海底神殿ティマイオス
僕らは海底神殿ティマイオスに入った。と言っても、今いるのは下町だ。しかも今はギクニさんもトキヒメも居ない。着物と平屋、茶と墨の匂い。まるで時代劇でもやってる感覚。そんな下町をスビアとアイシスと三人で歩いている。
何故こんな休暇まがいの事をしているのか。答えは単純、ホウジョウマサツグさんが居るであろう大奥で僕らがやれる事がないからである。だって僕は男だし、スビアもアイシスも魚人離れ過ぎてすぐに注目されるだろうからね。
「それでどう?シュン。似合ってる?」
青い着物を着るアイシス。背筋はいつもピンとしてて首が長い人だからきちんと似合ってはいるが、一番似合っているって訳ではない。むしろ普段着のメンフィス衣装の方が好きかもしれない。しかしそれでも、これはこれでいいなって思う。
「似合ってると思う。僕は好きだよ」
「なんか、なんかじゃない?それ」
アイシスが着物を着ていて違和感があるってのは仕方ない。アイシスは足が長くって腰が高いんだ。それでいてウエストも細いからね。しかしそれが似合わないという意味ではない。むしろきちんと似合っている。ただ、僕が大河とかその辺をやっていた人だからちょっと違和感あるってだけで
「私は?私!」
青い着物を着ているスビア。こっちはなんか……えっちだ。スビアもスビアで腰が高くてウエストが細く、胸も大きい。とても寸胴とはかけ離れている。でもこっちもアイシスと同じで似合っている。ただなんか、えっちだと思う。胸元がちょっと開いているから。
「似合ってる、僕は好きだ。ただその、布は閉めた方がいいかもな」
一瞬胸元を見てしまい、周りを見渡す。周りの魚人も着物を着ている。タコの魚人もサメの魚人も。
「シュン君って意外とむっつりだよね」
「そりゃスビアもだろ」
ひとつ、思ったことがある。水泳って胴が長くて身体が平らなの方のが有利なんだよな、水の抵抗が少ないから。となると海を泳ぐ魚人の体型もそう進化する筈だ。胴が長く、腰が低く足が短くって。そうなると一番似合う服が着物になるよね。だからこういう文化になってんのかな、とか。
むろん、僕の簡単な想像だから間違ってるなんて事も普通にあるだろう。
「ねぇ、お腹空いた」
「んじゃ何か食べ物探すか」
幸い、この海底神殿ティマイオスで使える通貨は貰った。それがこの魚人銀貨だ。ちなみに真ん中に穴が空いている。さながら寛永通宝だな。小道具としてレプリカを何度か見たから間違いない。
「ん、んん!?見てシュン君あれ」
スビアは飾り触手と自分の腕で僕の腕を掴み、ある平屋に指差した。あれは……両替屋だろうか。
「なんか金が高い気がするの」
「高い?金が?」
木の板に建てられていた両替レートを見てみる。魚人銀貨12枚で魚人金貨1枚………高くないか?確か魚人銀貨も魚人金貨も含有量的にはメンフィスのパレルモ硬貨と変わらないよな。
「確かに。んじゃメンフィスと違って金山の金の埋蔵量が少ないんだな」
いや、そんな呑気な事言ってる場合か?だってこれ、魚人銀貨12枚をパレルモ銀貨12枚に両替して、メンフィスでパレルモ銀貨12枚とパレルモ金貨3枚を両替、こっちでパレルモ金貨3枚と魚人銀貨を両替すると魚人銀貨36枚。
結構悪いことが出来てしまう。ギクニさんと色々やる時、それこそもしも国交をするとなれば、きちんとこの辺も考えておこう。
「うわ危ないな。スビアはすごいな、嗅覚が良いって言えばいいのかな」
「まぁ、犬科だから」
自慢げに語るスビア。今ここにラムセスさんが居たら、そのような女性こそ傍に欲しいものですって言うんだろうな。実際僕もそう思う。彼女が好きってのもあるし、こういう、この人になら寄りかかられてもいいな、あるいはこの人になら寄りかかりたいなって思える人に僕は弱いんだ。
「お、あそこ入ろうぜ」
しばらく歩いて寿司を見つける。僕らはその寿司屋に入った。
味はなんだろう、普通だったけれど凄く懐かしい気持ちになった。
トキヒメは上手くやっているだろうか。




