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崩落




 山岳派によるクーデターから一週間後、ラムセス内閣は責任を取る形で倒閣する。新たに内閣を組閣しなければならない。


 「そうだな……」


 執務室に二人を呼び出して今後のことについて話し合う。


 「挙国一致内閣というのは今後も維持したい。軍部に対抗出来るのは王権だけだ」


 山岳派のクーデター、一見軍を弱体化させる事件のように思えるがその実むしろ逆だ。山岳派が居なくなったことで軍は一枚岩となった。簡単にいうと改造派がうざいから逆の意見に投票してるやるって人たちが消えたから僕らにとって不都合な意見に賛成する人たちの票数は増えたんだ。


 「ブルトンクラブとしてもそちらの方が嬉しいだろう。実績を作る段階なのだから」


 少し動くロベルピエルの眉。これは多分不満を表してる。どこに対して?実績を作る段階という部分に対して?でも実際そうだろう、比較的新しい政党である。まさかもっと何かを寄越せと?


 「陛下、私から一つ進言しても?」


 僕らの様子を見ていたラムセス。彼の顔を見て僕は頷く。


 「ロベルピエルを首相としましょう。この代わりに私が法務大臣を務めます」


 ロベルピエルを首相に?しかしそれではロベルピエルを恐れる僕らの派閥の人たちが離反してしまう。いや、もはやそれで良いのか。バランスが崩れてしまった以上、バランスを取り戻すためにリスクを背負わないとならない。


 「やるか?ロベルピエル」


 「無論です、陛下」


 「頼んだぞ」


 と、このように内閣が決まる。筈だったた。この話し合いから2日後、招かれざる客が執務室に訪れたのだ。


 「イズィバーラに御座います、陛下」


 イズィバーラ、呼んでないし予定も無いけれど……急ぎで知らせたい事でもあるのか?あるいは?


 「入ってくれ」


 勢いよく開けられる扉。音を立てて。表情、穏やかでは無い。冷たい目だ。何があったんだ?


 「全く驚かされましたよ。陛下には」


 「何の話だ?」


 「何の事?決まっているでしょう。なぜロベルピエルを首相に推すのです?」


 どうして?バランスを取り戻す為だ。でもそれをイズィバーラが分かっていないとは思えない。イズィバーラは利口な男だから。まさかロベルピエルについて僕が知らないかつ重大な事がある?きちんとあいつの近辺は探っている筈だけれど。


 「何か問題が?」


 机に振り下ろされるイズィバーラの拳。コップが倒れて水が溢れる。やっとできた書類を濡らしてしまった。


 「えぇ、もちろん。ロベルピエルは軍事費を削減しようとしている。この非常時に、です」


 非常時も何も無いだろ。むしろ大恐慌の傷の癒えない今は軍事費を削減して他に回すべきだし、何よりクーデターなんてしたんだから信用の関係で軍事費が減らされるって言うのは当然では?


 「非常時だと?何を見て、何を知ってそれを言う?」


 「これから起きることを知って」


 これから起きることだと?外の事は特段何も変わっていない。内側の事は向こうの方が詳しいだろうが、それでもスクレ・ドゥ・ロワは優秀だ。特にアヴダヴは。だから彼のこれから起こる事という言葉の意図はそのままじゃない事は簡単に分かる。


 「これから起こす事だろ。なぁ、まさかとは思うが……貴方は内閣を流産をさせようとしているのか?」


 「陛下が私の言葉どのように解釈されたかはわかりませんが、ともかく私としてはロベルピエルが首相となるのならお手伝いできることはありません。時期陸軍大臣を辞任させていただきます」


 そうか、脅されているのか今。軍部大臣現役制度を使って。でもどうする?覚えている限りの法律を思い出してそれをどう解釈してもこの脅しを覆せるものが見当たらない。


 「違勅だぞ」


 王様の命令は絶対。そんな言葉があるけれど無理にそれを通そうとしたら首を挿げ替えられる。だから違勅だぞ、王様の命令に背いてるんじゃないよなんて言っても意味がない。つまりこの短い言葉は負け犬の遠吠えに過ぎなかったのだ。


 「偉大なる陛下の命令を叶える事が出来ない、では恥を忍んで腹を切らせていただきます」


 何よりイズィバーラの存在は僕にとって都合の悪いものだけれど同時に都合のいい物でもあるんだ。だって彼は軍部を纏め上げている。過激だけれど、それでもバラバラになって暴れられるよりかはまだマシなのだ。


 「貴方が死んでも何になるんだ。あぁくそ……教えてくれ、何が望みだ?」


 「首相にはバーラギリス・モンドゥーをご指名下さい」


 元陸軍大将の人。どうする?そうするか?いや、逆らう術は無いな。そうであるのなら即答してその代わりにとロベルピエルとラムセスをどこかに入れるしか無い。


 「良いだろう、その代わり外務大臣にロベルピエルを、法務大臣にラムセスを任命したい」


 「えぇ、構いません。ロベルピエルが首相でないのなら私とて知る事ではありませんから」


 「やり難いよ、貴方は」


 今思えば、僕はこの時殆どを間違えていたのだろう。

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