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黙示録の騎士達、あるいは、資産家達





 「うがっ……」


 目を開けると、あの石板の前に戻ってきた。倒れていたのか、僕は。


 「シュン、大丈夫?」


 「シュン君大丈夫?いきなり倒れちゃったから……」


 いきなり倒れた、あぁそうだね。意識だけ飛ばされていたのか、あの空間に。というか、セトがつけてきてるって最後言ってたよな。とりあえずアヌンナキに関する情報は後で整理するとしてセトの情報を渡さないと。


 「ロゼッタストーンが言ってた、セトがつけてるって」


 「それりゃ大変だ兄弟。セトがつけてきてるなんて」


 「あぁ、まったくだよ。どこから……」


 は?今の声……


 「久しぶりだな、兄弟」


 痩身で背の高い、赤い蛇の目をした、死人のように青白い肌の男。頭には金色のコブラがあしらわれた、ファラオの二重冠。ファラオ、セト。

 つけている、そうか、影の中から……いつから?ずっといたのか?


 「い、いつから……お父様」


 膨大な魔力が奴の肉体から溢れている。

 重い、重過ぎる。こんな魔力、本当に人間なのか?


 「いつから?か。少なくとも、私は己の娘に日記を見られたとき、死ぬほど恥ずかしかった。だがまぁ、それも次期に無意味になる。この空間で唯一、スビア、君だけが必要ない人間だからな」


 さっきからだ、奴が喋る度に心臓が鳴っている。鷲掴みにされてる気分なんだ、セトの圧倒的な魔力に気圧されている。


 「さぁ、出ようか。私は文化財を粉々する程、愚か者ではない」


 彼の背中を追いかけて外に出る。これは、絶対に戦うになる。奴の魔力はどうしようもなくざらついていて、対話をしようという雰囲気ではなかった。


 「さて、まずは15歳おめでとう、シュン。これで君もスビアと同い年か。アイシスは確か三ヶ月後だったな」


 灼熱の砂漠の中、奴は影の中からティーポットとティーカップを取り出した。


 「なんのつもり、なんです?」


 彼は上品な作法で紅茶を淹れて飲んだ。なんだ、何をしにきたんだこの人。


 「何、願わくば死んでくれないか、そういう話をしにきたんだ」


 やっぱりやる気だ、この人。


 「カペラさん、シュンの肩に。私には球ちょうだい。スビアは下がって!」


 カペラさんは僕の肩に乗る。アイシスは球を潰し、火の翼と頭の上の小さな太陽を得た。


 「レーザーダイトウ!」


 火属性の大太刀を作る。高音と熱、過去最大の敵を前に心臓はバクバクしているけれど、コンディションは最高だった。


 「魔法の武器、自在に変更が可能だから、魔力の多い奴はそれを使うのが合理的だ。やはり兄弟、君は利口だ」


 奴はティーカップとティーポットを影の中にしまう。そして次に奴は影の中から長い抜き身の刀を取り出した。


 「武器作りは良い。これも試製で自家製だ。故に私を裏切らない」


 アイシスは左から奴に飛び込んだ。なら僕は右から行く。


 「いい連携だ。メルアと言ったところか」


 アイシスの両手両足を使った格闘術。凄まじい旋風を生みながらセトはその全てを左手一本で捌いた。


 「心意気は良し、しかし残念だが、今代のファラオは殴り屋なんでな」


 レーザーの大太刀での切り掛かり、ガシャン!と音を立てて鉄の刀と鍔迫り合う。

 切れない、鉄の刀に高密度の魔力を這わせてバリアを作ってる!?でも、それなら……


 「魔力のバリアを焼き切って突破する、発想はいいだろう。しかし、君がそうするのなら焼かれたバリアに魔力をさらに補填するだけだ」


 でもそれでもこのまま続ければ奴は動きを止めたまんまだ。


 「カペラさん!お願いします」


 肩に乗るカペラさんは飛び上がり、空中で人の形になった。そして弓を構え、セトの脳天を狙う。純白のローブと薄い銀髪、そして王冠。その姿はまさしく女神のようだった。


 「セト、残念だけれど勝利は私だ。年季が違うんだから」


 僕らが離れると同時に、カペラさんは矢を放った。純然たるエネルギーの純白たる矢。勝利の上に勝利を重ねる為に用意された白い一撃。


 「女めッ……!」


 その矢はセト心臓を貫く。無音、ただ静寂だけが流れた。矢は軌道上の全てを消す。それは音や衝撃も例外ではない。


 「セト、貴方は眠って」


 胸に丸い穴が空いたセト、心臓は無い、死んだのか?


 「はぁっ……!私を誰だと思っている、女。いや、支配の騎士ホワイトライダー」


 支配の騎士ホワイトライダー……という事はカペラさんは黙示録の四騎士の一人なのか?


 「私は死なないぞ、何故なら私は死だからな……」


 セトの右手に膨大な魔力……いや魔力なのか?魔力というよりかはあまりにも、ドロドロとしている。


 「吹き消せ、ニルヴァーナ。私は死を拒絶する」


 セトの穴が塞がっていく。そしてセトの横に黒く痩せこけた馬が現れた。


 「さて、第二ラウンドだ。死の騎士ペイルライダー、アヌンナキ=エンリルとして私は貴様らを殺す」


 セトはファラオの二重冠を脱ぎ捨てる。そして、彼の影が大きくなり、暗黒の霧が辺りを覆った。一瞬にして、世界は夜になったのだ。

 ただ、カペラさんと、カペラさんの隣にいた白い馬だけが輝いている。


 「逃げなさい、シュン。こいつは私が止める。このアヌンナキ=ニンフルサグが」

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