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トキヒメ



 シュン達一行が呑気に寿司を食べている中、トキヒメは大奥に侵入した。むろん、大奥に居る一人の女性として。

 そして彼女は畳の上、掛け軸の前にして協力者、大奥総取締り、福月(フクツキノ)(ツボネ)と雑談をしていた。


 「びっくりしましたよ、大奥の障子って自動ドアなんですね」


 ツボネさん、雪みたいな白い肌と長い銀髪、濁った白い目。そして腕はハルノアキラさんのように黒い鮫肌であった。しかし、何故大奥のボスたる彼女が私に協力してくれたのかは分からない。


 「えぇ、このお城は大昔にアトランティスの技術で建設されたものですから、アリコさん」


 百柳小道(モモノヤナギコミチ)有子(アリコ)、これが私の大奥での偽名らしい。いじめられないようにぱっと見箔のある名前にしてくれたんだと。


 「ドラゴンフォールですね。まるで」


 アトランティスの衛星都市、元々は7つあって、ここ海底神殿ティマイオスはオクシデントランド株式会社の管轄だった。つまりこの着物も下町の風景も全て海底神殿ティマイオスが遊園地ティマイオスランドであった時の名残なのだ。


 「恵みがあるのならそれでいいでしょう」


 ドラゴンフォール、龍の死後、その莫大な栄養を含んだ死骸が餌となり生態系を支える事。まさしく今のティマイオスだろう。

 でもその言葉は地上の、メンフィスの言葉だ。つまりツボネさんは何かを知っている。だって大奥総取締りといえど大奥の女は外には出れない。そういう世界なんだ。


 「ドラゴンフォールは地上の言葉ですよね。メンフィスの人と通じてますか?」


 彼女はふふっと笑った。


 「貴方は私を鎌にかけたつもりなんでしょうけど、私がかかりにきたんです」


 「かかったならダメじゃないですか」


 懐から手のひらサイズのボタンを取り出した。カバーを開け、私はそれを押そうとする。


 「ちょ、待って下さい。押さないでそれ。自爆スイッチとかじゃないですよね?」


 「これ押したらメンフィスのファラオがここに来てここを騒ぎを起こす手筈になっています。それで私はその隙に逃げますから」


 「待って!いったん!いったん話聞いて!」


 両手を広げて私を静止するツボネさん。なんというか、スビアさんに似ている。


 「気になったんですよ、貴方がメンフィスからこちらに来たと聞いて」


 ボタンのカバーを下ろし、着物の内側に仕舞った。なんというか、この人は悪い人じゃなさそうだと、私の直感が言ってるんだ。


 「メンフィスが気になった?それって……そういう事ですよね?え、そんな馬鹿な事なんですか?まじです?」


 「はい、そういう事なんです!」


 メンフィスの情報がここに入ってくることはほぼ無いだって海で仕切られているから。と、なると直近でメンフィスの情報、あるいはメンフィスの人間がここ大奥に入ってきたのはあれしか無い。一年前に起こった大奥地下に封印されていた宝具の強奪事件。アペプ・アポピスによる天鉄剣、天叢雲剣強奪事件である。


 「一目見てって感じですか?それとも、じっくりお話しして?」


 「そりゃもう、どっちもです。私はロマンチストですから」


 信じられない。大奥の総取締りが犯罪者であるアペプと?本当に言ってるのか?


 「ですから気になったんですよ。アペプ様の弟であるファラオ様がどのようならお人なのかと。アペプ様はつまらん話す価値もないって言って教えてくれないものですから」


 ファラオ様がアペプの弟?そんな話聞いてないけど。でも、だとしたら納得出来るかもしれない。ファラオ様の強大な力、あのアペプと繋がりがあるのなら納得出来る。そして貴族にしては妙に粗野な所も喧嘩っぽい所も。

 あの人、実は力によって王位を簒奪したのでは?前のファラオを殺して無理やり王位についた人なのでは?でもそうだとしたら、一つわからない。あの人には野心がない。せいぜい自分を愛してくれる女と幸せにやれればそれでいいかななんて思ってそうな人がファラオを殺して王位を簒奪するのか?


 「つまらない、確かに正しいかもしれません。ファラオ様はその、なんといえばいいでしょう。好きな物も嫌いな物もなさそうな人でしたから」


 「アリコさんはファラオ様の事好きにならなかったの?」


 好き?私がファラオ様を?あり得ない。確かにあの人、顔は良いし頭も良い。それでいて身長もめっちゃ高くなるらしいし、何より頼り甲斐のある人だ。あと怖い事する時に目つき悪いのも良いかも。でもそれを差し引いても、あの人には問題がある。


 「なりませんよ、だって……」

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