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コカトリスの幼体、ピヨトリス




 コカトリスはこの街の近くにある遺跡を生息地にしている。という訳でコカトリスを討伐する為に昼の太陽の船の遺跡に向かった。


 「なんだ、これ」


 マンジェット遺跡、遺跡というにはなんというか、あまりにも未来的過ぎる。中央に翼の生えた第二次世界大戦期のような戦艦があってその傍にはクレーンのようなものや壊れたコンテナがあった。つまりここはドックなんだ、昼の船と呼ばれる、古代の超技術船の亡骸の棺だ。


 「シュン、これは太陽神ラーが乗ってたって言われる船だよ、昼はこの船に乗って夜は……」


 アイシスの神話の話、でも彼女は続きを言わなかった。だって目の前にこの、何この、これ……


 「ピー!」


 黄色いふわふわの綿毛みたいな生物。大きな黒の瞳、小さな嘴とまだオレンジ色の足。ヒヨコである。でもその後ろの尻尾にはつぶらな瞳のコブラがいて、なんだろう、かわいい。


 「えっ、かわいいわ、凄く。アイシス、これ貴方が言ってたピヨトリスでしょ?」


 スビアの手に乗るピヨトリス、ピヨピヨ言いながら踊ってやがる。でも大丈夫なんだろうか、ピヨピヨ言ってるが、こいつも成体になったらコカトリスになるんだろう?大丈夫なのか?


 「そう、ピヨトリス。雄鳥の卵にトードって言うのが遺伝子を注入するとヒヨコがああなっちゃう。んであそこにいるのがトード」


 トード、ヒキガエルみたいな生き物。今あそこでぴょんぴょん跳ね回ってる。全ての個体がオスで股間部には鋭い注射器みたいな性器があるらしい。


 「アイシス、毒とかないのか?」


 「無いよピヨトリスの身体じゃ不燃器官に耐えられない。あれは一酸化炭素を吐き出す器官だから」


 伝説によるとコカトリスの吐息には猛毒があるって話だけれど、そう言うことなんだ。そりゃ一酸化炭素を大量に含んだ吐息をされたら死ぬよな。


 「んじゃこの子飼ってもいいのかしら。だってほら、こんな可愛いの」


 スビアの上目遣いに合わせてピヨトリスも上目遣いしてる。なんだ、この光景は、可愛過ぎる。


 「ベビースキーマだよ。それは悪意に満ちた度し難い命だから、特にその傾向が強い。敵に損害を与えるために遺伝子操作と品種改良を行なった、古代文明の負の遺産だよ、その魔物は」


 古代文明の負の遺産、悪意に満ちた度し難い命。でもそれは君たちのような獣人も含まれる話なんじゃないんだろうか。だめだな、アペプから獣人の話を聞いてから彼女らの発言とか仕草とかを素直に受け取れてない。僕の中では真実かも定かではない話なのに、一瞬考えてしまうせいで……くそ、忘れてしまいたい。


 「え、そうなの、この子」


 うわあざと、ピヨトリスの目がうるうるしてる。これで悪意の満ちた度し難い命はこう、無理がある、って訳でもないのか。敵に拾わせて成体になって敵の懐で一酸化炭素撒き散らしながら大暴れなんて、そりゃ悪意に満ちた度し難い命なのかもしれない。あぁでも本当に可愛いな、このピヨトリス。頭の毛までふわふわであったかい。


 「シュン、懐かれたら困るから撫でるの辞めて。それにほら今からその子のお母さんかもしれないコカトリスを殺しに行くんだよ。もっとも、その醜い命に親子意識があるとは思えないけど」


 耳絞ってる。憤りを感じているんだろうか、ピヨトリスという生命に、あるいはこの状況なのかもしれない。


 「わかってる、行こうスビア」


 しばらく歩き、艦首に登る梯子を見つけた。ここを登り、甲板に出る。錆びた鎖にそして目の前にある巨大な主砲。砂と錆、何千年何万年と放置されていたのに、今にも動き出しそうな感じがする。

 と、僕がそんな感傷に慕っている時、カペラさんはアイシスの側から僕の方に飛んできた。赤い球に乗って。


 「シュン、どう?何か感じるものはある?」


 「いや、なんだろう。創作にはこういう船あったかもしれないなって。でも僕と同じ時代、あるいはもっと先の時代の転生者がこの世界に転生してこれを作れるっかって言ったら別だし、なんなんです?これって感じる、かな」


 僕には蒸気機関の知識も電池の知識もある。でもそれをこの世界で作れるかって言ったら無理だ。だからそれと同じで、例え僕の居た時代よりも千年も一万年も先の未来の人がこの世界に転生したとして、その人が千年先、一万年先で使われる道具をこの世界で作るのはとても難しいと思う。だからこの船は……なんなんだ?


 「そりゃそうだよ。だってこの船は私がカペラになるよりもずっと前にあったものだもの。太陽神ラーと300人のアヌンナキの船なのだから」


 よくわからないけど、一応神様っていうカペラさんが言ってるのだから真実なのかもしれない。でも信じられない話だし、スケールの大きい話だから頭の片隅にだけ置いて放置しておこうかな。


 「凄い船なんだなぁ」


 月並みな感想を呟いたその時、アイシスに服を引っ張られ耳元で囁かれた。


 「居たよ、あれだ」


 僕たちが登ってきた方とは逆側の地面、そこにコカトリスは居た。噂通り、雄鶏の肉体と蛇、コブラで出来た尻尾を持っていた。体長は多分2mくらい、鋭い爪と嘴、死を感じる恐ろしい真っ赤な瞳、アペプのような蛇の瞳を頭と尻尾に持っていた。瞳を持ち蒸気のピヨトリスとは違って本当に恐ろしい見た目をしているのだ。


 「この距離なら多分ビームで一撃だと思う」


 立ち上がり、左目を塞いで奴の胴体を見る。その時、奴と目が合った。


 「あがッ!」


 感電に近い感覚、指が強く硬直して動かない。足も全部動かない。石にされたような、そんな感覚。


 「シュン!」


 地面にぶつかる感覚、後頭部が痛い。何が、起こったんだ。

いきなり宇宙戦艦出てきたな–と思ってる人いるかもしれません。


これは太陽神ラーが太陽の船に乗って天空や冥界を航行していたという所からですね。神話の方だと戦艦ではなく艀なのであれですけれど。

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