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『四葉のクローバー』学園物語  作者: 優貴(Yukky)


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第11話「夏祭りの約束」

七月下旬。

実力テストも終わり、青葉学園は夏休み目前となっていた。

教室には開放感が漂っている。

「終わったぁぁ!」

美咲が机に突っ伏した。

「解放!」

「大げさだな」

悠斗が苦笑する。

「だって夏休みだよ?」

美咲は勢いよく立ち上がった。

「海!祭り!花火!」

「勉強は?」

「聞こえません」

即答だった。

玲奈が呆れたようにため息をつく。

「その成績でよく言えるね」

「玲奈さん厳しい」

「事実」

教室に笑いが広がった。

そんな時だった。

彩花が声を上げる。

「あ、そうだ!」

全員の視線が集まる。

「来週の土曜日、商店街の夏祭りあるじゃん?」

「あー!」

美咲が反応する。

地元では有名な夏祭りだった。

屋台。

盆踊り。

そして最後には大きな花火大会。

毎年大勢の人が集まる。

「みんなで行かない?」

彩花の提案。

教室が盛り上がる。

そして当然のように――

悠斗たち四人も参加することになった。

放課後。

帰り道。

四葉は一人で歩いていた。

夏祭り。

その言葉だけで胸が高鳴る。

理由は一つ。

悠斗と一緒だから。

「浴衣……どうしよう」

クローゼットを思い浮かべる。

去年買った浴衣があったはず。

似合うだろうか。

変じゃないだろうか。

そんなことばかり考えてしまう。

気付けば顔が少し赤くなっていた。

一方。

神宮寺玲奈。

自宅。

鏡の前に立っていた。

スマホで浴衣の写真を見ている。

「これかな」

青色。

いや。

白色。

どちらにするか悩む。

そしてふと笑った。

「本気だな、私」

恋愛にこんなに真剣になるのは初めてだった。

東京にいた頃は興味もなかった。

でも今は違う。

負けたくない。

そう思っていた。

そして美咲。

「お母さーん!」

リビングへ飛び込む。

「浴衣どこ!?」

「急にどうしたの?」

「大事なの!」

母親は苦笑した。

「恋愛関係?」

「ち、違う!」

図星だった。

顔が真っ赤である。

夏祭り当日。

夕方。

待ち合わせ場所の駅前広場。

悠斗は少し早く到着していた。

私服。

白いシャツ。

ジーンズ。

「早く来すぎたかな」

そんなことを考えていると。

「悠斗くん」

聞き慣れた声。

振り返る。

そして――

言葉を失った。

そこにいたのは四葉だった。

淡いピンク色の浴衣。

髪も少しだけまとめている。

普段よりずっと大人っぽい。

「どうかな?」

不安そうな顔。

「変じゃない?」

悠斗は首を振った。

「すごく似合ってる」

四葉の顔が一瞬で赤くなる。

「そ、そっか」

嬉しかった。

とても。

その直後。

「お待たせ」

玲奈が現れた。

白地に青い花柄の浴衣。

まるでモデルのようだった。

周囲の視線が集まる。

「綺麗……」

四葉が思わず呟く。

玲奈は笑う。

「ありがとう」

そして悠斗を見る。

「どう?」

「似合ってる」

「よかった」

玲奈も少し嬉しそうだった。

そして最後。

「やっほー!」

美咲が走ってくる。

黄色い浴衣。

元気いっぱいだった。

「どう!?」

「転ぶなよ」

「感想それ!?」

全員が笑った。

こうして四人の夏祭りが始まった。

商店街は大賑わいだった。

屋台が並ぶ。

焼きそば。

たこ焼き。

かき氷。

金魚すくい。

子供たちの笑い声。

祭りの音楽。

夏そのものだった。

「まず何する?」

美咲が聞く。

「食べ歩き」

即答だった。

「予想通り」

玲奈が笑う。

最初は金魚すくい。

「よし!」

美咲が挑戦する。

結果。

三秒で終了。

「弱すぎる」

玲奈が呆れる。

しかし玲奈も五秒だった。

「……」

「……」

二人とも沈黙。

そして。

四葉。

「取れた」

一匹成功。

「すごい!」

全員が拍手した。

四葉は照れながら笑った。

次は射的。

悠斗が挑戦する。

見事に景品を落とした。

「おお!」

歓声が上がる。

店のおじさんも驚いていた。

景品は小さなクローバーのキーホルダー。

「これ」

悠斗は四葉へ差し出した。

「え?」

「四葉っぽいから」

四葉は固まる。

そして。

「ありがとう」

大切そうに受け取った。

胸がいっぱいになった。

夜。

花火大会の時間。

川沿いには大勢の人が集まっていた。

「すごい人だな」

悠斗が言う。

その時。

ドンッ!

大きな音。

夜空に花火が咲いた。

赤。

青。

金色。

次々と広がる。

「綺麗……」

四葉が見上げる。

花火の光が瞳に映る。

その横顔を悠斗は見ていた。

自然と。

気付けば。

花火よりも。

四葉の方を。

ドンッ。

大輪の花火。

歓声。

その瞬間。

人の波が動いた。

「あっ」

四葉がバランスを崩す。

悠斗は反射的に手を掴んだ。

ぎゅっ。

二人の手が重なる。

「……」

「……」

離せない。

いや。

離したくなかった。

四葉の心臓は限界だった。

花火の音が聞こえないほど。

鼓動がうるさい。

そして悠斗もまた。

同じだった。

少し離れた場所。

玲奈はその光景を見ていた。

美咲も。

二人とも何も言わなかった。

言えなかった。

分かってしまったから。

悠斗が四葉を見る目。

その優しさ。

その特別さ。

そして――

四葉の想い。

花火大会終了後。

帰り道。

四人は駅へ向かう。

楽しかった。

本当に。

だけど。

それぞれの胸には違う感情が残っていた。

恋。

期待。

不安。

切なさ。

夏の夜風が吹く。

そして悠斗はまだ知らない。

もうすぐ自分が答えを出す時が来ることを。

四葉のクローバーが繋いだ出会い。

その恋は、ついに大きく動き始めていた。

第11話 完

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