holiday 第百六十四話 日照る
矢を射ぬ者に課せられた重きもの。
表は紐、裏もまた紐。
いざ紡ぐとなるとまかりとおらぬ理。
カーミが小玉を空高く舞い上がらせる。
桃怪(今度はガソリンか、火炎か。)
それはグチのほうへ落ちていく。
(グチを確実に締めたいなら火炎のはず)。
桃怪が鎌で空に舞う小玉を斬りつける。
そのコンマ数秒でグチも小玉の雨から抜け出す。
しかし中から出てきたのは火薬だった。
桃怪は咄嗟に鎌を向けるも鎌ごと腕が弾かれる。
カーミ(中途半端な技の開示は却って相手を陥れれる)。
(それだけと決めつけてしまうからね)。
カーミの下からグチが跳躍する。
グチが下からアッパーを決めるも
カーミが火炎の煙でそれを狂わす。
空ぶった拳の前に現れた桃怪が至近距離から鎌のトグロを巻く。
火薬を受けた腕は皮膚が爆ぜ、焼け爛れている。
だが彼女の動きにこれ一つの変化もなく変幻自在で凄まじい速さの斬撃を繰り出す。
さらにグチの拳も直線的に何度も放たれる。
カーミ(なんだこの乱撃は。まるで地獄の業火と激流の竜巻の両方を描けと言われているような大きい圧力)。
彼女にプレッシャーと乱れるペースを与える。
カーミに何一つの動作もさせないと言わんばかりに肉が削がれていく。
だがカーミの口から潰れる音が聞こえた。
その直後に口から何かが勢いよく噴きだされる。
その正体は火炎だ。
だが桃怪の凄まじい斬撃とグチの拳を振るい上げる勢いが合わさり、火炎はかき消される。
だがそこにカーミの姿はなかった。
その瞬間、グチは背後から冷たいものを感じる。
振り向き様にそのものを殴りつけるもとそこには何もない。
殴りにかかったことで出来た隙間にカーミが入り込む。
カーミがバーナーをグチに向けて射出する。
桃怪「グチ!」
グチはガソリン塗れ。
空白なく瞬く間に火だるまとなる。
カーミ「どう?声帯も焼き切れて声も出せないでしょ」。
カーミが小玉を出すも
桃怪がグチを蹴り上げカーミから離す。
グチは力なく吹き飛び倒れ込む。
だがそれにより桃怪に小玉が当たる。
小玉から液体が飛び出す。
桃怪はそれにかかってしまう。
カーミ「さてと、そろそろ焼き上げるか」。
カーミが黒いグローブをつけ、そこに火をつける。
するとカーミの手が燃え上がる。
カーミが炎の手で桃怪を殴りにかかる。
咄嗟に避けるも髪に炎が移る。
桃怪は鎌で火で染まる前に髪を切り落とす。
桃怪(こいつは大変だ。回避に専念してグチが起きるのをを待つか..)
桃怪の顔色が冷める
(いや、ごめん。それは違うな)。
だが再び熱を取り戻す。
桃怪がカーミの前に迫る。
カーミの拳を真正面からの迎え撃つ。
放たれる火炎弾を前に桃怪は鎌を下に構える。
桃怪(ここが私の分かれ道。熱に飲み込まれるか熱を飲み込むか)。
拳はもう目前。視界は拳に収まっていっても尚、
桃怪は構えの姿勢を崩さない。
彼女の火はまだまだ昇り続ける。
桃怪(ここだ!)
その刹那、腕が引っ張られるかのように上げられ、鎌が光る。
その鎌は空を超越し、大気圏にまで届く程の勢い。
拳は桃怪に紙一枚よりも薄い距離にまで近づいた瞬間、真下に落ちていく。
斬って炎を纏った鎌は紅く燃え盛り、火の粉が舞い降りる。
その火柱は忘れることなどできないだろう。
その時、桃怪は腹に鋭い痛みを感じ、血を吐く。
カーミはそこではくたばらない。
残った腕でナイフを取り出して桃怪の腹を抉りにかかる。
桃怪「私の同志を忘れてない?」。
カーミ「!?」
カーミが反射的に後ろを振り向く。
だがそこには誰もいない。
グチ「俺はここだぜ!」
グチが桃怪の上を跳躍し、日を背景に拳を構える。
グチの一撃はカーミの顔面に芯の芯まで入り込む。
グチがそのまま振るい上げるカーミを地面へと落雷の如く落とし込む。
その勢いは止まることを知らず床まで破壊した。
嘲る炎の全てを消しとばした
桃怪「私たちの熱とお前の熱。飲み込まれるのはいつだって弱い炎」。
桃怪「私達は絶対に燃え尽きない。どこまでも明るい炎であり続けるさ」。
グチがその場に大の字倒れ込む。
グチ「桃怪すまん。ちょっと寝るわ」。
グチの目が全くと言っていいほど焦点があっていない。
グチはそのまま意識を手放す。
立ち上がる煙を背中に、桃怪はグチを抱え運び出す。




