過去と未来を識る者、ロゼッタストーン
過去と未来を識る者、ロゼッタストーン。曰くそれは全てを識る石板。僕らはその石板の眠る宮殿に向かっている。
「キィィィー!!」
甲高い音、舞う砂。僕らの前にいる魔物、鷲の頭と鷲の翼、そしてライオンの胴体を持った怪物。グリフォンである。
「飛んだよ!シュン!」
空を舞うグリフォン、本当に凄い生き物だよ、あの体躯で飛ぶなんて。
「伸びてくれよ!ビームダイトウ!!」
赤いレーザーの大太刀、上部だけ膜を解いてリーチを伸ばす。鳴り響く稲妻、グリフォンの声。
巨大な刃がグリフォンに降り注ぐ。刃はグリフォンの下半身ごと焼き払って、上半身が落ちてくる。自由落下ならば、場所を捉えられるはずだ。
「シャアッ!」
脳天に向けてレーザーを放つ。レーザーは脳天どころか頭部の全てを焼き尽くしてしまった。
グリフォンの上半身はそのまま地上に落ちる。鈍い音を立てて。
「シュン君なんか、凄いね。アウシルさんみたいな事するね」
スビアを助けるために青い幽霊の馬を出してからだろう、なんか魔力が漲ってる。理由はわからない。カペラさんに聞いたらそういうもんだよしか言わないし、何より馬出ろって言っても出ないし。
「そうだけど、少し怖いよ。魔法を使ってる時に巨人になった気分になる。繊細なコントロールが出来なくなってるんだ」
実際、前みたいに細い刃は出せなくなったし右目の力だってどうやっても範囲を絞れない。それに疲れ易くなったしね。例えるのなら、常に蛇口の全開にしてる気分なんだ。
「何より怖いのは君らを巻き込んじゃうんじゃないかって、それが」
グリフォンを倒してからしばらくして、僕らは巨大な岩山に辿り着いた。
「あそこに入り口がある」
岩山の側面、そこには掘って造られたであろう大きな岩の像が四つ並んでいた。そしてその中心に入り口がある。
僕らはそこに入っていく。中は暗く、水のせせらぎが聞こえる。
「石像が並んでるね。たくさん」
アイシスはよく見えているんだろう。猫目だから。でも本当に僕には何も見えない。石像を石像と認識出来てないんだ。
「みんな、あれだよ。あれが賢者ロゼッタストーン」
この階段を登った先にあるらしい物をカペラさんは指してる。暗い階段、転んだら嫌だなと思いながら登る。
「これ?ただの石碑に見えるわ。上が聖刻継承地で真ん中がアトランティス字、一番下がアルファベット」
階段を登った先にあったのは石碑だった。僕の身長と同じくらいの石盤。上部が聖刻象形字で中部が日本語!?それで一番下がアルファベット??アトランティス字は日本語なのか……
「これ、全部同じ内容よ。えっとね……父の王位を継いだ若き王、大いなるファラオプトレマイオス。その治世9年において発せられた勅令。彼らはこの勅令により……民の税を軽くした?うん、これ当時のファラオを讃える文章だよ。あと下の方は皇帝礼拝の方法かな?」
要はただの石碑だ。3種類の言語が書かれているから考古学的価値は凄そうだけど、これがカペラさんやセトのいう賢者だとは思えない。
「まぁ予想はしていたけれどダンマリだね。ごめんね意味ない所に連れて来ちゃってさ」
カペラさんがいうには無駄足っぽい。まぁ最初に無駄足になるって言ってたし。
「ん、何これ下の奴。ウェスト?ライオン……」
アルファベットで書かれてる下の部分、その一番後ろ。聖刻象形文字の部分にもアトランティス字のこと日本語部分にも該当する箇所がない。西のライオン、ベースボール?
「読めるのか?」
「女の声!?」
女の声?アイシスよりもスビアよりもカペラさんよりも低い。この石板が喋るの?
「5人目……なるほど。そういうことか、忘れていただけで」
その時、この暗い空間が明るくなった。火も電気もないのに明るくなったんだ。そう、石像や壁、床、それ自体が光ってんだ。
「アヌンナキ=シン、なるほど。ラーの側についていたのか」
突然、肉体に電撃が走る。コカトリスに睨まれた時と同じような感覚。痛い、痛い!
「シュン!」
激痛の中、僕は意識を失った。そして目が覚めた頃、景色は一変していた。
「は?」
さっきまで洞窟のような場所にいたのに、僕は今、なんと……
「ワンナウト、ランナー一塁」
ここ、知ってる場所だ。天井の天幕、中心のベース、そしてこの観客席の構造。高校2年の時、何度か行った球場。
「やぁ、シュン、あるいはアヌンナキ=シン、もしくは黙示録の4騎士の5人目、忘却の騎士ブルーライダー」
長い銀髪の女性、鋭い目付きをしている。でも服は白いTシャツ、いやユニフォーム。そしてそこには青の聖刻神聖文字。意味はライオン。野球、好きなのか?
「私は自律多元宇宙観測機ロゼッタストーン。普段は野球にしか興味ないんだがな、君があまりにも得意な存在だったから」
また一癖も二癖もありそうな人。
「えっと、取り敢えずその、アヌンナキ=シンってなんです?てか黙示録の4騎士なんだから5人目はおかしいでしょ。あと好きなんですね、このチーム」
言いたいこと、全部言ってやった。




