閑話休題
「オマエの名を言ってみろ!」
「うん、テンマヤコウ」
「だから、それはオレの宝貝の名前だって!」
「そう、ボクの名前はテンマヤコウ、キミの宝貝だよ」
「横槍失礼。ワタシは応龍。今後ともよろしく…」
「うるっさーい!」 葵の絶叫が響く。
葵は王の誘いに乗り、宝貝による異世界への旅に出た。しかし、意識喪失から回復して目にしたのは、全裸の自分と、見知らぬ怪しい隣人たち。小学生でなくとも、誰でもパニックになる状況だ。
不幸中の幸いとして、拘束などはされていない。
「あれ? ノリはどこにいるんだ」
板敷きの堂の中には、零和の世にはなかなか見られない煎餅布団がふたつ敷かれていた。ひとつは葵が占拠し、もう一方の掛け布団は丁寧にめくられている。徳彦の姿は見えない。
「ここにいるぞ」
「いたのか」
ひび割れた湯呑みをふたつ、大きすぎる盆に載せて、徳彦が堂に入って来た。全身全裸ではなく、毛皮の胴着で胸から腰までの胴体は隠している。手足は出したままだ。
「王のジジイ、何かしくじったか?」
「ここは崑崙じゃない。それどころか、竜宮という崑崙への反抗拠点だそうだ」
「ハンコーキョテン? 盛大にミスってるな」
「とりあえず、胴着を着ろ。掛け布団の上にある」
そう言って、徳彦は湯呑みを置き、表に出た。




