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破滅の雷




 マンジェットの医務室、僕はそこに横たわる。眩い光、光源。アイシスがそれを僕の左目に当てた。


 「シュン君、付けるよ。副作用はわかってるだろうけど」


 スビアが開く木箱、そこには目があった。そう、眼球があったのだ。半機械の。そしてその眼球からはメラメラと太陽のような魔力が漂っていた。


 「わかってる、出来だけ早くやってくれよ」


 アイシスは僕の口の中に布を放り込む。そして僕の手足を手術用の椅子に拘束した。


 「やってくれ、出来るだけ、早く!」


 背中から汗が出てシャツを滲みさせる。眩い光の中、銀の鋏やメスが輝いている。


 「ぐっ……」


 歯が砕けんばかりの力で布を噛む。痛い、痛いんだ。左目が焼けるように痛い。縫った瞼を開いてその奥に機械を取り付けているんだ。


 「ば、ばやぐ、早く……」


 「付けるよ、目」


 眼球の設定をしていたスビア。彼女の目にも焦りが見える。僕が取り乱しているというのもあるし、何よりウジャドの目はアウシルの遺産だ。アウシルの目だ。難儀するのも当然だろう。あぁくそ、痛いのに頭だけは冷静だ。


 「付けてくれ、はやく!!」


 口に血の匂いがする。歯が砕けたのか、それか左目の部分の血が口に垂れたのか。


 「わかってる、わかってるから耐えて!」


 眼球が捩じ込まれる。すると同時に熱い魔力が肉体に流れて来た。燃え盛るのような、左目に太陽が埋め込まれているような、そんな感覚。


 「アイシスちゃん、封印布!」


 赤色の布が巻かれる。冷い布だ。灼熱の太陽を冷ますような、そんな布だった。


 「くっ、はぁ……!はぁ!!」


 吐き出した布、血がびっしりと付いている。痛い、けれど峠は越えたはずだ。

 バキン!

 僕の手足を拘束する鉄の部品が砕けた。


 「取り敢えず、艦橋に急ぐ」


 「あぁもう、椅子壊して……アドレナリンドバドバなんだから」


 歩きながらアイシスに血を拭かせ、艦橋に向かった。既にマンジェットもアトランティスも天空に到達し、その上には飛龍の群れが飛んでいた。さて、あれをどうアトランティスに向けて飛ばすのか。主砲でも撃ってみるか?


 「ん……この音は……」


 巨大なアトランティス、鯨のような鳴き声をしながら不気味に空を飛んでいる。だが鳴き声以外の何かを感じる。なんだ、これ……バチバチ鳴っている?


 「バリアを全開で展開しろ!アトランティスの翼の前に張り付くんだ!」


 「へ、陛下?」


 「破滅の雷が来るぞ!あの翼は王都に向いてるんだぞ!!」


 あの船がマンジェットや、それこそトネールルミナスリュミエールと同じ機構で動いているのだとしたら、当然余剰エネルギーの放出機能だって備えている筈だ。それでいてあの船が何十万年も海の下で燻っているのだとしたら、雷の翼の規模の予想なんてつかない。


 「りょ、了解しました。ラスカエセリオン対消滅エンジン出力最大!イーリアスレーザーバリア全開!余剰出力につき、雷の翼、出ます!」


 足元からバチバチという音。この船、マンジェットもマンジェットで全くというほど本来の性能を引き出せない。表記上のスペックと比べてよくて15%悪くて5%と言ったところだ。だからメセケテッドやトネールルミナスリュミエールと同じように、雷の翼が出るレベルの出力で船を動かせば、三分ほどでエンジンが緊急停止する。


 「突っ込め!王都が消し炭になるぞ!」


 雷の翼でアトランティスの翼に突っ込む。ぶつかる直前、鼓膜を突き破る轟音と共に燦然と煌々と輝き煌めきの嵐が視界を覆い尽くした。


 「くっ……バリアーの損耗率はどうなってる!?」


 右腕で光を防御する。遮光眼鏡がなきゃまともに前を向くことすらできない。何よりこの音だ。高音も低音も全てが含まれた音。もはや何も聞こえない。


 「なんです!?」


 「バリアの損耗率を聞いてる!」


 「残り10、7、8、バリア解けます!」


 この船の防御じゃ雷の翼の拡散は防げない、僕が出てバリアを貼るか?頼む、終わってくれ……


 「バリア消失!」


 バリアの終わり、同時に音も光も消え、あたりに水蒸気が満ちた。雷の翼をバリアを使って下に逸らしたのだ。海水に高温の雷が当たってそれが蒸発して巨大な霧を作ってんだ。


 「ラスカエセリオン対消滅エンジン沈黙、重力慣性制御以外、全部切れます!」


 「雷の翼の拡散を防げた、それで上出来だ」


 船の高度が落ちてゆく。それと同時に霧も晴れていく。目の前にあるのはアトランティス、しかしそれも徐々に高度を落とし、やがて水に落ちようとしていた。


 「街のバリアが消えている……」


 幸運にもアトランティスもこちらと同じく、雷の翼の放出後はエンジンが沈黙してしまうらしく、最重要である都市のバリアがすっかり消えていた。


 「シュン君、見てあれ」


 スビアが指す方向。天空。翼竜がアトランティスに向けて飛んでいく。そうか、バリアで曲げた雷の翼が海に当たって電気分解を起こして塩素ガスの毒ガス空間を作ったんだ。それで翼竜が逃れ、アトランティスの方向に飛んでいった。


 「予言通りなら暁光って言った所だ。あとはもう、僕が突っ込むだけ……」


 その時、アトランティスから煙を纏った何かが射出された。その先端は断熱圧縮により赤く輝き、灰色の煙の尾を作って天高く雲を射抜くが如く飛んでいく。


 「核……あれを射抜く、青龍を連れて来てくれ!あれを射抜かなきゃ負けになる!」

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