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不安な同盟




 ロベルピエルを呼び出した。夜遅くに。酒を用意して。


 「すまないな、こんな遅くに呼び出してしまって」


 もう寝る準備をしていた時間だっただろうに、彼の髪や肌、服には一切の汚れが見えない。呼び出しを想定いたのか?


 「さて、と本題に入ろう。ブルトンクラブの党首として忌憚のない意見を述べてくれ。先の事件について」


 左上、何も無いを見つめるロベルピエル。迷っているんだろう、そのままま言うのか。


 「不正義でしょう。無論、私とてあの男がただの殺人犯ではなくテロリストなのは理解しております。ですがその上で言いますが、処刑に際して苦痛を与える必要など一切ないと私は考えます。故に、不正義に御座います」


 「貴方のその意見はブルトンクラブの総意か?」


 「間違いなく」


 行政におけるファラオの権限は絶大だ。でも立法はそうではない。行政と違って立法では勅令であっても議会の承認を得なくてはならない。だから僕が新しく法律を作ったり変えたりするのであれば、きちんと議会における票を過半数取らなくてはならない。その為には味方が必要だ。


 「じゃあこういうのはどうだ。こちらとしても弑虐未遂犯を減刑する事は望まない。だから私は弑虐未遂に対する刑そのものを改めたいと思う。単刀直入に言わせてもらおう、死刑を斬首刑のみとするんだ」


 ロベルピエルはニヤッと笑う。歯を見せて。僕は訝しむ、もしやこの状況を待って居たのかと。だってそうだろう、全ての死刑を斬首刑にするというのは死刑という場において身分という概念が消えるという事だ。それはブルトンクラブの最終目標に則っている。つまり前例を作ろうとしてる?まぁでも考えても仕方のない事だ。とりあえず目の前の問題に対処しなくちゃならないから。


 「それは…‥英断です。えぇ、そうしましょう。しかし陛下、一つ質問しても?」


 「構わないよ」


 「陛下と私は良く似ている。その上で、です。陛下の理想とするものは我が党の綱領と、最終目標と似たもの……いえ、同一のものと断言しましょう。にも関わらず何故陛下は我らを疑うばかりか、時に蔑ろにするような態度を?」


 ロベルピエルを信用しきれてないから、それは何度も何度も言った話だ。だからこれに対する回答は裏を読まずそのまま答える、彼が望むように。


 「私は早急な変化を望まない。怖いから」


 基本的に早急な変化には大きな代償を伴う。ラムセス更新令がそうであるように。


 「正直言って私の為政者たる能力は低いよ。だから自信が無い、2人を守り切れる自信が」


 身分に対して急速な変化を起こす。そんな事をすれば必ず既得権益を守ろうと僕は攻撃される。それならいいんだ。僕は基本的に最強で殺される事は無いと思うから。でも2人は別だ。2人は強い魔法使いに襲われたら簡単に殺されてしまうだろう。それは嫌だ。絶対に。


 「つまり、だ。1%でも2人を損なう可能性がある以上、私は慎重にならざるを得ない。たとえ貴方の理想が正しい事で、私自身もそう感じて居ても」


 「陛下は人として素晴らしき方です。正しく、誠実で。しかしその欲は王として相応しいものではない」


 「悪いか?私は確かにこの国を愛さなくてはならないし、愛している、王として。2人と国との選択を迫られたら僕はきっと選べなくなってしまう、くらいには」


 「でも私はきっと最終的に2人を選んでしまうだろう。僕はそういう奴だ」


 ロベルピエルはゆっくりと頷き何も言わなかった。


 「さて、個人的な話はもう良いだろう。それで手を組んでくれると認識でいいのか?」


 「えぇ、先ほどそのようにお伝えしました」


 議会全体の票が330票。ファラオの票が30票。僕の派閥の票が50票。ブルトンクラブ党の票が26票。こうすれば330票のうち106を抑えることができる。つまり全体の32%を味方にする事ができる。軍部が一枚岩じゃない事、どちらにも属さない議員がいる事を鑑みれば十分改正案を通す事ができるだろう。


 「感謝するよ、一先ず」


 「こちらこそ、陛下。それとですね、これ」


 ロベルピエルの懐から取り出される封筒。あまり大きさはなく、ちょうどCD一枚が入りそうなくらいだった。


 「センターの方の機械で読み取り可能な形ですね」


 封筒の中、少しキラッと光る円盤。


 「ありがとう。後で2人に見せてみるよ。きっと彼女達も分かってくれるだろうから」

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