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不仲、なんだね



 宿に戻る。酒だけはアペプさんから貰ったので、食べ物を買って宴会みたいな感じだけれど、雰囲気は全然楽しげじゃない。それもそのはず、アイシスが不機嫌過ぎるのだ。


 「うわぁアイシス!それやばいから!」


 度数高めの酒をいきなり一気飲みする彼女、僕はそれを必死に止める。だってこんな飲み方普通じゃないだろう。


 「止めないでシュン!お酒ないと私は普通に話すこともできないの!あの人のこと嫌いだから!」


 僕は男だ、だから力で女に負けるなんてなかなかないはずなんだけど、力が強過ぎる!抑えきれないよ。


 「っぷはぁ!よし、お酒入った。シュンもスビアも入れな、これはとても良いものだよ」


 あぁもう、耳垂れてるし頬赤いし。雌ライオンから猫になってしまったんだ。


 「飲んじゃいなよ、二人とも。いざとなったら私がどうにかするからさ」


 カペラさんは基本的に酒を飲まない。だってフンコロガシだから。こう言う時いてくれると本当にありがたいんだ。


 「では言葉に甘えさせてもらうわ。あ、言っとくけど私もアイシスと似たような性質持ってるから」


 スビアと似たような性質……犬になる?いや元々犬っぽいけど、金髪だしゴールデンレトリバーみたいな感じになるのか?獣の耳持ってるやつは全員酒を飲むとそうなるのか?


 「はい、シュンも飲んでね」


 差し出されたコップ。シュワシュワしてるし本当にアルコール臭がする。これショット飲みする奴じゃないでしょ。

 恐る恐るコップを持ち上げ、一旦半分だけ飲む。


 「うわやばいな、これはいけないよ」


 喉が熱いのがわかる。こんなの飲んでたら明日はぶっ倒れて何にも出来ないだろう。特にアイシス、君だ。なんであんたはラッパ飲みしてんだよ。


 「さて、シュン。貴方にゃ言ってなかった、アペプ兄さんの話しようか」


 にゃ、出た。もう出来上がってる証拠じゃないか。それにスビアもなんか、アイシスに抱きついてるし。


 「まず、お父様の子供は全員おんにゃだったの。だから自分がファラオになった後、後継がいにゃくて戦争ににゃっちゃうって話。そこで養子に迎えられたのがアペプ兄さん」


 後継がいないから養子を長男として迎え入れる。もしかすると僕を迎え入れたのもその一環だったのかもしれない。だからアウシルさんが生きていればゆくゆくは家内奴隷から家族に、なんて夢見過ぎか。


 「でもあいつ超穀潰し。大学まで行って縁談も取り付けたのに突然冒険者になりますって書き残ししてどっか言った。はっきり言ってクズ」


 スビアは立ち上がり、僕の膝に顎を乗せて耳を垂らす。本当に犬みたいだ。というか、なんかこの二人も姉妹みたいに感じてきた。自然な仕草がめちゃくちゃ可愛くて、酒飲んだらどっちもこうなるんだから。


 「でも冒険者の才能はあったんだぁ、アペプさん。私も彼と一回だけ遊んでもらった事あるけどすごい運動神経いいの。だから冒険者になって最強だなん……」


 ん、息が深くなってる、寝てるのか?いや、こんなにも早く。とりあえず担いでベットに寝しとこう。


 「ん、雑魚雑魚。雑魚だね、スビアは。こんにゃんですぐ寝ちゃうなんて」


 眠る彼女をベットに寝かす。あぁくそなんで寝顔まで可愛いんだ。なんかここまで美的に完成された女性を見ると性的なものとかそういうの通り越して呆れてくる。完成されたヌード画を見ているように、女性としての魅力よりも美術品として美しさを感じてしまう。

 うわ、丸くなって赤ちゃんみたいな姿勢で寝てる。無意識だとしてもこう、あざといぞ。


 「で、話の続き。アペプ兄さんはスビアも言ってたみたいに最強の冒険者で、お父様が死んだ今彼に勝てる人は居ない。セトでもね」


 だとしたら彼を仲間に引き入れたら勝ちなんじゃないか?アウシルさんの遺体を集めるのにもってこいの人じゃん。冒険者で、最強なんだから。


 「はいその顔、絶対今仲間にしようとか思ったでしょ。無理だよ、あの人は本質的に道化だから完全に味方にするにゃんて出来ない。でも一時の協力はできるかも」


 彼女は立ち上がり、僕に絡み付きながら自分の飲んでたコップを僕の口に押し当てる。絶世の美女の格好でおっさんのようなことをしているんだ。


 「はい、よく飲めたね。偉い、ほんっとうに偉いね」


 くそう、赤くなってる、僕の頬。彼女の焦げた肌に押し当てられて、彼女の体温を感じているからってのもあるけど、それ以上にこの酒がきついせいだ。ラベルにはなんて書いてあるんだ……


 「45!?どうりで……」


 ラベルを見るために持った酒瓶、いつのまにか手から消えていた。そしてそれは彼女の口元にあったんだ。


 「だから私は明日、アペプ兄さんの所に言ってこういうの。マンゴーデスワームの討伐手伝ってってさ。言うんだ。だから私ににゃらできるって……」


 僕に抱きついたまま、彼女は寝てしまった。これまた可愛い寝顔だと、そう思った。


 「君にならでき……まずいな、これ」


 身体が熱い、上を向いてないとゲロが出そうだ。僕ってこんなにお酒弱かったっけか。ん、天井で緑っぽい黒いのが回転してる。なんだあれ。


 「終わった?シュンも寝なよ、二日酔いの手前くらいには回復してあげるから」


 声が遠のいていく。意識が……


 「ありがとう……ございます?」


 深い眠り落ちた。椅子に座ったまんま、アイシスに抱きつかれて首が苦しいまんま。






 翌日、話を付けるためクラン館に向かった。僕は今、きっとひどい顔をしている。それは目の前にいるアペプからもそう見えてるんだろう。だって今頭痛いし、気持ち悪いし。カペラさんが首元に止まってくれてなければ今すぐに吐いてた所だ。

 ちくしょう、なんで僕だけなんだ。なんで隣の二人は清々しい顔してるんだ?僕より確実に量飲んでたし、アイシスなんてあのお酒の殆どを飲んでたじゃないか。


 「よぉ!お前ら……ん?なんかシュンだけ窶れてるし、二人はなんかいい顔してるし、まさか……不健全なんだそ!そう言うの!よくないから!」


 「ぼ、僕が下戸なだけです。勘違いしないで、ください。貴方から貰ったお酒、高くて、度数」


 呂律が回らない、本当に不調だ。


 「いいよ、シュン。アペプ兄さんには私から話つける」


 スビアに支えられて立っている僕を尻目に、アイシスはアペプの真ん前まで歩き、彼を挑発的に、挑戦的に見つめた。


 「交渉しよう、アペプ兄さん。マンゴーデスワームの件についてだ」


 アペプの赤い瞳が一気に鋭くなる。それはとても妹に向けるような物ではなく、むしろこう、敵に向けるような目だった。



 

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