holiday 第百八十二話 誰だ
マリアが流れるように瓶を投げた。
N「もう一度石灰水よ」。
カイが腕をバネにその瓶を割ける。
割れた瓶から流れる液体がが焼くような音とともに煙をあげる。
N「もう一度斬り合ってみる?」
カイ(今度はなんだ?爆発か、液体か?)
爪が真っ直ぐと突き出される。
カイ(いや、何もない!)。
カイが口から手に竿を持ち替え突こうとするが遅い。
カイの腹に爪が立つ。
一気に腹の奥へとめり込む。
N「腹を抉るとヤバいよ」。
爪が右へ捻られる。
その時、カイが捻られらであろう方向に腕を使い回転したのだ。
回転する方向に釣竿がマリアのコメカミがぶつかるがそれは簡単に流される。
カイは腹から捻られた痛みを感じた。
マリアは全く捻っていなかったのだ。
N「自分から傷抉るなんて馬鹿だね」。
カイの腹は切り傷を超え穴となっていた。
カイの顔から色が消えてゆく。
N(今度こそこそやってやる!)
そう言ったマリアは爪を頭へ撃ち抜こうとするが腹から爪が動かない。
目を凝らすと腕に糸が巻き付かれていた。
カイはマリアの頭に竿をぶつけた時、糸を腕へ投げていたのだ。
それも関節部分だ。
糸が下へと張り関節とは全く違う方向へと引っ張られる。
マリアの腕が糸の力により下へ曲がった。
カイが折れた腕へと走る。
カイが釣竿をマリアのコメカミに刺そうとする。
だが折れたはずの腕が戻った。
N(攻撃が少ない方への接近)。
(それはテンプレなのよ)。
カイの目の前に爪が迫る。
カイ(これは刺さったら死ぬ!)
(死ぬぐらいなら死んでも止めてやる!)
爪がカイを貫通した。
だが刺さったのは頭ではなかった。
腕だった。
そして筋肉が潰れ切られる感触を噛み締めながらも爪を締め上げる。
カイ「誰かさんがやってたやつだぜ」。
腕から血が滲む。
N(生身の腕を犠牲に)。
(どこまでユネルコを舐めやがって)
マリア「この死に損ないめ!」
その声はもはや声ではなく別の何かが取り憑いたかのような咆哮だった。
もう一方の腕を上げた。
(視界を消してやるわ)。
懐から小型のライトが見える。
だが懐から抜かれる前に替えの糸が手から放たれた。
糸に付く針はマリアの手が避けたが故ライトを離した。
N「いい加減にしなさいよ!」
その手がそのまま再びカイへ飛ぶ。
カイがそれを竿で受けた。
竿と爪が接触した瞬間、爪の突きが休むことなく放たれる。竿は受け続ける他ない。斬撃の最中、竿は指と指の間に埋めるように入ったのだ。
カイ(この野郎。いまだに器用か)。
二本の指が左右に捻り釣竿が折られた。
竿につく糸と針が宙を舞った。
カイ(生命線が..)
(蹴りももう片足が死に使えねぇ)。
(っていや使えるじゃねぇか)。
その時、カイの死んだ足が浮いた。
N「まじかよ」
残りの片足を軸に体が大きく横に倒れた。
バランスなんてもうない。
こんなもん蹴りで傾きすぐ倒れる。
カイ(二手はねぇ。これで終わらす!)
その思いが足を飛ばすのにこれ以上ないほどの条件だ。
N(なんだこいつは。これ以上は斬り合えない)。
(だが避けてしまえば..)。
死の間際に放たれた鬼の銀閃がマリアの頭を正確に撃ち抜いた。
いや撃ち抜いてなどいなかった。
マリアがバックステップで避けたのだ。
カイが支えるものを失いバランスを崩した。
だが
カイ「悪い。やっぱ終われねぇわ!」
穴のできた腕を地面につけて掌で地面を蹴り抜いたのだ。
腕の穴から噴き出す血すらもエンジンに見立ててカイがマリアへ飛びついた。
もう片腕しか頼れるものはない。
正真正銘の切り捨てだ。
マリア(これも避けるしかない!)
マリアが横へ飛ぼうとしたその時、
マリアの腹が突っ張った。
マリアの動きがコンマ数秒止まった。
N(あ、これ、ダメなやつだ)
マリア(お兄ちゃん。助けて..)
折れた竿を片手に腕を上げる。
そして
折れた竿がマリアの半身を切り裂いた。
マリアの体から血飛沫が舞う。
マリアが後ろから倒れた。
彼女から白い吐息が目立った。
カイも勢い余った腕に引っ張られ地面へ叩きつけられた。
死んだ片足は最早感覚そのものが消えている。
鬼の形相だった彼の顔が冷たくなる。




