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予言の人





 眠りに入る直前、今度は青龍さんに呼び出された。今日は何だろうな、良く呼び出される日だ。


 「申し訳ないねぇ、こんな深夜に呼び……」


 祈祷室、今度は絨毯と茶道具ではなく、狩衣という着物と鳥帽子を被った女性が居た。そう、青龍さんは占星術師、アトランティスでは陰陽師と呼ばらしいのだ。


 「え、パジャマださ。もっとあっただろ」


 そしてそんな彼女は眠い目を擦って祈祷室まで赴いた僕を開口一番にバカにした。


 「いや別にパジャマですよ、誰に見られる訳でもないじゃないですか」


 「全身黄色のパジャマってどんなセンスしてんだよ」


 「別にてでしょ。たまたま着慣れたのがこれなんです」


 青龍さんはため息を付き、ここに座れとジェスチャーをした。


 「さて、あらゆる困難が科学で解決する、そんな大昔の時代。ある日、氷の大地に神の奇跡と科学者の頭脳を持つ男が現れた。そしてその末裔が陰陽師って訳だ」


 「それは知ってる。それで今から何をやるんだ?」


 「予言さ。星振りが整ってる今、この瞬間ならかなり正確な予言が行える」


 そう言いながら彼女は閉じた扇子を取り出し僕の頭を叩いた。


 「祈りを捧げろ。いつもやってるように。その方が見やすい」


 雑念がない方が予言が見やすいって事だろうか。だとすると彼女の予言って僕視点の未来って事なのか?


 「良いですよ。んじゃ見ちゃってください」


 立ち上がり、太陽の布の前で十字を描く。

 ファラオ、地上における神と言えど肉体は人間。故に人間の代表として神に祈る、そんな仕事も経験済みだ。だから祈りの作法は完璧である。何より情けない話、僕自身の心の弱さは僕自身とアイシスとスビアの三人で支えきれる程小さくはなかったのである。


 「我等の太陽ラーは常に崇め称えられる。今も何時も世世に」


 祈る僕、顔の前で扇を広げてまっすぐ僕を見つめる青龍さん


 「太陽よ、我に憐れみを。太陽よ、我に憐れみを。太陽よ、我に憐れみを」


 祈りの言葉。死者に対する。


 「太陽よ、ラーよ。貴方の慈しみによって私をお赦しください。私は私の咎を知っています。私の罪は何時も私の前にあります」


 瞬間、青龍さんから鋭い魔力が溢れる。


 「見えた……」


 「ラーよ、アヌンナキよ、偉大なる星のニビル、私の救い主よ。どうか血を流した私を罪からお救いして下さい。そしてどうか、罰からはお救いならぬよう。貴方は生贄を望まない、ですから砕けた生贄の魂を貴方に捧げましょう」


 「よし、もう良い。予言が見えた」


 祈りの姿勢を解いて座る。すると彼女は再び僕の頭に扇子を突き立てて目を瞑った。


 「合戦の時、朽ちた鯨は初めて潮を吹く。しばらく空の鯨達は戸惑い空を舞う。されどその内、空の鯨は向かうべき方向を知る」


 意味がわからない。でももし、僕の仮説が正しいとすれば……この鯨ってのはドラゴンを指すんじゃないか?


 「もし、空の鯨が朽ちた鯨の上を飛ぶのなら合戦は勝つだろう。しかし、空の鯨がこちらに飛ぶのなら、この合戦は負けである……らしいよ?」


 いや、らしいよって何だよ。


 「まぁ、ありがとうございます。合戦前に色々知れたのはよかった」


 予言を聞き入れ、自分の部屋に戻る。既に二人は寝ており、起こさないように静かにベットの中に潜り込む。


 「……太陽よ、もしも貴方が私を救うのなら私は舌を高らかに貴方の栄誉を謳うでしょう」


 目的地たるアトランティスを前にして僕は中断された祈りを続けた。頭の中でさっき予言を噛み砕きながら。

 そう、さっきの予言。ここまで判断材料が整ってるのならどんな馬鹿でもわかる。あれは壇ノ浦の戦いで陰陽師、安倍晴明がしたのと同じ予言だ。つまり安倍晴明が潮の流れを読んで戦いを予想したように同じことが出来るはず。要はアトランティスにドラゴンが向かうように仕向けられればこちらが勝てるって事だ。

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