使命ってなんだよ
「私は何処にでも居て何処にでもいないからね、ずっと君を見ていた」
ずっと見ていた……なら僕がこの人から言い渡された使命とやらを前向きにやろうとしていない事がバレていたって事?
「まずはよく頑張っていると言っておこう」
「何もしてないのによく頑張ったってどういう事?僕はその、貴方の言う所のアレ探しはやってないよ」
「うん、わかってる。それでいいんだ。だって君が探すのはアウシルのアレだからね」
アウシルさんのアレを探す!?それが僕の使命だったの!?
「付いてたって!浴びたよシャワー、一緒に」
結構デカめのものがきちんと付いてた。まさかあれをむしりとれとかそう言う話じゃないだろ。
「明日には無くなるよ。バラバラにされるんだ、彼」
は?バラバラに?アウシルさんが?は??
「稲穂を掲げる者アウシルは痩せこけた馬に乗る者セトによって殺害され、バラバラにされた後にアンニール川に流される」
アウシルさんが殺される?セトさんに?なんで……
「血を分けたのに、なんで、兄弟だよ」
打ち倒す者さんの表情も顔も色も何も変わらない。あるのはただ、布越しに見える目だけだった。
「そう決定されている、未来だ」
違うそんな事を聞いてるんじゃない、なんてセトさんがアウシルさんを殺さないといけないのかって話だ。
「まぁ兄弟での殺し合いなんてよくある事さ、それが神格の魂を持った人間でもね。肉体の方が魂よりも優位だから」
その時、眩い光が広がる。目を覚ます時が来た、この空間がそう言ってるんだ。
「最後にアドバイスをしよう。大いなるニビルの意思によって全ては決定されている。だから君はアイシスと、そしてスビアと共にあれ。シュン、君は青の……」
何も見えない、話が長いんだよこの人!重要な事を早く言ってくれないから、もう!!
「起きて!シュン!起きて!起きたら閉じ込められてたの!」
身体が揺らされている。何か、長い夢を見ていた気がする。どんな夢かはわからない。
「アイシス?」
喉が渇いている。あとなんか、背中が痛いし寒い。というか、ベットじゃないだろここ。なんか暗いし。
目を擦って周囲を見渡す。石の床と鉄の檻、水滴が落ちてポツンと高い音が聞こえる。ここは、地下牢だろうか。そうだ、カペラさんから貰った方角と自分の場所が絶対にわかる加護を使って、ここが何処なのか特定しよう。
「よっと、無理だよ。ここじゃ使えない」
いても間にか僕のでの上にある赤色の宝石、そしてその上に乗っているフンコロガシ。カペラさんだ。
「太陽か月あるいは星、どれかが見えている状況じゃないとその加護は使えないよ。まぁだから、今やるべきは脱出かな」
脱出、その為には扉か檻を壊さないと。扉の構造、外にしかノブがないタイプか、なら檻を壊してしまった方が話が早い。
「この檻は壊せないよ、少なくとも私には。びくともしなかったから」
アイシスのあの馬鹿力でなんともならなかったのか。でも物は試しだ。右目の力でやってみるか?確かアレって燃焼ってよりもエネルギーを直接ぶつける感じだから酸欠にはならない……はず。
檻の材質は……鉄っぽいけどただの鉄ではなさそう?鉄だったらアイシスの力で壊せるだろうし。まぁ一旦やるか。
「っ……しゃあ!」
右目から放たれる眩い赤色の光。短い時間でも凄まじい熱量であるので、檻はすぐに赤くなった。でも壊れてはいない。
「……シュン!凄いよ、ちょっと溶けてる!」
アイシスは僅かに溶けている檻の表面を見てそう言った。多分、僕と同じ事を考えている。
「このままやってみるよ」
小さく、1ミリくらいに収束させようそれを数秒か、数分照射すれば溶かせるはず。
「しゃあ!」
右目から放たれる眩い光は細く収束し、檻に直撃する。まるで溶断作業だ、溶接面無しの。しかしなんでこの鉄はこんなに溶けにくいんだ。この右目の力は土を瞬時に溶かして細長い穴を作ってしまうような、文字通り無に返すような力なんだ。なのにこの檻はもう2分も照射してるのにまだ半分しか溶けていない。凄まじい技術の素材だよ、どうしてこの時代にこんな物があるんだ。
「もういいよ、シュン」
ビームは徐々に細くなり消える。右目が痛い、なんかピクピクしてる感じの感覚がある。やはり長時間の照射は危険だ、失明の危険性がある。
「あとは、私が壊す!」
彼女は檻に勢いよく蹴りを加えてひん曲げた。これで檻の棒の一本が壊れたので、横の一本を壊せば……
「しゃああ!!」
再びビームが3分ほど照射される。終わった頃にはもう目が痛くて痛くて開けたもんではなかった。
「シュン、何か巻く物……ごめんねこんなのしかなくって」
檻を蹴って曲げた後、彼女は履いていた長いスカートを破って僕の頭に巻いてくれた。優しいんだ、アイシス。でも今はありがとうって丁寧に言える気分ではないかも、あまりにも目が痛い。
「ちょっと、休憩させて。2分だけでいい」
「任せなさい、私が誰だか忘れたの?」
カペラさんは突然布越しに僕の右目に止まった。
「私は進化する者、再生と生命を司る神格の出涸らし。だから痛みを抑えて治すくらいは出来る。でも無理はしないでね、治るのはあくまで自然治癒力の延長線に過ぎないから」
つまり右目の痛みは抑えるけれどしばらくは使えない、もし使えば視力の低下及び失明の危険性がさらに高まるって話か。
「ありがとう、これなら行けるよ」
ひん曲がった檻を抜けて、地下牢の階段を上る、途中警備兵が居たがそれらはアイシスがぶん殴って倒した。
木の扉から僅かに漏れた光、無理やりその扉を蹴破った先に見えたのは……
「アイシス、カペラさん、ここ……めちゃくちゃ離れてる」
何百年も前の遺跡、残っているのは柱だけ。だが何処と知らない遺跡にいるなんて事はどうでも良くて、何より重要なのはカペラさんから加護の示す場所である。ここは僕らの家があった王都から何十キロも離れた場所だ。
「この絵……」
柱に描かれた絵画。横を向いているのに正面を向いた目をしている。つまりエジプトの壁画でよく描かれるような描かれ方。そして一際目立つのはこれだ。白いローブを着た巨乳の女性、絵からも感じる高貴さが魅力的だが、何よりも特徴的な場所がある。それは頭だ。頭がフンコロガシで隠れている。あるいは頭がフンコロガシなのか。
「これ私だね」
これがカペラさんだとしたらカペラさんは人間になれるのか?そしてその姿がこの女性だとしたら、なんだろうか、ちょっとイメージ合ってるかもしれない。
「昔、私と契約してたファラオの好みが涙ほくろの目立つお姉さんだったからね、こんな格好をしたんだ。まぁこっちの方が楽だから人間の姿になる気なんて毛頭ないけどね」
涙ほくろのお姉さん……んじゃカペラさんは本当に人間の姿になることができるのか、身体も顔も。
「シュン、砂漠しかないよ」
一面砂の海、地平線の彼方まで全て砂だ。どうしてこんな場所に居るのか。何もわからない。
「おい!脱走してるぞ!!」
銀の剣を持ち鎧を着込んだ兵士、そしてその内の片方は俵のようにして何か黒い物体を持っている。あれは……人だ。




