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第一章 第八話 「最強最悪」

魔王の生き残り、第八話公開!

「うぅ……ここは……」


 オルティマは気がつくと、檻の中へ閉じ込められていた。

 手足は鎖で繋がれ、地べたに這いつくばっていた。

 床には不思議な魔法陣が描かれており、思うよう力が出ない。

 恐らく、魔物を弱体化させるためのものだろう。


(まじか……)


 スラっちも静かなままで、呼びかけても返事はない。

 すると、先ほどの剣聖を名乗る男が部屋に入ってきた。

 檻越しに、オルティマを見つめる。


「目覚めたか、魔王よ」


 オルティマは声も出せず、ただ冷たい檻の床から剣聖ゼクトリアを睨みつけることしかできなかった。


「ここは王都アルカディアの、地下深くにある大監獄タルタロスという場所だ」


 初めて聞く王都の名前と、名前からして恐ろしい監獄、それはオルティマにとって初めての絶望だった。

 

 「あの……」


 オルティマが口を開いた。


「冒険者3人組の……アルス達は……」


 アルス達のことが気になる、彼らは大丈夫だろうか。

 だがその答えは返ってこなかった。

 

「ククク、魔王が人間のことを心配しているのか?」


「……」


「魔界は一体何を企んでる?教えろ!魔王が人間界でコソコソと何をしている?」


 オルティマは、剣聖ゼクトリアの質問に対して、正直に答えた。


「何も……ない!わたちは、人間界が……見てみたかった……だけ!!」


 剣聖ゼクトリアはその言葉を聞いて、顔が険しくなった。


「半分合ってるが……俺の洞察スキルでは、お前の心には僅かに人を殺したいという欲求を感じる」


 オルティマは何を喋ろうとも、剣聖の前では全て筒抜けだった。

 なぜ人を殺したいと思っているのか。

 それは簡単だ。


(レベルアップするため……)


 魔王に生まれたから私は、強くなるには魔物ではなく、敵である人間を殺すしか道はない。


「わたちは!強く……なりちゃいんだぁ!!」


 オルティマは初めて声を荒げ、気持ちをぶつけた。

 しかし、その思いに反応して、床にある魔法陣が光輝いた次の瞬間____


「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ」


 全身に激しい痛みが走り、オルティマは意識を失いかける。


「その魔法陣は、感情の高ぶりや俺たち人間に敵意を向いた時に発動する、魔物を拘束するためのものだ」


(やっぱりか……)


 剣聖ゼクトリアは腰に携えた剣を抜き、檻越しにオルティマに突き出した。


「お前の首を王都に住む民へ晒しあげ、二度と魔界が反逆を起こさせないようしてやる、それまでせいぜい最後の時を楽しんでおくんだな」


 剣聖ゼクトリアは最後の捨て台詞を吐き、あざけるような笑い声を上げながら、部屋から出ていった。


(あいつ本当に剣聖かよ……くそっ、このままじゃまじでやばい。どうにか脱出しないと……)


 辺りを見渡すが、特に脱出に使えそうな道具は見当たらない。

 なぜか魔力もあまり回復しておらず、さらに数時間が経った。


_______



 その頃、魔界ではゴブリン達が総動員でオルティマを探していた。


「おい!見つかったか??」


「どこにもいません!!」


 ゴブリン達は何時間捜索しても、オルティマを見つけることはできなかった。


「長老よ、どうなさいますか??」


「……」


 長老ゴブリンは深く考えた。

 一体オルティマはどこへ消えてしまったのか。

 スラっちに念波で呼びかけても応答がない。


「これだけ総動員で探しても見つからないとは……あの人に頼るしか……」


 長老ゴブリンは一人だけ見つけれるかもしれない人物を知っていた。


「お前達!すぐに悪魔王メレス様へ連絡するのだ!!」


「で、ですが……」


「かまわん!一刻の事態じゃ!!」


 今、この魔界で一番強い男、悪魔王メレス。

 過去の人間との大戦時に比べ、かつての魔王達に匹敵するのではないかと言われるほど強くなっていた。


「あ、あの悪魔王メレス様、聞こえますか??」


 ゴブリン達は念波で悪魔王メレスに呼びかける。

 メレスは魔界の反対側に位置する遥か遠くに、悪魔城を築いており、そこで生活をしている。


「なんだ?ゴブリンよ」


 メレスが応答した。


「実はオルティマ様が行方不明になってしまいまして、どうやらこのゴブリンの巣窟にはいないみたいなんです」


 ゴブリンはことの経緯を一から伝えた。

 すると悪魔王メレスは驚いた口調で、すぐに自分も捜索してみようと協力してくれた。


「よかった、メレス様も協力してくれるならひとまず安心だ」


 ゴブリン達は安堵し、長老ゴブリンに内容を伝えた。


_______



「オルティマ様……」


 悪魔王メレスは悪魔城の屋上から、魔界全域を見渡していた。


「魔界に……いない??」


 するとメレスはポケットから紫色の宝玉を取り出した。

 

「これでオルティマ様の居場所がわかるだろう」


 以前オルティマ様と出会った際、その身体に我の魔力を込めておいた。

 そのおかげで、オルティマ様がどこへいようともこの宝玉が居場所を指し示してくれる。

 しかしその代償として、込めた魔力はオルティマ様の魔力回復を阻害する呪いとなって機能していた。


「なんと……人間界にいるのか……しかも」


 囚われた場所は勇者が誕生した国、アルカディアだった。

 そしてその地下深くにある大監獄タルタロス。

 するとアルカディアの王城の屋上から、一人の男性もまた不適な笑みを浮かべ、こちらを見つめていた。


「なっ!?あいつは……まだ生きておったのか……」


 メレスの顔が怒りと驚愕で険しくなった。

 数年前に全ての魔王を屠り、魔界を絶望の底へと叩き落とした、人類最強最悪の男。


 その名を___勇者アルマ・ジ・オルタレス


「魔界にもこれ以上被害を出すわけにはいかない」


 メレスは背中の漆黒の翼を広げると、単独で王都アルカディアへ向けて、凄まじい速度で魔界の空を飛び去っていった。

読んでくださってありがとうございます!

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