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ドラゴンフォール




 アイシスはいつもの調子で説明を始める。


 「龍、ドラゴンはコカトリスと同じで、人工の生命って確認されている数少ない種だよ。だから色々と管理が必要だったんだけど、古代文明が滅んじゃって、管理人が居なくなったせいで龍は自然化してしまった。でも人工の、戦争の為だけの命だったから長く生きることは考慮されていなくて、老齢になると自らの火に焼かれて死んでしまう」


 ドラゴンが人工の種。しかもその最後はあんな風に業火の中で苦しんで死ぬ。アペプが居たら度し難い命って言ってただろうな。


 「だから人里で死なないようにこうやって誘導するって事なの?」


 ピーちゃんに餌を与えながらスビアはそう言った。


 「うん、その認識で間違いない。でもそこで一点、ドラゴンの身体には凄いエネルギーがあるから、ちゃんとした所で死んでくれないと生態系を破壊しちゃう。特に今の状況、アンニール川に向かって川で死んだら川の栄養がおかしくなってどうなるかわかった事じゃない」


 よくみると龍が通った後、地面が黒い濁った色になってちょっと輝いてる。ガラスになってんだ、砂が。


 「それで私たちがやるのは遠くからあの死龍を……すいませんあれの名前なんというんです?」


 「ダムレイだぞ!」


 荒くれ者はそう答えた。なるほど、だいたい話はわかってきたぞ。何というか、対処可能な天災って感じだ。だから僕らの仕事は……


 「要するに私たちはあの死龍ダムレイを遠くから魔法で刺激したり先回りして砦を建てたりして何とか遠くに追いやるって訳」


 さっきの神官がアイシスの後ろに立っている。


 「えぇ、その説明にお間違いはありません。ただ付け加えさせていただくと、龍の骨は死後、微生物や小動物の棲家となり、独自の生態系を築きます。これをドラゴンフォール現象と言うのです」


 まるで鯨だ。そう思うと自然って凄いんだと思える。だって人工的に作られた生命も自然の作用として取り込んでいるんだから。


 「さて、そろそろ攻撃が始まりますね。魔法はあくまで進路調整の為ですので、決して肉体を傷つけぬ様。龍は臆病ですからすぐに進路を変えてくれますよ」


 笛の高い音が聞こえる。それと同時に魔法による攻撃が始まった。氷の魔法やら水の魔法やらが飛んでいる。しかしその殆どは龍の目前で砕けて離散した。そう、ゴッドイーターと同じなんだ。魔力が強力なバリアになってる。しかも龍の足元を狙ってああなってんだから、ゴッドイーターよりもバリアの出力は高い。


 「凄い、あれが……あれが生物なのか」


 「そうだよ、あれがドラゴンなんだ」


 今の声、カペラさんの声。いつのまにか僕の頭の上にいたのか。


 「都市に落として一通り暴れさせてから途轍もない熱量で都市そのものもを爆破する。クリーンな大量破壊兵器なんだ。だから神様なんかよりも魔力の量は多い」


 「とにかく、あれが人里で死んだら大変だよ。老齢とはいえ、街の半分を火の海に出来るくらいのエネルギー量はある」


 あの魔力のバリアを突破できる攻撃……右目なら突破できるけど、あれじゃ脅かしにならないし。ミニチュア・ソルはあそこまで届くのか?


 「集めろ!集めろ!!」


 先頭の方、何かの機械に魔力を込めている?筒のような機械、あれは大砲なのか?


 「撃てェーッ!!」


 号令と共に、轟音が轟く。燃え盛る火の玉が空中を舞った。そして火の玉は魔力のバリアとぶつかって爆発する。まるで太陽を直に見てしまったような眩しさ、目を瞑ってしまう。

 輝いが晴れた後、残っていたのはキョロキョロと周りを見渡すような仕草をする死龍ダムレイであった。


 「こけ脅しにしかなってない……でもそれでいいんだ」


 あんな魔力の塊をぶつけてもドラゴンは空洞の目で首を振るだけ、バリアは抜けてない。でもそれで成功なんだ。だってこけ脅しで進路変えてくれたらそれでいいんだから。


 「シュン、剣を作った時みたいに火属性を凝縮させるんだ。小さな風船を作る感覚、それで穴を開けて一点集中させて。貴方ならきっとバリアを抜ける」


 カペラさんの指示通り、火属性を凝縮して小さな球を作る。あれ、なんか手のひらが熱い。なんかいつもとは違う、魔力の質とか量が多すぎる。蛇口を捻って水量が増えたとかじゃなくて、蛇口そのものが広くなってる、そんな感覚だ。


 「やっぱり、馬のせいね。出力が違ってるの、わかる?」


 「わかる、けど怖いよ。手が火傷してる感じがする。もう放っていい?」


 「ダメ、もうちょっと、もうちょっと溜めてみなさい」


 あぁもう、自分が治癒の魔法使えるからってスパルタなんだ。でもやってみよう、もう少しだけいける気がする。


 「でた稲妻!もう無理!」


 わざと一部分だけ押し付ける力を弱くしてそこから火属性を放出する。

 キィィィン!!

 火属性は甲高い音を立てながら一筋のレーザーとなって龍の近くの地面を撃ち抜いた。地面は龍が踏んだ後のように赤くなり、そしてその後、熱によって爆発する。


 「クオオオオオン!!!」


 龍は噴煙の中で鯨のように叫んだ。低かったり高かったり、とにかく悲しそうに叫んでいた。肉体は傷付けてない。ただバリアを破っただけ。なのにあんな怖がってる。龍って本当に臆病なんだ。


 「見ろ!!進路を変えるぞ!!!」


 龍は空洞の目をそっぽ向けて、ゆっくりとゆっくりと進路変更をした。

 その後僕らも龍を追いかけて数時間、日が沈んで月が出る頃、龍は火を撒き散らしながら砂の中に眠った。

 葬龍祭、葬龍はここにて完遂され、次に祭りが始まった。

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