第一章 第七話 「剣聖到来」
「魔王の生き残り」第七話、いよいよ剣聖の登場です!
3人の冒険者は自己紹介を始めた。
「俺の名はアルスってんだ!よろしく!」
「私は魔法使いの、マリスよ」
「あたしは弓使いの、シルフ」
剣士のアルスはとても優しく接してくれるが、魔法使いのマリスは、まだ警戒している。
弓使いは元々無口なのだろう。
前世で人の目を気にしながら生きてきたオルティマは、相手がどういう人間なのか、顔を見ればだいたいわかった。
「よーし村に着いたぞー!」
村は長年の風雨で黒ずみがひどく、苔が生い茂った建物がほとんどだった。
しかし、村の人々は幸せそうな日々を送っているように見える。
「この村の名前はありまちゅか?」
「え?」
オルティマの可愛らしい幼児音と、どことなく、幼児とは思えないような違和感に3人の冒険者はあまり詮索しないようにした。
「この村に名前はないよ」
魔法使いのマリスが話し出した。
「かつて、魔王がこの人間界に解き放たれた時、数多くの人々が命を奪われたわ。その際にほとんどの村が焼き尽くされた……。この村も、その一つよ」
(やっぱり過去に人間界と魔界でいろいろあったみたいだな)
オルティマは以前、長老ゴブリンから、魔界には7人の魔王が存在していた話を思い出した。
最後の二人の魔王には、深淵の魔王、慈愛の魔王と名前があったが、他の魔王の名前は知らない。
「おいおいマリス、子供にそんな話したら泣いちゃうだろ。お嬢ちゃんも怖かったよな?そういえばお嬢ちゃんの名前聞いてなかったな」
アルスがオルティマを抱き抱えた状態で、真っ直ぐオルティマの目を見て話しかけてくる。
「わたち……」
一瞬躊躇ったが、名前だけなら問題ないだろうと正直に話した。
「わたちはオルティマ」
「オルティマちゃんかー、いい名前じゃないか!可愛いし大人になった時が楽しみだな!」
アルスは本気で褒めてくれていた。
「な?マリス、シルフ、そう思うだろ?」
「まぁ、確かに可愛いかも......」
「うん......」
しかし女性二人はやはりそっけなかった。
「まぁ、とりあえず宿屋に泊まって飯でも食べるか!」
そう言ってアルス達は、オルティマを連れて村の外れにある小さな宿屋へと向かった。
(やった!人間界の飯を久々にちゃんと食べれる!!)
オルティマの頭の中は飯のことでいっぱいだった。
「ごはん!ごはん!」
「ごはん!ごはん!」
アルスの掛け声と重なり、傍から見れば家族のようにも見えるかもしれない。
「やっほー!おばちゃん。今日は子供も一人追加でいけるー?」
宿屋に入ると、アルスはカウンターの前で座っていた、気の優しそうなおばちゃんに話しかけた。
「おぉ、今日は見ない子供もいるね。どうぞどうぞ、とりあえずそこのテーブルに座りなさい」
オルティマと3人はテーブルに腰掛けると、今後のことについて話し出した。
「ところで3人は、あの広い荒野でなにをしてたんでちゅか?」
「俺達は、いろんなところに行って冒険をしていたんだが、遥か上空に謎の光を確認したあと、その近くに向かうとオルティマちゃんがいたんだよ」
もしかするとオルティマは自分が人間界へやってきたのが原因なのかもしれないと心の中で思った。
だが幸い、巨大になったスラっちまでは見られてなかったようだ。
「オルティマちゃんの家はどこなの?父と母の名前は言える?」
魔法使いのマリスが話し出した。
しかし、オルティマは父と母の名前を知らない。
知ってても二人とも魔王だなんて言えない。
流石に親の名前を知らないのは変に思われるだろう。
パッと思い浮かんだ、親戚の悪魔王メレスが頭によぎる。
「ちちの名前は、メレス」
「メレス?どこかで聞いたような......」
流石にまずかっただろうか。
悪魔の王というだけで、やっぱり人間界でも、あいつは有名なのかもしれない。
