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交渉





 「交渉?いいぜ。ただし、やり方は俺のやり方でやらせて貰う」


 長テーブルの真ん中を陣取り、交渉をする。ギャラリーはシカモアのクランメンバーとその他大勢である。


 「いいよ、アペプ兄さんのやり方で」


 交渉人であるアイシスを真ん中に置き、その左に僕、そして右にスビアが座っている。カペラさんは交渉を円滑に進める為、アイシスの髪の中に隠れている。


 「じゃあまず前提として、俺は面白いかつまらないかしか考えてない」


 「知ってるよ、そうじゃないとあんな酷い縁の切り方はしない」


 いきなり出鼻を挫かれたのはアペプさんの方だった。だからなのかしらないが、注がれた酒を一気飲みしてスロットルを上げる。


 「それはそれこれはこれだ。で、あのクソデカマンゴーデスワーム件だろ。まぁそうなれば大体予想はつくけれど」


 アイシスも酒を入れる。でも度数低めだ。


 「そう、アペプ兄さんもわかってるんだろうけど、あのマンゴーデスワームはお父様の肉体を食べている可能性が高い。だからあいつを討伐してお父様の肉体を腹の中から引っ張り出したいんだけど、手伝ってくれる?」


 「いいぜ」


 即答だった。それはもう、アイシスが気づかないくらいには即答だった。


 「それでアペプ兄さん、こちらから提供でき……えいいの?」


 アペプは立ち上がり、テーブルに片足を乗っけた。なんだろう、この人もこの人で顔が良い。血の繋がりはないはずなのに。


 「セトは世捨て人すぎてな、つまらないんだ、あいつの世界は。だからアウシルは居た方が世界が面白い。だから手伝ってやる、これは俺の考えだ。で、こっからリーダーとしての立場でこちらからクソデカマンゴーデスワーム討伐の条件を提示する」


 指を三つたてている。三個の条件、緩ければ良いんだけれど……


 「まず一つ、報酬は全額こっち持ち。当然だよな?手伝ってやってるんだから」


 「次に二つ、討伐の作戦にコカトリスを使う。これの討伐はお前らにやって貰う。むろん、討伐後の死体の買い取りの資金についてはこちらで捻出しよう。俺の良心だ」


 コカトリス、蛇の尻尾を持つ鶏の魔物だっけか。猛毒を持っている魔物だったような。


 「そして最後に三つ、原則としてマンゴーデスワームの腹から掻き出した遺物及び遺品はクランシカモアの資産として扱う。これついて、一切の例外を認めない」


 例外を認めない!?アウシルさんの遺体であってもそれはシカモアの資産として扱うのか。それは……


 「兄さん、アペプ兄さん、違うでしょ。貴方は何を考えてるんだ」


 アイシスは当然のように怒りを露わにした。耳はイカのようになっていて、眉間に皺を寄せて睨んでいる。


 「何を考えてる?アイシス、それは俺のセリフだ。だってマンゴーデスワームを俺たちに倒して欲しいって話だろ?自分らじゃ倒せないから。それで俺らが倒してやってんだから、そいつの腹から出てくるお宝は俺らのモンってのが筋だろう」


 「兄さん、私達はタダ働きをしたい訳じゃない。お父様を復活させてあげたいの。だからマンゴーデスワームからお父様の遺体がでたら私達が受け取りたい。お父様の遺体以外なら全部貴方の懐に入れてもらって良いから」


 アペプはコップを逆さにして、中身の酒をアイシスに掛けようとする。僕は何故か、自然と立っていた。


 「気っ持ち悪いな、お前。シュンとかいう奴」


 酒で髪が濡れている。ベトベトして不愉快だ。

 アイシスが僕の手を握っている。表情は見えていないけれど、彼女は怒っていない。むしろ何か、諦めているように感じる。


 「いいよ、シュン。よく考えたらアペプ兄さんは正しい。お父様の遺体を資産にして私たちに買い取らせる気だ。今冷静に考えて分かった」


 「頭冷やせよ、兄弟。俺の代わりの劣化品。お前らは俺の親不孝を正しに来たんじゃなくて、俺の戦力を求めて来たんだろ?」


 アペプの代わりか、そうだったらいいかも、と言うのは昨日考えたことか。でも意外だ、僕が家内奴隷として入った時には貴方もう冒険者で、僕がアウシルさんの家内奴隷って知らないはずなのに……こっそり帰っていたのか?


 「無礼を詫びます、アペプ」


 頭を一度下げで空席に座る。隣のアイシスは仏頂面で、その隣のスビアは顔こそキリッとしてるけど耳はヒコーキになってる。怒ってるんだ。


 「よし、じゃあ交渉はこれで終わりだ。コカトリス討伐の為の準備をするよ、立ってシュン」


 立ち上がりギルド館から出ようとするその時、僕だけ呼び止められた。


 「おい、待てよ連れねぇな。俺は今からシュンって奴と少しだけ話す。男だけでな」


 「そう、何かしたら許さないから。特に、アウシルの家の外の人間が」


 二人は去っていく。僕は今、この怖い人に見下ろされて睨まれている。


 「さて、座れよ兄弟」


 お互い向き合って座る。ギャラリーは彼が帰らせて、ギルド館にいるのは依頼を受けにきた僕らの知らない冒険者だけになった。


 「お前、アイシスのこと好きなのか?」


 「はい!?」

 


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