かつて懐かしき戦い
黒い巨大と対峙する。筋肉質な。正直、少し懐かしい気分なんだ。前はアイツを3人で倒したっけか。さて、どうやって倒すか。このままこいつを倒すって話なら簡単だろうけど、議員を守りながら倒すってのは難しいぞ。
「絶対に前に出るなよ。厳命だ。危ないから」
レーザーの剣を迸らせて後ろの警察や兵士に警告する。だが彼らは僕の前に盾を作り、兵士は火杖を構えた。
「辞めてくれ、一人にしてくれ。危ないって言ってるだろ!」
振り下ろされる巨大な拳。警察は5人かがりで盾を鉄壁とし、その拳を受け止める。
「これでは立場が有りません!」
火杖で人の玉を奴の顔に当てる兵士。しかしそれでは駄目だ。奴は再生をするから一気に殺し切らないと……
「それは命よりも大事なのか!?」
「当然でしょう!我らば兵士と警察ですよ!?」
いざという時に盾になれないのならボディーガードの意味が無い。だからと言って僕はボディーガードに僕の代わりに死んでくれなんて言えるほど強い人じゃない。
「なら勝手にしろ!」
奴の左の拳。受けようとする兵士。脚に力を入れて彼らの前に出る。細いレーザーの剣を手首のグリップで回転させて回転ノコギリにして拳を輪切りにする。
肉の焼ける臭い。瞬間全てが止まった。
「陛下!?陛下を囲守れ!なんとしても!!」
迫り来る巨大。吹き飛ばされる警察と兵士。固まったままの身体。
「陛下!陛下!!」
動け、動いてくれ、身体!
「ッ……ハァ!!!」
酸素が入る肉体、ぐちゃぐちゃになった議会。血の匂い、少なくとももう10人は死んでる。吹き飛ばされた警察、兵士、その下敷きとなってしまった議員。
くそ、僕のせいだ。僕が殺した。辞めてくれ、これ以上僕を苦しめるな!!
「ラアアアアッーーッ!!!」
半狂乱。叫び。防御の右手を回転ノコギリで粉々にする。迸る炎、吹き飛ぶ肉塊。あたりに火の肉が飛び散る。
「グアアアッッーー!!」
細い剣が太くなる。レーザー大太刀。振り下ろされる炎の斬撃。途轍もないエネルギーの刃。奴の頭を焼き尽くし地面を溶岩に変えた。
「はぁ……はぁ……うっ……」
燃え盛る議事堂。避難する人々。溶けていく奴の身体。吐き出されるゲロ。
「陛下、陛下!」
肩を貸してくれる警察。彼もまた左腕がぶら下がっており右の太腿に血が滲んでいた。
「ありがとう、いや、違うな。僕が肩を貸す」
僕の作った炎の中、なんとか脱出する。外には既に医療チームが到着しており、負傷者を治療していた。骨折、火傷。僕の責任。僕は一瞬目を逸らしてしまった。
「イズィバーラ」
奥で立っている男を呼ぶ。彼はいつもと変わらぬ顔をしていたが、僕の顔が相当酷かったんだろう、棒の顔を見た瞬間に一度顔を引き攣った。
「少し、少しだけ休憩したい。この場を頼むぞ」
短くそう伝えた後、僕は暗い路地裏に逃げた。
建物と建物の間。日干し煉瓦の色は暗すぎて真っ黒。前日の雨は乾き切っておらず水溜りがある。
「くそ、くそ」
僕の過去を見て逃げるネズミ。自然と伸びた右手。今度は口を覆った。
「うっ……ううっ」
暖かいゲロ。不愉快な臭い。そうだよな、僕はまた殺した。人間を。個人的な感情で固まって見殺しにして、今度は苦しみを早く終わらせたいからと適当に剣を振って炎を撒き散らして人を焼いた。焼いたんだ、人を。この国において焼死は最も忌むべき事なのに……
「くそ、くそ!くそ!!」
水溜りに映る僕の顔。踏み潰す。何度も、何度も。
「わかってんだろ、シュン」
何がファラオになるだ。結局なりきれてないじゃないか。自分の苦しみを優先して他人を苦しめて、何が王様だ。
「二人を優先できない状況で自分自身を優先する道理なんてねぇよ」
もう一度水溜りを踏み潰す。汗を拭き、襟を正す。小雨が降り始めた空、路地裏から出て奴を呼ぶ。
「イズィバーラ!」
「陛下!」
「佐官以上を憲兵に渡せ。それ以下は家に帰らせて終わりで良い。追って指示は伝える。命令を遂行しろ」
軍靴の綺麗な音、完璧な敬礼。
「はっ!我が王の御心のままに」




