holiday 第百六十五話 水面下に立とう
ガイア(爆発した場所は確かこちらか)
(場所はホープ・ファミリーとは密かに聞いていた。)。
(その曲者、打ち落としてやろう)
(家族を守る柱として)。
日が沈む頃、黒塗りのワゴンが道路を何一つ違和感なく走っている。
だがその中は人が立ち入ることは死を意味するかのようなオーラが篭っている。
後ろの席にウィビランと漏電が顔を合わせずに座っている。
ウィビラン「時に漏電。人が人でなくなる時、それはどんな時だ?」
漏電「己の立場に揺らぎを持つこと。とでも思わせ奉る」。
ウィビラン「その解は果たしてどこまで続くのだろうか」。
漏電「...ウィビラン様。例えどの解になろうとも私は泥を啜ることを辞さない所存で候」
ウィビラン「漏電。コードネームが似合ってないじゃないか」。
漏電「似合うか似合わんかも分からない。それが漏電たる所以です」。
歩道に一人の男が立つ。
その男はゆっくりと体を捻る。
体を戻す勢いで尖ったものを投げる。
それは正確無比にタイヤへとつき、深々と突き刺す。
突然、車が急停止し、慣性により後輪が浮く。
ウィビランと漏電が車から出る。
ウィビラン「ガイア。やめ時を逃してしまったようね」。
ガイアは一歩も動かずそこに立ち続ける。
漏電「ウィビラン様。彼をこんな愚息にしてしまった儂が一番の馬鹿」。
漏電「どうかここは私にお任せできませんか?」
ウィビラン「分かった。先に行かせてもらおう」。
ガイア「漏電。そこを退いてくれないか」。
「俺は妻と話がしたいのだ」。
漏電「私となぜ話そうとする」。
突然漏電の腕が光る。
ガイアは瞬時に身を捻る。
ガイアの後ろには大破した壁。
その中心に弾丸がめり込んでいた。
漏電「お主は現象と会話でもしたいのか?」
ガイアが閃光と化し漏電の目の前に身を置く。
ガイアが漏電を掴みにかかる。
漏電が銃を下に撃ち、宙に浮きそれを回避する。
ガイアの目の前に弾丸が放射される。
だがその弾は突然消え、真下から飛ぶように再度豪速でガイアへと向かう。
ガイアはそれすら躱して見せるも頬が裂ける。
漏電(これを躱すとは流石は私の息子)。
漏電(だがそんなものは常識もいいところ)。
漏電が再び銃を放つ。
だがそれはガイアを狙わず当たるのは壁。
その時、弾丸に意思が芽生えるかのような跳弾が始まる。
羽虫が飛ぶかのような轟音で壁から壁、壁から床、床から壁へと弾丸は走り回る。
その弾は容易に軌跡を描く。
ガイアはそのレーザーを避け続ける。
漏電「死になされ未熟の者」。
漏電が何発も弾を撃つ。
その弾全てが独立して飛び交う。
壁には数えきれぬ程の弾痕が生まれ、それはいまだに増え続ける。
ガイアの回避は一層速くなる。
ガイア(このまま避け続けたら危険だ。親父には少しわかってもらわねば)。
ガイアは地面を蹴り上げ、それによってマンホールの蓋が宙に浮く。
そのマンホールを掴む。
ガイアは血に飢えた弾丸をマンホールの縁で振りかぶり落とす。
ガイアがマンホールを片手に漏電を睨む。
マンホールを漏電に向けて飛ぶように迫る。
漏電「ウマの耳に念仏。猫に小判。悪あがきだとしても悪手が過ぎるぞ」。
漏電の銃が光る。
その一発でマンホールは原型を無くすほどに粉々となった。
だがそこにガイアの姿はない。
漏電(あやつ。どこに行った)。
その時、漏電の横から礫が飛び出す
漏電「そこかーー!!」
漏電がその礫を正確に破裂させ、発射元であった窓毎撃ち抜く。
だがガイアはその反対方向で漏電に狙いを定めていた。
ガイア「漏電は誰にでも起こり得るもの」。
ガイアはマンホールを持って漏電へ向かう際、
地面を蹴り完全に地面と水平に飛行するかのように跳んだのだ。
そしてマンホールが砕ける前に漏電の真上へマンホールを踏み台に飛んだのだ。
漏電がすかさず銃口を向けるがガイアが手首を掴み、
枝を折るかのように手首を真下に曲げる。
漏電の手から銃が落とされる。
漏電「...やはり甘い」。
死んだはずの銃が火を噴いたのだ。
漏電は残された手でコインを投げ、落ちた銃の持ち手へそれが当たり、そのコインは跳弾でトリガーに当たる。
放たれた弾丸はガイアの頭をのけ反らせる。
漏電「殺戮一家として貴様は不足も不足だった」。
その時、ガイアののけ反った頭が漏電の額へ飛ぶ。
漏電の額が割れ、勢いに呑まれ吹き飛ばされる。
頭は人体の中でも重い部類。
それに勢いが合わさればその衝撃は決して小さくはならない。
漏電が地面に叩かれる。
背骨が悲鳴を上げる間もなくひしゃげる音を漏電自身耳にする。
ガイアがマンホールの破片を捨てる。
ガイア「親父。火災に洪水、雷雨と言った災害というものは結局地球が生み出した奇跡」。
「災害の親の親である俺に勝つ道理など始めから存在しないのだ」。
その時、漏電の目には先刻の穏やかな息子には到底映らなかった。
まるで厄災にでも遭っているかのような感覚。
というより厄災そのものに呑まれている。
漏電「そうか。そうかもしれぬな」。
漏電が地面に尻を取られながらも薄笑いは消えない。
漏電「なら最初で最後の親不孝者にでもなろうじゃないか!」
漏電は明後日の方向に銃を向ける。
その先はなんと遠くから歩いてくる子供だった。
その狂弾は子供へと向かう。
その時、子供は大きな影に入っていた。
子供が顔を見上げると男の顔が映る。
ガイア「申し訳ないが少し目を瞑って止まっていてくれるか?」
ガイアの背中には弾丸がめり込み、血が垂れていた。
子供は何がなんだかわからずに目を閉じる。
ガイア「親父。今のは間違いであると言ってくれ」。
ガイアの目が赤く煜る。
首筋から血管が浮き出る。
次の瞬間、ガイアは漏電の背後にに回り込み
腕を首に持っていく
もう一方の腕は漏電の頭に付く。
その時には漏電の首が真反対に曲がっていた。
漏電は浄瑠璃が終わった人形の如く頭から落ちる。
ガイア「もう大丈夫。開けていいよ」。
子供はゆっくりと眼を開ける。
ガイア「今日は少し大回りしてくれるか?」
子供がきょとんとした顔で別の道から去っていく。
ガイア「命の重みを知らずに仕事をするとは未熟もいいところ」。
ガイアの瞳から水滴が溢れる。
ガイア(妻よ。待っててくれ)
漏電を抜け、再び彼は駆け出していく。




