holiday 第百六十八話 下弦月
カイが釣竿を投げかける。
桃怪「カイ、合わせて頂戴」。
その右往左往する糸に桃怪が脅威的な跳躍で糸を掴む。糸をロープウェイ代わりにアジトの周りを大胆に宙を駆ける。
それにギルドの目が取られる。
ギルドがその糸を掴もうとするもマンティスが苦無を投げ、鈴木もギルドの頭部を蹴りそれを阻む。
横小路(こっちも忘れずに)。
横小路が鎖を放る。
その鎖はギルドの足に纏わりつく。
ギルド「幼虫が吐く糸をどう使うんだい?」
ギルドが足を隆起させ、鎖を軋ませる。
トラが鎖の横に来る。
すると横小路にタオルを渡しそれを鎖越しに持たせる。
両手に持ったチャクラムで鎖を切るように無数の連撃を放つ。
鎖は金属同士が擦れ合う摩擦により徐々に赤みを帯びていく。
その鎖が真っ赤に染まった時、鎖が急激に熱くなる。
熱の鎖に絡まるギルドは急な温度の変化によりその足を浮かせる。
トラがチャクラムを投げ駆ける桃怪は舞うチャクラムを鎌にかける。
桃怪が糸を離し片足でバランスを取ろうよしたことにより無防備となってしまったギルドの腕へと落下する。
鋭い斬撃に勢いが合わさる。鎌はギルドの腕は深々と入った。
だがギルドはものともせず腕を一周させ落下直後で体勢が不安定な桃怪へと向かう。
だが桃怪は不自然な軌道でその腕は空を切る。
桃怪は服に掛かっている針を取り投げ、カイが糸ごとキャッチする。
ギルド(あの釣竿のガキ。マジで腹立つな)。
ギルドがカイの方向へ真っ直ぐと走り出し、その拳を振り上げる。
カイは避けようとするも間に合わない。
だが両サイドにそれぞれフレックサーとタナカが割
タナカがカイを抱え逃れる。
ギルドはタナカに拳を思いっきりぶつけた。
はずだったが殴ったのは虚空だった。
フレックサー(お主よ目でも悪いのか)。
フレックサーがギルドの顔面を手刀で突く。
だがギルドは首の筋肉を隆起させ体重の乗ったフレックサーの手をフレックサーごと押し退けた
首と頭が轟音を鳴らして振りかぶる。
フレックサーは彼の胸を蹴り避けるも服は裂け腹の皮が旋風により消しとばされる。
ギルドが片足を上げもの凄い勢いで地面を踏み締める。
桃怪は瞬時にギルドがすることを理解してフレックサー共に跳ぶ。
床は歪み
自身の足に巻きついていた部分の鎖がガラスが割れるかのようにバラバラとなる。
歪み終わりに着地したフレックサーはバックステップを取りその隙間から桃怪が出てくる。
縦横無尽に二丁の鎌と千手がギルドを惑わす。
ギルドの肉体が削られ痣ができる中、ギルドはもう一度拳を振り上げる。
2人は再び跳ぼうとしていた。
マンティス(こいつ、地面を殴る気がねぇ)。
(まさかフェイントか?)
マンティス「跳ぶなーー!!」
フレックサーはその言葉で踏みとどまるものの、桃怪はすでに跳躍を始めていた。
その時、ギルドの拳が桃怪を襲う。
流れる糸が桃怪とギルドの間を遮る
ギルドはその糸を掴み下に投げる。
竿を持っていたカイの足が浮き吹き飛ばされる。
糸を投げる動作により桃怪は着地し逃れることが出来た。
だがそれでもギルドの小指が掠り太腿の筋肉が潰れる。
桃怪が太腿を抑えギルドから距離を離そうとする。
だがギルドはそれを許さず桃怪へ走っていく。
マンティスが滑るようにギルドの行手を阻む。
刀を一度鞘に納め、ギルドに向かい鬼速の抜刀を放つ。だがその抜刀がなかったかのようにマンティスをタックルで吹き飛ばす。
マンティスは受け身を取るも桃怪から大きく距離を離してしまった。
マンティス(チッ。俺の刀に力だけでヒビを入れるとは)。
桃怪「それで十分なんだよね」。
桃怪が鎌を投げる。
それは原型が見えないほどに速く回転しそれがギルドへ襲いかかる。
その鎌は綺麗に刃がギルドの腹へ突き刺さる。
ギルドは腹に鎌を生やしながら走り続ける。
その時、鈴木が宙に浮いてギルドの顔面へ迫る。
その手の先は鎖で横小路とトラが振り上げている。
鈴木の蹴りがギルドの鼻先へと命中し、鼻をへし折る。
鎖は通り過ぎ鈴木が手を離して着地する。
その時、着地した直後の鈴木の真下から蹴りが迫る。
トラが鈴木を引っ張りその蹴りは空を切るも鈴木の腕に蹴りが掠る。
途端に鈴木の腕が弾かれ折れる鈍い音が何度も聞こえる。
腕は手首から肩までいくつも直角にジグザグと曲がっている。
それを見た鈴木とトラの目は黒目が異様に小さくなる。
鈴木「イテーじゃねぇかこの野郎」。
トラ(掠っただけとはいえ本来なら彼はいまので死んでる筈。ダメージの蓄積に加え呼吸がし辛い分、出力は低下してきてる)。
トラ(このまま攻め続ける!)
