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行くんだな




 マンジェットは変わらず砂漠のドックに鎮座している。ほぼ廃墟、施設機能のうち7割が死んでいるとはいえ、今の技術で建てられた海軍のドックよりもこっちの方が性能が良いんだ。何よりラスカエセリオン対消滅エンジンの調整はここじゃないと出来ない。


 「段差気を付けてな」


 アイシスとスビアを連れてマンジェットへ。今回二人を連れてきたのには理由がある。


 「久しぶりだね、こえいうの」


 一つ、3人で過ごす時間が欲しかったから。そしてもう一つは僕とアペプが戦えば必ず僕が負けてしまうからである。


 「そうだね。僕はこっちの方が好きだ」


 ただ僕だって負けると分かって突っ込む訳じゃない。僕がアペプに勝てないのなら外から僕の力を補おえば良い。その為の二つの宝具とそれを管理する二人なんだ。


 「ん、アイシス?」


 船に乗る前、俯いているアイシス。


 「スビアと話してた。こういう運命なんだろうなって、貴方は」


 「そうだとしたら、僕はやるべき事をやって、最後まで責任を取るつもりだよ」


 嫌だ、辞めたい、そう思った事は何度もある。でも僕は一度たりともこの選択自体を後悔した事はない。王になる選択を後悔した事はないんだ。だって僕にはその力があって、それでみんなが望んでいる、なら僕はやるべきだし、正しい事だと思うんだ。だからこれが僕の運命だとしても僕は何も思わないだろう。


 「責任?シュン、あのさ……」


 何かを言おうとするアイシス、スビアはアイシスの言葉を防ぐようにアイシスの手を引っ張り、船の中に連れ込んだ。


 「アイシスちゃんそれはちょっと待ってね」


 隠し事があるのか、気になるのな。でもまぁ二人だけで共有してるって事は多分僕には分からない事なんだろうな、女だけにしか分からない話、みたいな。

 ただこう、隠し事されるってのは気分が良くない、別に良いんだけど、別に。


 「陛下」


 低いとも高いともいえない声。金髪の男。イズィバーラ。僕は今回の見送りを彼に頼んだ。


 「あぁイズィバーラ。その、何だ。私は貴方を一切信用してない。貴方は僕と違う物を見ているから。でもそれは隅においておいて、貴方がメンフィスを第一に考えているというのは間違いのない事だと確信している」


 「当然です。私はメンフィスの軍人ですから」


 彼の胸に拳を当てる。


 「男と見込んている。私が不在の間、メンフィスは頼んだぞ」


 「当然です。私はメンフィスの軍人ですから」


 ラムセスがイズィバーラを何とか牽制し、イズィバーラは国を守る。これで僕が戻った時には国がありませんなんて事態は防げる筈だ。最悪でも。


 「じゃあ、行ってくるよ」


 「はい、どうか陛下にラーの護りを」


 「メンフィスにラーの守護あれ」


 マンジェットに乗り込む。アトランティスの時のように、セトの時のように。

 出発前の最終調整、その間暇なので僕らの部屋に向かう。

 アトランティスの時と変わらない部屋。ただそこにはアトランティスの時とは違って沢山の本が持ち込まれていた。


 「やけに多いな」


 「まぁ他にする事ないしね、私達」


 2人は王妃。でも官僚機構がかなりきちんとしているメンフィスにおいては王妃としての仕事はただ一つを置いて他にない。それはこんな戦時になっても同様だ。あぁつまり、なんて言ったら良いんだろうな。この空間、2人が居て本の翻訳をしているこの場所は平和な時と何ら変わってない。だからここだけはずっと優しいまんまなんだな。


 「なぁ、その……さっき言おうとしていた話って何なんだ?」


 アイシスが口を小さく開いた瞬間、スビアは彼女の後ろに回ってその口を塞いだ。


 「今はちょっと待っててね。気が散っちゃうかも知れないから。それは今のシュン君も望んでないでしょ?」


 「ねぇスビア、それは違うんじゃないの」


 「アイシスちゃん。大丈夫。だってシュン君死ぬ気はないでしょ?」


 「そりゃそうだろ」


 死にたくない、それは当然だ。だって僕が死んだら2人は悲しむし、何よりやってけないだろ、夫の居ない王妃なんて。

 ただ、それとは別に最悪の場合における最悪の選択は想定している。だって備えはあればあるほど良いからね。


 「じゃあこの話はこの問題が片付いてからにしよう。ね、アイシスちゃん」


 「スビアが良いって言うなら良いけどさ……後悔するよ」


 「マジで何の話なんだ……」


 ムッとした顔で僕を見るスビア。それ以上は何も聞けなかった。


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