古代の残骸
「古代の残骸、この世界の歴史は解読されている。真聖十一文字の読み方となぜ真聖十一文字が新聖十一文字足り得たのか、それ以外は」
プロジェクターに映し出される文字。十一文字。
РасАзиников
これが太陽神ラー、真聖十一文字。フランス語ならまだしもロシア語となると読めない。
「こっからアルファベットになる」
映像の切り替わり、流れる文字。
科学者であり、神。我が主に注ぐ。エンリル=エアバニ。
エンリル、アヌンナキ=エンリル。セトと同じ魂を持つアヌンナキ。
「アトランティスは脱出船だ。地球からの。そして後に人間は身体を入れ替え、アヌンナキとなる」
ここは想像通り、かもしれない。実際アトランティスが人間の船ってのは想像通りだし。
「なんで脱出したんです?地球から」
「その記録はここにはない。ここにあるのは…‥そうだな。ドキュメンタリーさ。アヌンナキがどうやってこの星に逃れたのかって」
映像、スーツを着た真っ白い巨人達の会議。円形のテーブルに八人が座って、その中央に人間が居る。長い髭を生やし、いかにも神様のような感じだった。
「アヌンナキの中で最も富んだ資産家達、この七人は全員家族さ」
全員家族、つまり僕のことを兄弟って言って来たセトは意外にも正解では合ったんだな。
「しかし子供と親が違うように、この七人は全く別の思考と思想を持っていた。特にエンリルとニンフルサグ」
セトの魂とカペラさんの魂だ。
「エンリルはラーの思想に同調出来なかった。人はパンによって生かされているのではないという思想を理解しつつも、それがパンをやらない理由にはならないと思っていた」
つまり……どういう事だ?
「要は過保護なのさ、エンリルは。星の寿命が尽き、地球に戻ろうと、新しい魂の身体たる人間に制御装置を取り付けた。自分達の醜さを知っているからだろう」
「でもラーとニンフルサグは違った?」
「あぁ、自由意志を尊重した。人が人によって滅ぶならまたそれも選択と、ニンフルサグは権限と力を封印し、ラーは同調しなかった七人を封印した。過去に飛ばしたり、人間と同じ小さな魂に作り替えたり、魂を粉々に砕いたりしてな」
なるほど、それが僕が魂を過去に送られてって。でもセトは死の間際、僕が追放されたのではなくって言ってたよな。なら僕は過去に送ったフリをして、いざという時にこっちに呼び出すみたいな、そんな役割だったのかも。
「次に魚人や魔物。龍とコカトリスはアヌンナキ以前に造られたものだが、地上ミミズ……マンゴーデスワームや魚人はアヌンナキが造った物だ。もちろん、今を生きる私達もな」
まとめるとこうだな。
1.人類は何らかの理由によりアトランティスを用いて地球を脱出した。
2.人間である太陽神ラーが居住星に合わせた肉体、アヌンナキを造り人間の魂をそこに入れる。
3.時が経ち、アヌンナキも母性を脱出せねばならず、今度は地球に帰ることにした。
4.入れ物としてアダムやイヴ、マンゴーデスワーム、魚人、人間を造る。
5.人間の愚かな選択を恐れた最も富んだアヌンナキ7人は制御装置を人間につけるが、ラーとニンフルサグの裏切りによってアヌンナキは全員封印される。
しかしまだ色々謎はあるな。何で地球から脱出せざるを得なくなったのか、なんで魔法があるのかとか。
でもそれがなんだ。この情報、何の意味もないぞ。これを知ったからって何にもならないし何もできることないぞ。
「残骸、とは良く言ったものですね。ここまでで知った情報、今を生きる僕らの為にはならないし、貴方の言い訳の材料にもならない」
「だろうな。でも後者どうだろうか。アヌンナキよりもさらに前の時代から運用された船、命を託して星を渡った船。だからこそ期待しちまったのかもしれない」
片手で無い左目を触る彼。まるで自分を見ているようだ。
「ただ、今を生きる者には何の意味もない、ただの墓石のようなものってのは間違っている。というか君だって分かってるはずだ。否定したいから言わないだけで」
……嫌な人だ。僕の心の奥底、一瞬だけ芽生えた嫌な思考を言い当てられた。
「我が船、アトランティスを作った文明は滅びたが、人造の石油は途絶えなかった。つまり今次の文明はより効率的に発展を行える、違うか?」
「そうですよ。僕の中の仮定では、文明は滅び、次の文明がその死骸に住んでより良い死骸になる。それを繰り返す。でも嫌ですよ、こんなの」
まるでアトランティスそのものがドラゴンフォールだ。龍や鯨の死骸を利用する生き物、自分らはそれと同じだった。だからこそ、思ってしまうじゃないか、何度も滅びを繰り返す命は辛いんじゃないかって。それなら苦痛を減らすために徹底的に滅びたほうがいいかもしれないって。だってそうだろ、滅びを繰り返して、やがて必ず安寧に至れるかなんてわからないじゃないか。こんなんじゃ、僕はセトを肯定してしまう。
「しかしそうでしかなかった。純然たる事実だけが残ってる。私が負けたという事実だけが残るように。だろ?アペプ」
扉が開く。そしてその先には馴染みの男がいた。蛇の目を持つ男、アペプ・アポピスであった。
「あぁ、まじでつまらねぇ話だったぜ、今の」
アペプは左手を銃にしてホエル王を狙う。そして瞬間、ピカッとその銃身の魔力が光り、ホエル王の脳天を撃ち抜いた。その骸、もはや頭そのものが半分消えて、僕の力じゃ生き返らせれない。
「は?アペプさん、あんた何を……」
「あ?喧嘩するか?喧嘩するなら買うぜ」