鈴木がその腕をものともせずギルドへ立ち向かう。
鈴木の横からチャクラムが通り過ぎ交差してギルドのコメカミへと向かう。
鈴木が蹴りを放つ。それは常人なら内臓はいくつも破裂する。だがギルドは避けも防御もせず腹で完全に受け止めた。
さらに両のチャクラムも首を回して飛ぶ勢い殺して落下させた。
ギルド「無力な子犬はよく吠えるのぉ」。
ギルドが拳を振るう。
だがタナカが横から迫る。
ギルドの後頭部へと飛び蹴りを放とうとした。
だがギルドは突如タナカの方を振り向き跳躍して腹でで蹴りを受け止めたのだ。
タナカの足に空気の槍が集まりギルドの腹から背中に風穴を開ける。
だがギルドという壁に直撃したことにより横に向いていたタナカの体が縦となり腹がガラ空き。
そこにギルドの拳が飛び、腹に打たれる。
タナカは空気を腹に纏い拳の速度を包んだものの威力は強烈。
タナカの内臓が潰れた。
タナカは後退し回復を図ろうとした。
その時、タナカはそこで膝をつき目がうつろとなってしまった。
タナカ(クソッ。ここが限界だったか)。
タナカが崩れ落ちて倒れた。
フレックサー「タナカーー!!」
マンティス「このクソ野郎め!」
マンティスの眼が異常なほど赤くなり
走り出した。
そこには赤以外の何が映ったのだろうか。
ギルドの拳がマンティスの目の前に飛んだ。
マンティスはその拳を避けた。
だがそこから動かなかった。
刀から重みを感じる。
そこには刀を掴むギルドの姿があった。
ギルドは細枝を折るかのようにマンティスの刀を折り更にその刀が粉々に砕けた。
マンティスは小刀を抜いて刺突を無数に繰り出す。
ギルドがその小刀を振り払いマンティスの手から小刀が離れる。
もう一方の腕でマンティスを殴りかかる。
それでもマンティスは横に躱そうとするも片目の横を拳が通り過ぎた。
その時、マンティスの目が裂けた。
カイ「マンティスさん!」
熱湯をかけられたような痛みが目に広がる。
視界は真っ黒でも同時に目から苦悶の温かさが滲み出る。
フレックサーがよろめくマンティスを抱え
ギルドから逃れる。
横小路「一体今のやりとりで何が起こったのだ?」。
横小路(ここは地獄と呼ぶには相応しいどころかそれでも甘いぐらいだ)。
(こんな奴見たこともねぇよ)。
横小路の手から鎖が離れ落ちる。
鈴木がぐしゃぐしゃとなった腕を抱える。
ギルドがフレックサーの方を見てこれ以上ないほどに濁った笑みを浮かべる。
トラ(怖い。あまりにも怖すぎるよ。俺、やっぱここに来れる器じゃなかったのか?)
(理論上でも、こいつを上回れる見込みなんてない)。
(もういっそのこと逝かないといけないのか)。
その時、トラの脳裏にはかつての母が映った。
その幻惑でもある母はギルドへと重なったのだ。
ギルドはマンティスを抱えるフレックサーを見逃すほど仏でもなんでもない。
ギルドが床を殴り
フレックサーは跳躍が間に合わず床の波に呑まれてしまった。
すでにフレックサー達の目の前に来ていた。
体勢を崩したフレックサーに救いなどはない。
ギルド「多分あとはお前が死ねばほぼ終わりだろ?」
ギルドが拳をゆっくりと上がる。
その拳が眼前に迫る時、ギルドの腕に何かが刺さり、腕が止まる。
その腕の下には鎌が刺さっている。鎌の横にいたのは桃怪だ。
ギルド「こんなものなんの意味g」
ギルドの腕が動かなくなった。
桃怪の後ろには針が掛かり、その糸は上にある天井の柱から直角に山のような形で引っ掛けられていた。
その竿をカイが持つ。
カイの横に鈴木も付く。
カイ(この竿に己の炎を撃ち抜く!)。
カイ 鈴木「おりゃーー!!」
糸の力も加わり桃怪も下から上へ腕を持ち上げる。
桃怪の腕から悲鳴が聞こえるのも気にせず腕に集中する。
その時、ギルドの腕が大きく切り裂かれ足も腕につられて浮いたのだ。
その間にフレックサーとマンティスは手刀と斬撃でギルドの空いた首を撃ち抜こうとする。
フレックサー「これでしまいじゃ」。
マンティス「地獄でもまた切り刻んでやる」。
トラの目に光が戻りこれまでになく輝く。
鈴木「いけーー!!」
ギルドの惨劇はいよいよ閉幕となる
ことはなかった。
ギルドは刀の破片を豪速で投擲し糸がかかる天井を粉々にしたのだ。
カイと鈴木は緊張していた糸が緩んだことで前に倒れた。
自由となったギルドは即座に首を引き二つの攻撃を顎で受けた。
直後倒れたカイの方は向かい走り出す。
ギルド「お前本当に邪魔なんだよ」。
その怪しく光る拳はカイには到底避けれるものではなかった。
これを受けたら待っているのは虚無。
それを身に染みり出した頃...
カイ「...え?」
カイの方へ走るもう一方の人影が見えた。
その影の正体はトラだった。
彼は憂うことを知らずにもう飛び出していたのだ。
トラがカイの前に立ち、両手を広げる。
その体は激しく震えていた。




