愚か者共の葬列
「おかしくない。黙示録の騎士の4騎士は封印から解かれた4人を指すからな。封印されているのも合わせたら7人だ。そしてこれはアヌンナキの運命を変える神、あるいは最も富んだ資産家7人を指す。あと凡ゆる全てを認識出来ても野球は楽しめるからな」
何を言ってるんだ?この人。
「さぁ、今なら3つ、なんでも教えてやる。お前の記憶のおかげでこの球場をほぼ完璧に再現出来たんだからな」
教えやるってなんと尊大な……まぁでも気になってたことはたくさんある。最後の一つはアウシルの遺体の在り方はどこ?にして……まずあれから聞こう。
「太陽神ラーとアヌンナキってなんなんです?度々みんなの口から聞くけど、神様ってこと以外わからないんです」
彼女は右手を高く掲げ、指をパチンと鳴らした。瞬間、眩い輝きが視界を覆う。眩しさで目を瞑って、そして目を開けた時、僕は……
「月?しかもなんだこれ……」
宇宙空間から月を見ていた。純白の地面には沢山のクレーターと、そして全裸で白い肌の人間が無数に倒れている。異様な光景だ、しかし最も異様なのは、その白い肌の人間が大きすぎるって事だ。50、いや100mはあるだろう。とにかくデカくて、そして痩せ細ってる。この白い巨人たち、女も男も、全員痩せ細って干からびてるんだ。
「どうだ?これがアヌンナキだ。神とは名ばかりの野垂れ死んだ愚者共だ」
おろかんちゅ……
「死んでるんです?これ」
「肉体は死んでいる。いや、死ななざるを得なかった。奴らは地球に移民したかったようだが、地球の重力が強すぎてそのままの肉体じゃ移民できなかったのさ」
そのままの肉体じゃ移民できない?だから肉体が死んだ?んじゃこの人たちは地球に移民しようとしてできなかった人たちって事?
「んじゃなんで僕のことアヌンナキ=シンって呼んだんです?アヌンナキは死んでるじゃないんですか?」
質問しながら遺体を数を数える。数えてみた限りおよそ300くらいだった。これが300人のアヌンナキ?でもだとしたらおかしいだろ、太陽の船マンジェットは人間のサイズ用だったぞ。
「肉体は死んでいる。しかし魂は彼らの母星に保存されている。そして君はその母星に保存されている魂の中でも、最も富んだ7人の資産家の一人、シンの魂を持っている」
ロゼッタストーンはため息を吐いた。
「まったく、生き汚いと思う。魂だけの寄生虫となって、それを生きていると言うものか」
アヌンナキの文明、ニビル文明は滅んだ、これはセトの日記にあったよね。じゃあつまり……
「そうだ、察しが良いじゃないか、シュン。彼らは肉体を捨てて魂だけをこの星に落とすことにした。自身の肉体を参考として、コンパクトな入れ物を作ってな」
要はこの人体もアヌンナキが創造した肉体で、アヌンナキの魂を入れる入れ物って訳ね。でも別に恐ろしくはならないな、人間がどうやってできたとしても人間は人間だと思うし。
「次の質問いいですか、僕って何者なんです?」
次の話は僕の正体についてだ。だってロゼッタストーン曰く、僕はアヌンナキ=シン、もしくは黙示録の4騎士の5人目、忘却の騎士ブルーライダーなんてイカつい存在らしいけれど、ぶっちゃけ何もわからない。
「言ったろ。君はアヌンナキ=シンの魂を持っている。そしてアヌンナキ=シンが黙示録の4騎士の5人目で忘却の騎士ブルーライダーだと」
だからそれがわからないんだって。アヌンナキ=シンは良いとしよう、さっき説明されたしね。でもその次の黙示録の4騎士ってなんだよ。しかも4人なのに5人だし。
「だから黙示録の4騎士ってなんです?それとなんで4人なのに5人なんですか?」
再び彼女は指をパチンと鳴らし、場所を変える。今度の場所は……
「南極?」
空は青い、氷の上に立っている。あとペンギンが居る、可愛い。
「これを見ろ。どう思う?」
