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うんざりするよ



 再び開かれる御前会議。緊急という事で事前準備はほぼゼロであり、大臣だけでなく彼らの後ろには官僚までもが控えていた。玉座の間はあっという間に123名を収容する国会議事堂へと成り果てたのである。


 「報告させていただきます。えぇ、焼け跡には龍の足跡と同じような黒いガラスが観測されたと、そしてキノコのような黒い雲の後、黒い雨が降ったとか。ともかく、陸軍の見解としては非常重大なる時であるという総意でございます」


 陸軍のいつものあの表情はない。キセルも吹いてないし、脂汗をハンカチで拭っている。

 それもそのはず、焼け跡の特徴からして間違いなく使用された兵器はラーとアヌンナキの造った地獄の業火の兵器、古代兵器ジャハンナム。つまり、核兵器だったのだ。


 「海軍としても陸軍の意見と同意だ。まさか相手方にも同じく破壊兵器があるとは……」


 アトランティスは核戦力を保有している。つまり最初の前提、破壊兵器による脅しが効かなくなったのだ。それでいてこちらがアトランティスの場所を知らず、向こうはこちらの首都の位置を知っているとなれば喉元にナイフを突き付けられていると同じである。


 「ともかく今後の対応を決めなくてはならない。私としては早急にアトランティスの位置を特定し相互確証破壊を確立したい所だが」


 アトランティスは最初から核攻撃をしなかった。出来るはずなのに。ともかく、敵の理由なんて知らないが核攻撃出来るようになる前にこちらも向こうを破壊できますよとしなくてはならないんだ。


 「やはりファラオは聡明でいらっしゃる。海軍としても同意見です、その様子だと陸さんもそうなんだろう。ともかく、どうにかしてアトランティスを特定し破壊しなくては……」


 ラムセスは立ち上がり、資料を掲げる。そこには簡易的なアトランティスの絵が示されていた。クジラのように巨大な船、背には主砲等の防衛能力とと共にビル群が立ち並んでおり、さながら移動する都市である。


 「トキヒメ氏や捕虜の証言、そしてハルノアキラ氏の予言を元に作成したアトランティスの予想図にございます。大きさはおよそ10キロといった所でしょうか。これが海底を漂っているのです」


 「なるほど、海軍の船を総動員しつつ改修されたマンジェット、あるいはアペプ氏のメセケテッドを使えば可能でしょう」


 「海軍大臣。それはいけない。海軍の船を総動員して敵対の意思がありますよと向こうさんに示すのでは何にもならない。やるとすれば、マンジェット単艦での潜水探知だ」


 あの時ラムセスさんの前で決めた流れに持って行く。


 「よって、私はファラオとして諸君に提案する。アトランティスの捜索、潜入に関してはどうか私に一任いただけないだろうか」


 誰も異論は唱えない。皆分かっているのだ、国家存亡の危機において、最も強く最も信頼のたる人物が行くべきであると。そしてそれは僕だ。アペプは金で買えないのだから。


 「まずは諸君に感謝する。次にアトランティスの潜入に際して、万が一の事態の為に国庫から一級宝具ウジャトの目を持ち出したい。無論、その管理人たるスビア・ヌビス、アイシス・セクメィア=バスティヌスも同行させる。これについて異論があるものは?」


 異論はない。もはや風はファラオたる僕に向いてる。何より、あの一級宝具は未曾有の国内に備えてアペプに高い金を払って買い取った物、今使わずしては無用の長物の成り果てる。


 「では今後の方針について話そう。私は私が捜索に出る間、ファラオの大権を議会に委任したい。そこで議会の議長についてだが、軍部対立を考慮しラムセスを議長とする」


 ざわつきが満ちる。しかし軍部対立や昨今の大臣の立場を鑑みれば妥当な判断であるというのがこの場の総意であった。


 「さて、ここからは戦争の話だ。海軍大臣、海軍で保有する超戦力について、どう配置する?」


 海軍大臣はしばらくの思案と部下との相談の末、僕の問いに対して答えを出す


 「先日アペプ氏より買い取りましたメセケテッドをギニア=マスドライバーに配置、旗艦トネールルミナスリュミエールをキプロス=マスドライバーに配置致します。陛下が緊急であると判断されれば、こちらで弾道強襲を実施します」


 「ありがとう、では陸軍大臣。貴官はどう判断する?」


 「えぇ、イカロスランチャーを充填させていただきます。アトランティスが捕捉され次第、アトランティスに照準を向けます。また、陛下のご命令、あるいは陛下が死亡、意思が喪失したと判断された場合、イカロスランチャーを射出させて頂きます」


 「またデフコン規定の通り、陛下のご帰還まで海軍と共に戒厳令を敷く事を希望します」


 デフコン規定、実は彼のいう通り、大昔のファラオによってこういう場合の対処方法は定義されていた。それがデフコン規定である。


 「デフコン規定……先人の知恵という奴だな。まさか使う時が来るとは。よし、良いだろう。戒厳令を許可する」


 デフコン規定は5つのレベルに分けて行われる対処である。5が平時であり、1は終末。そして今は……


 「諸君、デフコン規定に従えば、今の状況はデフコン2だ。破壊的兵器を行使し得る可能性のある敵国の侵攻に備えよ、古の知恵あるファラオはそう仰った。そして今がその時である。私はファラオとして、この国を守護する者として、諸君の粉骨砕身の努力を期待する」


 大きな拍手の熱気が私を包む。僕は多分、上手くやれてるんだろう、ファラオとして。あぁ、うんざりするよ。

 メンフィスの大臣は全部大貴族っすね。でも最近の経済発展により、官僚のうち五割くらいがメンフィス神学校を出た実業家の息子だったりします。

 政治家=神官なんですけど、神官=貴族って訳ではないです。政体的には。

 特に陸軍海軍だと軍大臣は貴族、でもそのすぐ下は陸軍大学海軍大学を出た優秀な農民だったりします。

 ちょっと戦前日本っぽい政体だと思ってくれれば大丈夫です。あとこの辺は2章じゃやりません。3章です、多分。

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