに座って空を見上げる。

すると自然に思い出が浮かぶ。

美咲との思い出。

幼稚園。

小学校。

中学校。

いつも隣にいた。

喧嘩もした。

笑い合った。

大切な存在だ。

間違いなく。

でも――。

恋人として想像すると違和感がある。

家族に近い。

そんな感覚だった。

「美咲は本当に大事だよ」

ぽつりと呟く。

だが答えは見えていた。

次に浮かんだのは玲奈。

転校してきた日。

真っ直ぐな性格。

誰よりも勇気を持って告白してくれた。

玲奈といると刺激がある。

新しい発見も多い。

尊敬できる部分もたくさんある。

だけど。

「違うんだよな……」

胸の奥が答えていた。

最後に浮かんだのは――

白石四葉。

初めて出会った日。

四葉のクローバー。

屋上。

図書室。

勉強会。

夏祭り。

思い出が次々に浮かぶ。

そして気付く。

四葉が笑うと嬉しかった。

落ち込んでいると気になった。

他の男子と話していると少しモヤモヤした。

会えない日は寂しかった。

「……」

悠斗は目を閉じる。

そして静かに笑った。

「そうか」

ようやく分かった。

自分の本当の気持ちが。

翌日。

午前中。

美咲から連絡が来た。

『少し会えない?』

短いメッセージ。

悠斗はすぐに了承した。

待ち合わせ場所はいつもの公園。

幼い頃から何度も遊んだ場所だった。

美咲は先に来ていた。

ベンチに座りながら空を見上げている。

「お待たせ」

「ううん」

美咲は笑った。

いつもの笑顔。

だけど少しだけ無理をしているようにも見えた。

しばらく沈黙。

そして。

「答え、出た?」

美咲が聞いた。

真っ直ぐだった。

逃げるつもりはないらしい。

悠斗は頷いた。

「出た」

美咲は目を閉じる。

覚悟していた。

きっと。

最初から。

「ごめん」

その一言で十分だった。

美咲は少し俯く。

胸が痛い。

涙も出そうになる。

でも――

不思議と後悔はなかった。

「そっか」

少しだけ笑う。

「振られちゃったな」

「美咲……」

「いいの」

本当にいいのかは分からない。

でも。

悠斗を困らせたくなかった。

「ちゃんと答えてくれてありがとう」

そう言って立ち上がる。

そして。

「幸せになれよ」

笑顔を作った。

完璧ではない。

少し震えている。

それでも精一杯の笑顔だった。

悠斗は深く頭を下げる。

「ありがとう」

美咲は振り返らずに歩いていった。

その背中が少しだけ小さく見えた。

その日の夕方。

玲奈にも会った。

駅前のカフェ。

玲奈はすでに答えを察していた。

「そういう顔してる」

苦笑する。

「ごめん」

悠斗が言う。

玲奈は数秒黙った。

そして小さく笑う。

「悔しいな」

それが本音だった。

負けたくなかった。

本気だったから。

でも。

「藤崎くんらしいね」

玲奈は立ち上がる。

「ちゃんと自分で決めたんでしょ?」

「うん」

「ならいい」

そう言いながらも目は少し赤かった。

悠斗は何も言えなかった。

玲奈は最後に笑う。

「後悔したら許さないから」

「しない」

即答だった。

玲奈は少し驚き。

そして優しく微笑んだ。

「なら大丈夫」

その夜。

悠斗は机の引き出しを開ける。

中には四葉からもらったしおり。

そして何枚もの四葉のクローバー。

初めて見つけた一枚。

校外学習の日。

勉強会の日。

夏祭りの日。

全部大切な思い出だった。

スマホを手に取る。

メッセージを送る。

『明日、会える?』

送信先は――

白石四葉。

数分後。

返信が来る。

『うん』

たった一文字。

だけど胸が高鳴った。

翌日。

待ち合わせ場所は学校近くの公園。

夕方。

夏の風が吹いている。

四葉は少し早く来ていた。

白いワンピース。

緊張しているのが遠くからでも分かった。

「ごめん、待った?」

「ううん」

ぎこちない会話。

いつもならもっと自然なのに。

今日は違う。

お互い分かっているから。

これから何が起きるのか。

「四葉」

悠斗が呼ぶ。

「うん」

四葉は見上げる。

鼓動が速い。

怖い。

期待してはいけない。

でも期待してしまう。

悠斗は深呼吸した。

そして――

「話したいことがある」

夏の夕日が二人を照らす。

運命を変える言葉が今、口にされようとしていた。

第12話 完

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