オルティマは必死で話題を逸らそうと、脳をフル回転させていると、カウンターの奥から声が聞こえてきた。
「はいご飯だよー、美味しいスープもあるからゆっくり食べなー」
宿屋のおばちゃんが、タイミングよくご飯が乗った皿をテーブルに並べていく。
「う、うまそぉぉお!」
オルティマは美味しそうなご飯を見て、よだれが垂れそうになった。
するとアルスが立ち上がり、みんなの顔を見つめ出した。
「ではみんな、この食材に感謝を、そしてオルティマとの出会いに感謝を、いただきます!」
「いただきます!」
オルティマは箸を手に取り、次々と食べ物を口へと運んでいると、弓使いのシルフが話しかけてきた。
「君は何歳?」
口の中の物を、一気に飲み込み答えた。
「さんちゃい」
他3人はお互いの顔を見つめた。
一般的にお箸が正しく使えるのは5歳頃からと言われているが、3歳のオルティマはすでに大人のように指で支えて持っていた。
「やっぱり、ところどころおませさんだね」っと魔法使いのマリスが答えた。
「明日は、オルティマを家族の元へ帰すために、いろんな人に聞き込みしようと思う」
アルスはとても優しい。
イケメンなのはムカつくが、この優しさにマリスやシルフもやっぱり彼に惚れているのかもしれない。
(たぶんそんな気がする)
_______
食事が終わり、それぞれの自室へ案内されたあと、オルティマはすっかり暗くなった窓の外を静かに眺めていた。
「ゴブリン達、心配してるかな?」
独り言で喋ったつもりが、ずっと黙っていたスラっちが答えた。
「そうだね、でもこれも強くなるためだよ!」
そうだ、私は強くならないといけない。
ここまで育ててくれたゴブリンや魔界のみんなを守るために。
オルティマは部屋の明かりを消そうと、ローソクに近づいた。
すると突然、部屋のドアからコンッコンと2回ノックがした。
(誰だろうか?)
オルティマは、ジャンプしてドアノブを回すと、そこには見知らぬ男性が立っていた。
30代後半、純白のマントを羽織り、腰には一本の美しい剣を携えている。
しかし冷徹で冷酷な表情、その瞳には悍ましい殺戮衝動を感じさせた。
「お前……魔王だな?」
次の瞬間、宿屋を巻き込むほどの謎のハリケーンを発生させた。
恐る恐る目を開けると、宿屋は粉々になり、スラっちはオルティマを覆って、ハリケーンによるダメージを防いでくれていた。
「な、なになになに!?」
「オルティマ!!逃げて!だめだ」
何が起きたのか全く理解できないオルティマに、スラっちは必死でこの場から逃げるよう呼びかける。
しかしスラっちの魔力が尽きたのか、元の簪へと戻ってしまった。
「スラっち!!」
スラっちからの返事はなかった。
宿屋は跡形もない。
もしかすると、冒険者達が嵌めたのだろうか。
いや今はそんなことを考えている場合ではない。
(くそっ!魔力もまだ回復してないし、なんで魔王ってバレたんだ?)
ハリケーンが徐々に弱まり、地に足がつくと、謎の男がオルティマの方へゆっくり歩いてきた。
「久方ぶりの魔王だ。もっと強くなったお前と戦いたかったが……」
その圧倒的な威圧感、ドスが効いたその低音ボイスは、まるで全てを破壊し尽くさんとする、嵐のようだ。
「な、何者だ!なんでわたちが魔王ってわかったんだ!」
「我は、剣聖ゼクトリア・ジ・バーン、鑑定スキルでお前のステータスを見たのさ」
(あぁwこいつ絶対チートだろ)
剣聖ゼクトリアは腰に携えた剣を抜いた。
キュィィィィイイイイイイン!
剣を抜くのと同時に、謎の光が解き放たれた。
「終わりだ、魔王の生き残りよ」
(くっ!!)
次の瞬間、剣聖ゼクトリアの剣の光が、オルティマを包み込んだ。
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