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神罰だよ馬鹿





 「飛んできたって、避けるだけだよ!!」


 直線移動、そりゃ避けられる。でも本命はこっちだ。


 「モチパテス!」


 細長く伸ばした粘土の紐。それは彼女のからだにへばり付いて離れない。粘度を上げてんだ。


 「ガキが10Gに耐えられるの?」


 青い光が眩しく光る。身体が引っ張れる。空中でぐるぐると回っている。痛い、腕が千切れる!


 「姿勢制御無しで耐えれると思わないで!」


 右手に魔力を集中させる。赤く輝く小さな星。


 「ミニチュア・ソル!!」


 赤い太陽が空を舞う。しかしそれは容易に避けられた。当たり前だ、当てる気で撃ってないんだから。


 「そろそろ血が偏ってきたんじゃないの?」


 戦線を離脱したくなかったんだろう、彼女はぐるぐると回る機動を描いている。だから血がだんだんと偏って、視界が暗くなってる。


 「ミニチュア・ソル!」


 必死で投げる太陽、しかしそれも逸れる。


 「頭に血まわってないでしょ!さっきの方が近かったよ!


 太陽は和ったく見当違いな位置に飛ぶ。だが、これでいい。さっき投げた太陽がまだ宙に残ってるんだ。


 「違う!あんたが近づいたんだッ!」


 新しい太陽は古い太陽の重力に囚われ、こっちに戻ってくる。スイングバイという奴だ、重力によってベクトルを変えて、彼女の居る位置に当てる。


 「シャアッ!」


 彼女にぶつかる直前、右目の光の太陽にぶつける。


 「こんなのっ……」


 太陽は眩いばかりの光と共に爆発した。全身に装備したブースターが熱によって爆発する。彼女の鱗が剥がれて、剥がれた鱗が光を反射して輝いている。綺麗だと、思う。


 「死なせるもんか!僕だって死にたくないんだから!!」


 粘土の紐を引っ張って引き寄せる。腕は血だらけだけど、頭は無事だ。


 「そのキラキラの綺麗な腕は使えない、終わりです!」


 鱗がキラキラ、こうみると鉱石みたいで美しい。でも血のせいで痛々しい、攻撃した僕が言うのもあれだが、怪我無しで彼女の腕を見てみたかったものだ。


 「……私が駄目でも四獣剣は強いんだ」


 四獣剣。後ろを見た時にはすでに彼らはアウシルによって鏖殺されていた。返り血すらついていない所を見るに、圧倒的な戦いだったんだろう。


 「もう寝てて下さい、動き回られたら嫌ですから」


 モチパテスで彼女の肉体を粘土で固定する。


 「さて、片付いたかな」


 上から船が降りてくる。もう敵兵に士気はなく、降下を妨害する能力すらなかった。全てはアウシルが圧倒的すぎたせいである。


 「黒い、霧?」


 眼前に見える首都から黒い霧が流れてくる。その霧は瞬く間に辺りを覆い尽くした。この霧は知っている。セトの霧だ。


 「あれ、何にもなってないじゃん。威勢よく出てった割りには兄さんの魔力全然減ってないし」


 影が人の形を作る。蛇の目を持った痩身の男を、死神のような男を。セト、彼はいつものように不気味な薄ら笑いを浮かべていた。


 「セト、今なら間に合う。私の元に帰ってこい」


 セトは首を振っている。


 「兄さんは優しい。そこはいい所だ。でも何も考えてないだろ、昔も今も。だからアペプにつまらん馬鹿者って言われて逃げられるのさ」


 セトの左手に握られている金の錫杖。先端にボタンのようなものが付いている。セトはそれを押した。


 「さて、神罰さ。せめて湧き上がる私の怒りの中で己の頭の足りなさを自覚してくれ」


 セト肉体は影に消える。そしてその霧が晴れた時、遠くに見える三個のピラミッドから光の柱が立ち上った。


 「まさか!?完成したのか!?イカロスランチャーの崩壊波が来るぞ!」


 叫ぶアウシル、光の柱は天空の雲を消し飛ばす。あれは、雷だ。僕らが乗った船にあった、雷の翼と同じもの。ならあれはあくまで過剰なエネルギーの放出に過ぎない。過剰なエネルギー……ピラミッドは魔力を地上から吸い上げるもの……


 「アイシス!来てはいけない!!」


 船から出るアイシスとスビアに向かって全力で走る。そして彼女らの手を取った。


 「なんか、揺れてるわ」


 地面が揺れる。そして次に、轟音と砂埃。


 「手を離さないでくれ!!」


 地面が割れる。宙に浮く。岩と共に、船と共に。足元で火山が噴火したの如く、地面が崩壊始まる。


 「バリアならば!!」


 彼女らを抱き寄せて全力でバリアを張る。まずい!下から湧き上がる魔力が大き過ぎて、バリアが少しずつ剥がれて行く。そして何より魔力が下から湧き上がっているから打ち上げられてんだ!!


 「セト!!お前ッ!舐めやがって、私は兄だぞ!」


 アウシルは持てる全力の魔力を地上にぶつける。僕らが吹き飛ばされないように、魔力の噴火に対して逆の力の魔力を加えてるんだ。


 「焼き尽くせ!私の太陽の魔力よ!!」


 巨大な魔力のぶつかり合い。しかし流石はアウシル、史上最強の人だ。打ち勝ってる!


 「お父様、そんな魔力を使っちゃ……」


 全てが終わって、地に落ちる。砂と岩と共に。そして砂埃の中、僕は感じてしまった。二つの巨大な魔力を。一つはドス黒い、セトの魔力。そしてもう一つは、さっきまで巨大過ぎて感じ取れなかった、アウシルの燃え盛る太陽の魔力だった。


 「マジでバケモンだね兄さん。でも、オーバーロード前提ならもう一回撃てるんだな」


 金色の錫杖、セトの指。カペラさん、僕に力を貸してくれ!


 「外すもんか!」


 カペラさんから譲り受けた白い力。白い弓。音すらも無に返す、白い光の矢がセトの腕ごと錫杖を消し飛ばした。


 「あら。でも私は創作の悪役じゃないからね。20秒前に押してからこの場に来たんだ」


 な!?そんなの、そんな……


 「もう一度押さえてお前をボコボコにするだけだ、セト」


 再び光の柱がピラミッドから湧き上がる。わずかに、ピラミッドを爆破しながら。そしてあの揺れがやってくる。


 「湧き上がる魔力の奔流を抑えながら一人で戦うのは兄さんでも厳しいでしょ」


 身体が浮き上がる再び岩と共に宙に浮く。そしてアウシルの魔力で辛うじて空中に押し留められる。


 「さぁ、兄さん。みんなに看取られながら死ぬんだから、不足ないよな?」


 ぶつかり合う魔力の奔流の中、セトは笑っていた。

 アウシルはただ、弟を睨んでいた。

 


 

 

実際アウシルは頭悪いです。最強の代わりに。


セト=アペプ>アイシス=スビア>ラムセスとか>シュン>一般人>アウシルって感じです。なのでだいぶ馬鹿です。力で全部なんとかしてきたので

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