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「……あ?」
初めて、こちらの話を聞き入れた気がした。
井上星が賭けていた。まるでTRPGのように交渉のダイスを振ってしまった。
そして、その賭けが正しかった。クリティカルでも出したように相手が話を聞き入れた。
「……お前、自分の『魔法』に自信があるようですね。」
井上星はアレの独り言からそう感じたのだ。
アイツは自分の「魔法」に自信がある。自負がある。故に、何らかの傲慢で相手を貶したい――そう思える理由は、学校でも同じ類の人がいた。
何かがすごいから、相手を貶す。優越感を得るために、気に入らない人を蔑む。
もし、コイツ――この狂った魔法使いは、同じ類の人間だったら、「魔法」についての「挑発」なら、間違いなく――
「……だから?」――聞き入れる。
そう……聞かざるを得ない。相手が「魔法」に対してのプライドがそう許されない。
だから、「交渉」せざるを得ない。
「――だから、そんなこともわかってないんですよ。お前は。」精神攻撃は精神魔法に限っていない。言葉もできることだ。
「自分の『魔法』はいかにちっぽけな矮小で、すぐに解析されて、とんでもなくくだらない、ゴミクズのような魔法とはなぁー!」
もっと……相手を揺さぶる!
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静寂――いいえ、正確には大きな赤ん坊の泣き声の中で、一人はこっそりと呟いた。
相手に認識されないよう、こっそりと。
「音よ、精霊よ、頼む!同調!」フロンは隙を窺えて、魔法を使っていた。
井上星は相手を挑発している時、アイコンタクトで自分に告げたのだ。
何かをやるなら今だと、フロンははっきりと井上星の意志を読み取れた。
フロンはちゃんとわかっている。相手に認知されたら、今さら口を噤んでも仕方ない。
仕方ないんだが、自分のことを相手に知らされてはいけない。
被害を拡大してはいけない。このことは井上星でもわかっている。
だから、何となくこのことが感じていた井上星はフロンに話しかけるのをやめた。
代わりに、井上星は自ら相手の注意を惹きつけた。
二人は知らず知らずのうちに、気が合うように考え、連携が取れていた。
一人は、妹のために。
もう一人は、自分の目的のために。
“うあああぁああ!うわぁああ”
大きい赤ん坊のような泣き声、室内に響く。この泣き声は、この相応しくないタイミングで、少しフロンの昔の記憶に蘇らせた。遥か昔の記憶……
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“うぁあ、うぁあ!”
それは、洞窟の奥から伝わってきた、赤ん坊の泣き声。とても清らかで、鮮明な泣き声。
彼は、疑問に思う。
「赤ちゃん?」なんでこんな洞窟の中に、赤ちゃんの泣き声が?と。
彼は、疑問とともに好奇心をもって洞窟の奥に行った。
彼は、俗に言うドラゴンという種族である。
ドラゴンは生まれつき持っている特性の問題で、自分の友好をアピールするには、最初「相手に怖がらせない」ことが大事だった。
だから、ほとんどのドラゴンは攻撃より、ほとんどの「結晶体」は精神の守りに関する魔法だった。
マインドシールド。一番普遍的で、あらゆる場面で使える精神魔法。戦闘だけでなく、精神の安定にも役に立つ。普通の「シールド」と同じく、汎用性が高いのだ。
そのため、彼は警戒しながら、泣き声が発生するところに行った。自分が採取した「マインドシールド」と同じ効果を持っている大量の結晶体を連れて……
そして、彼は洞窟の奥にたどり着いた。
彼は、たどり着いたところに目の当たりにした。赤ちゃんの声がするところには――本当に赤ちゃんがいた。
人間の赤ちゃん。間違いない……でも、なんで?
彼がそう思うと、泣いている赤ちゃんは更に大声で泣いていた。
“うあああぁああ!”