氷の底に居るのは、白い肌を持った巨人、月面にいたような、でも下半身が魚になっている。なんと言うか、漂白された人魚みたいだ。というか知ってるぞ、これ。南極のUMA、ニンゲンだ。
「これがアダムだよ、始まりの人間。どうだ、恐ろしいだろう?こいつのようなのが暴れたらまずい、だからアヌンナキは被造物に対して絶対の制御権を有さなくてはならなかった。いざとなったら支配できるように、感情も、行動も、命も。それは当事者たる君たちにとって恐ろしい事だろう?だから黙示録と言うんだ」
つまり人間の肉体という存在がアヌンナキにとって制御不能になった場合の為に強制制御・停止システムをつけたってことか。そして強制制御・停止というのは僕らにとって、世界の終わりみたいなものでまさしくカタストロフ、黙示録って事ね。
「それと僕がなんの関係が?」
「制御権は7つに分割され、最も富んだ資産家の魂に与えられた。その魂のうち一つが君に宿っている。その魂の名がアヌンナキ=シン、権限は記憶の閲覧と忘却。でも殆どの権限は7人つの魂の内5人が承諾しないと真価を発揮しない」
僕の頭の中に蓄えた情報が繋がっていく。
1.命を支配できる権限がある。つまり殺すことができる。でもこれを発動させるには5人のうち7人の承諾が必要。
2.セトの日記より、黙示録の5人の力があれば人類を安楽死させることが出来る。
3.黙示録の4人とは本来7人であり、よくわからないけどこの人たちはアヌンナキの最も富んだ資産家7人と同一である。なんで封印されて、4人だけ解かれたのかはわからない。また僕は封印されていた5人目っぽい?
4.人体はアヌンナキの被造物である。
1~4より、こう言える。黙示録の騎士達、つまりアヌンナキの最も富んだ資産家の魂7人のうち5人の魂が承諾すれば、人類全てを一瞬にして殺害できる。
勿論これは過程だし、憶測の域を出ない。でも安楽死させられる手段があるとするならば、こういうのしか想像出来ない。
「お前もセト並に利口じゃないか。セトのやろうとしている事はそういう事だ。彼もまた、魂を、死の権限を持つ魂を持っている。そしてお前ら権限を持つから権限を取り上げで自分一人に集約し、人類に対して死の支配を実行しようとしている」
「待ってください全然分かってません。封印ってなんです?なんで4人は封印から解かれて、それと5人目って事は僕は封印されてたんですか?あとなんでアヌンナキはアルファベットを使ってるんです?」
「それは3つ目の質問か?」
3つ目の質問……だめだ。今の質問はできない。アウシルの肉体を聞く方が先決だ。
「違います。3つ目の質問はアウシルの肉体の在処です。残りの」
「やはり利口だ。君自身のことは君自身が知るべきだからね、アトランティスか、あるいはニビルで。では、三つ目質問に答えてやろう」
もう一度彼女は指を鳴らす。再び景色が光に包まれていく。
今度は巨大なビル群、そしてスクランブル交差点。ここは……渋谷?なんで渋谷?
「君の宇宙の建築物はアトランティスに似ている」
今度はロゼッタストーンの服装まで変わってる。女子高生の制服じゃないか。なんというか、長い銀髪の清楚さもあいまって、めちゃくちゃ似合ってる。
「さて、質問に答えよう。アウシルの肉体の在り方だったね。えっと……アウシルの肉体はアウシルのシンパが集めてる。しかも大部分、今はアレクサンドリアにあるね。足りてないのは左目と左腕、右足、あとアレだ」
つまり僕らが探すべきなのはあと左目とアレだけって事か。
「ん?左腕はアペプが持ってて、左目は魔物の腹の中、そして右足とアレは君らが持ってるね」
あれ、僕らがアレを持ってる?どういう事だ?僕はアレを回収していないぞ。
「そういう事か、なんで私は気づかなかった!出てこい!つけてるんだろう!セトッ!!」
ロゼッタストーンは焦り出した。そして同時に地面が揺れ、割れ、世界が砕けた。僕はただ、落ちて行く。




