holiday 第百二十三話 舞え
カイが持ち前の釣竿で植物に応戦する。飛び出した針はノウミンソウを突き刺すかに思えた。
それは奴の隣に突き刺さる。
カイ「どっこっいしょー!」
地面をノウミンソウごと抉り取り奴を横に倒す。
カイは釣竿を持ったままノウミンソウに向かい走り出す。
カイ「お前の最大の武器を折る」。
カイは奴の茎を掴む。
そして完全に折り曲げた。
だが奴は瞬時に折れた茎を戻しその勢いで刃を振るう。
光る刃を避けるも胸が切り裂かれる。
カイは一度離れ釣竿を構える。
その横にはすでにタナカがいた。
カイ(なんだ?さっきまで車の前にいたよな)。
タナカ「カイ。君は攻撃の瞬間まで炎を塞ぎ最大出力の時にそれを放つ」。
「とても上出来だけど火は表面から焼くのでは効率が悪い」。
「肉を食べるときも表面だけ焼かれてもおいしくないだろ」。
カイ「なるほど。流石死体を喰っているだけあるね」
タナカ「褒め言葉として受け取っとくわ」。
カイ(そうだな。表面だけでは物足りない奴なんてザラにいる。ユネルコだってそう。あんな肉体を外だけで焼き切るなんて不可能だ。炎を外にだすのではなく中から焼いていくんだ)。
カイは炎を体から釣竿にまで封じ込めそれは一本の柱となる。
カイ(そして植物の動き。感情が完全にないから非常に読みにくい。俺たちも気配消しや殺気を誤魔化す技術は確立してきたが攻撃そのものを無にするのは困難)。
(だが常に覆うことは可能だ)。
そうして繋ぐ糸はノウミンソウに巻きつき一瞬刃を拘束した。
そしてカイは再び走る。そして植物の首ともいえる根を抉れている土から掴む。
自分のこもった熱を別のものに流し込む。
それにより相手は先刻以上の強烈な火傷を負うのだ。
植物は根を折られ引き千切られその刃を地に伏せるのだった。
その姿を見てカイは正座をし、両手を握りしめる。その目はさっきまで死闘を交わした者に向けるものとは程遠い深い慈愛と謝罪に満ちたものだった。
その後ろから何かが生えてくる。
それは向けているカイを狙う。
だがそれが届くことはなかった。
その刃はまるでなかったかのように消え失せていた。
タナカ「だめじゃないか。終わったと勝手に思っちゃ」
カイ「あ、すみません」。
タナカ「でも君には俺の本気を見せる価値があると見た」。
タナカはすでに何かを抜いていた。
それは剣に見えたが刃はなく代わりに先端が異様に尖ったものだ。
カイ(ん?これ、トラから聞いたレイピアってやつじゃね?)
その姿を見た次のコマではタナカは植物の前を通り過ぎていた。
そして遅れて植物は粉々に切り刻まられ火の粉のように舞い天へ昇るのだった。
カイは何がどう起こったのかを言語化するのを不可能だと直感した。
タナカは火の粉の一つを取り握りしめる。
タナカ「…このノウミンソウはな、俺の国が原産国なんだ」。
カイ「え、そうなんですか」。
タナカ「俺の国ではな彼が種を出すときその子がよく育つように周囲の土の栄養を非常に高くしてくれるんだ」。
「農民の草ということでノウミンソウとなったんががこっちでは…」。
手に含めた火の粉を再び舞い上がらせる。
「全く。世の中って皮肉なもんだな」。
言葉とは裏腹にタナカの目に世の中、そしてこの国に対する負の感情は含まれていなかった。