「ぐ……」彼は思わず耳を塞いだ。
彼は、育児の経験などない。
だから、彼はすぐさまマインドシールドの「結晶体」を使った。泣き止ませるつもりだ。その効果がある。
「精霊よ、頼む。マインドシールド。」彼は口からそう唱えると、光がゆっくりと赤ちゃんの心臓に入り、間もなく赤ちゃんが泣き止んでいた。
副作用も――ない。
泣き止んでいたため、洞窟も少しずつ静まりに返った。赤ちゃんもちょっとずつ手や足も暴れなくなった。それでも、時々「ばぁ」とか、「ぶあ」とか、赤ちゃんらしい声を出しながら、手や足を動かしている。
むしろ、赤ちゃんは周りの景色が気になり、身体をひっくり返した。健気で愛おしい姿だった。
そして、赤ちゃんは彼のことに気付いた。まるで自分を宥めている人がこの人だと認識できるよう、ゲラゲラと笑い始めた。とても愛嬌がよく、安心しているような笑い声だった。
とても愛おしいその姿に、彼はちょっとキュンとした。
ちょっとだけだ……彼は赤ちゃんと遊び始めた。だが、赤ちゃんはどうやら飽き性っぽく、最初彼の遊びに付き合っていたが、すぐ彼の遊びに構えたくなかった。
つまらないだと思っているようだ。
がーんと少し傷ついた彼だが、真面目に考え始めた。
なんで赤ちゃんはここにいるのかと、彼は気になっている。
だから――
「音よ、精霊よ……頼む。同調。」
彼は、チューニングを通して赤ちゃんと会話しようとした。
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『星様!』一つの声が突然井上星の脳内に伝わり、それは“空の声”が使われていた時に同じような感覚だった。
「な……!」井上星は何が言おうとした時、すぐフロンの「シッー」ポーズに止められた。
この動きで井上星はすぐわかった。この脳内の声の主は言うまでもない、フロンである。
同調。この魔法の概念はほぼ吸血鬼の魔法にある「テレパシー」に該当する。
喋らなくても会話ができる。それはこの魔法の特徴だ。
『すみません……星様。驚かせてすみません。これは同調です。あまり説明の時間がありませんが……何が言いたいなら、直接“思えば”いいんです。強く、思って……』
『……わかった!』井上星は二つ返事で、今までの適応力をここで発揮した。
『それで星様!実は君に――』とフロンの話は途中で止まった。
理由は簡単。
「脳よ、精神よ――」相手の攻撃が来た。
相手の攻撃に気付いたフロンは手で自分の体から「何か」を引き抜き、意のままに唱えた。
精霊よ、頼む――
「我に従え!」
マインドシールド!
魔法の衝突はもう一度、井上星が見えないところでぶつかった。
しかも、今回の強度は今までの比ではない。
キィーンーという金属音らしい音が出てきた。妙な強い烈風も吹いてきた。何より、周りのものは一個一個が刀に割られたよう、どんどん切り痕が現れる。
そして、ピキィピキィピキィピキィピキィピキィ――フロンから伝わってきた多数の破裂音。
攻撃が防いだが、明らかに状況が良くない。
自分の世界にいたら、井上星はきっと自分の目を疑ってしまう。でも、そんなことをしない。疑う理由と余裕もない。状況が悪化している最中、そんなことをしても意味がない。
「ははっ!どうだ?調子に乗るなよ?こちらが手加減しているだけだ。お前は――」
『星様、静かに聞いて。今から、作戦を伝える――』
チューニングとテレパシー、両者がどこかに違う点を挙げるとすれば、それは相手の思想が読み取れるかどうかの違いだった。
直接自分の印象を画面にして、言語化すら必要ないというのは両者の差である。
作戦……
フロンは考えた作戦をチューニングによって井上星に伝えた。
「……はは。お前、これしか使えないの?ちょっと威力強くなっただけで、なーんにも変わっていないじゃん――結局、僕に防がれた♪」
作戦を受け取った井上星は、さらなる挑発をしていた。
はい!アップしました。
次は相変わらず三日後です!




