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スピリタス




 少し腹を浮かせて、ゆっくり、ゆっくりと伏せから四つん這いになる。腹の下に右手を入れて魔法を唱える。


 「ビル・ヌン」


 腹の下でできるだけ小さく、できるだけ高密度で酒を生成する。ふと横を見た時、さっきまで震えていたスビアは僕の隣に伏せて酒の冷気を隠そうとしていた。


 「スビア、大丈夫。ちゃんとぬるま湯だから」


 正直大丈夫な保証はない。奴の熱探知がどの程度かわかってないんだ。


 「でも私が悪いから、私が。それにそれ全然ぬるくないわ」


 私が悪い?確かに望遠鏡を下にしたのはスビアだけれど、そんなん僕でもやってた。だからこんな事でそんな悲しい顔をするのは違うだろ。


 「アイシス!さっきの水、湿った砂、奴が槍で吹き飛ばした時にはその痕跡も無かったんだよな!?」


 さっきの水鉄砲、結構な量出してた。だから奴が槍となって突っ込んで地面を吹き飛ばしても濡らした痕跡が残っているんはずなんだ。でもそうじゃ無かった。


 「うん!完全に消えていた!水の痕跡はね!でも砂の量は変わっていない!だから水分だけを吸収したって見方が一番正しいよ!」


 なら賭けだけど、これは決まるはず。僕の手の内にあるのはビル・ヌンで作り出せる酒の中でも限界までアルコール度数を上げたもの、具体的には96%くらい。


 「離れてくれ!スビア!」


 立ち上がり、地面に向けて生成した酒を撃った。酒によって湿った地面、僕が立ったことによってさっきまで陰になっていた地面、どちらにとびこむ飛び込むのか……


 「期待通り!」


 ペガサスは槍に変形し、湿った地面に突っ込む。轟音と砂、されど巻き上げられた砂も衝突した地面も濡れていない。槍はもう一度天空に飛び立ち、ペガサスとなる。今度は僕の所に突っ込んでくるだろうな、でも、もう勝った、そのはずだ。


 「破れかぶれ"しゃあ"なし!スピリタスでぶっ飛んでしまえッ!」


 右目からの光、その光は矢となって変形途中のペガサスに刺さる。一度穴が開いたのち、先ほど奴が飲み込んだアルコールに引火し、急激な温度上昇によって奴の体液内の空気が膨張していく。

 そして体表の色が青が赤色となり、轟音と熱を吹き出しで爆発四散した。

 燃えた奴の体液、その中で一際輝くものが流れ星みたいに落ちてくる。


 「スビア!その流れ星みたいなのを捕まえるんだ!」


 アイシスの指示に従い、スビアは腰から瓶を取り出して流れ星をキャッチする。まるでホームランキャッチだ。


 「入った!」


 身体を飛び込ませて瓶の中に流れ星が入る。あれは……核だろうか。


 「早く蓋を閉めて!」


 蓋の中で核から青い液体が溢れ出す。なるほど、普通のスライムと同じで核を潰さないとああやって復活するってわけね。


 「閉じ込めた!それでどうするの!?」


 「振りまくって!身体が揺れてると瓶の事をポリマースライムだと勘違いして静かになる」


 つまり瓶を自分の身体だと思い込むって事か。


 「さて、これでペガサスライムの討伐は済んだね」


 アイシスは両手を腰にやってそう言ってる。でも僕は素直に喜べずにいる。だって、なんか揺れてるんだ。


 「なぁ、アイシス。この揺れってさ」


 僕がそう言った時、遥か遠くでも爆発するような、地面が砕けるような音が聞こえた。


 「シュン!あれ!」


 砂が舞い上がっている、天にも届きそうな程。待て、あれ結構遠いだろ、なんであんまに舞い上がってるんだ。砂嵐?いや違う、あれは下から力が加えられてできてそうな感じがする。


 「あれは……」


 砂の中に動く影、まるで龍のようだ。あんなでかい生き物がいるんな……いや、あれは……


 「みんな逃げるよ!あれやばいやつだ!」


 赤い体表と目のない顔、そして人の歯。あれはマンゴーデスワームだ。しかもめちゃくちゃにデカい。なんであんまにデカい魔物がこんな所にいるんだ。全長何百メートルあるんだよ、あれ。


 「スビア、腰抜かしてないで、あれはヤバいやつだ!」


 三人で逃げる、とにかく走る。あんなもんに食われたらわけない。まだ死ぬ訳にはいかないんだ!!






 30分ほど走り、きた時に野営した洞窟の入り口に辿り着く。もうこの時には全員汗だくで、ローブなんて着てられなかった。


 「日が傾いてく、暑い内に水浴びないと」


 空はまだ茜色ではないが、あと二時間もすればそうなる。そして日が沈んだらこの灼熱の砂漠は極寒の砂漠に変わる。故にこの暑い内に近くのオアシスで風呂に入っておこうというのは賢明だと思う。ちょうど外にオアシスあるしね。


 「んじゃシュン、女二人先に入るからね。出た後にご飯作っておくから」


 冷えた風呂に入る代わりにご飯作りは免除って感じか。まぁ、いいんじゃないか。


 「覗いたら殺すから」


 覗きなんてしない、興味がないって訳じゃないけれど、そこにいるカペラさんがどうもさっきから僕と話したそうにしてるんだ。


 「わかってるよ」


 二人が去っていく。覗き、か。いや、何を考えているんだ。カペラさんと話すんだろ。確かに二人は本当に魅力的だけれど、そんな事したって何にもならないし、いやでも……くそ、肉体のせいだな、いや言い訳か。

 ともかく、さっさとカペラさんに話かけてこの衝動を忘れてしまおう。


 「カペラさん、僕に話したい事あるんでしょ。いい加減わかってきたんです、貴方の表情はわかりやすいですから」


 上の腕の下の腕で腕を組むフンコロガシ。ちょっと不機嫌な感じだろう。


 「ペガサスライムを倒した発想、あれには感心した。でもスピリタスってポーランド原産のお酒でしょ?」


 カペラさん、なんで貴方がポーランドを知ってる?

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